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報告、報告。
オレのすきな子はオレのおかしがだいすきだ!どのくらいっていえば、

「ミシャー、」
「ん?」
「はい」
「うわーっしゅーくりーむ!」
「ほしい?」
「うん!」
「じゃあちゅうして」
「いいよ!」

このくらい!





追伸、追伸。
私の苦手な彼は愛情に飢えている。どのくらいっていえば、

「ミシャー、」
「げっ」
「酷ェ反応、オレ傷ついちゃう」
「ご、めん…」
「じゃーんシャルロットケーキ」
「わあ!わあ…!」
「食べたい?」
「っべ、別に食べたくなんかっ…」
「食べても良いぜ、その代わりちゅうさせて」
お断りしまっんぐ!!!?」
「んっ」
「やっらんっんむっ」
「はっちゅ」

絶対おかしいよね!※私はコイツの彼女じゃありません!!!






「だ、だからおかしいと思うんだ…わたしはっ」
「へー何が?」
「いやだからキスはヒィッ!」
「んだって?」
「だからキスは普通恋びぎゃあ!」
「大人しく座ってろよもうガキじゃねぇんだから」

呆れた様にそう言ってゴールドはシャルロット・オ・フランボワーズに包丁入れる。その後ろではミシャがソファの上で縮み上がっていた。顔を真っ青にして震える体をぎゅうと縮ませる姿は見ているだけで痛々しい。そんな怯えあがるミシャの視線の先にはオオタチがいた。オオタチ、オタチの進化系で胴体が長く愛らしい瞳と模様から女性に人気のあるポケモンの一種なのだが、ミシャにとって奴はトラウマの塊でしかなかった。

いつの事だが思い出してごらん。
そんなフレーズの歌と共にミシャの脳内に甦る記憶の数々。ある日はオタチに買って貰ったばかりのワンピースを齧られ、ある日は楽しみにしていたお菓子を取られ、ある日は意味もなく追いかけられ、その他もろもろ。

フラッシュバックするあんな事こんな事にびくびくするミシャにオオタチが小さく鳴いてすくりと立ち上がってみせた。すれば声にならない悲鳴を上げてミシャの体ががたんとソファから落ちる。ソファを楯にびくびくと震えてこちらを警戒するミシャにオオタチはほうと頬を染めた。どうやらご満悦らしい。

「オオタチあんまミシャいじめんじゃねぇぞ」

きらきらと瞳を輝かせるオオタチに、主人であるゴールドの命令が飛ぶ。それにオオタチはえーっと言う顔を返したが直ぐに足を着けて長い体をテーブルの下へと潜らせた。それを端目に、ゴールドはトレイで運んできたものをローテーブルに並べ始めた。

「ンな所で何時まで怯えてんだよ、早く座れ」

そう言ってこちらを卑下する男こそ、あのオオタチ(元オタチ)に命令して私の平穏を脅かしていた黒幕である。

「ほら、」

何時までもソファに腕置きの向うに隠れて出てこないミシャにゴールドがずいと皿を差し出した。目の前に迫った赤いフルーツの宝石に彩られた甘いケーキにミシャは本能のまま飛び着く。はっと気づいた時には遅くゴールドはソファに座り、ミシャの手には確りとケーキ皿が握られていた。

(___ケーキに、罪はない。そう罪はない)

そう思いミシャはちらちらとテレビをたしたしと叩いているオオタチを警戒しながらフォークを取った。

子供の頃、ミシャはそれなりにゴールドと仲が良かった。

まああの頃は男女差なんてなくただ小さい子供がたむろって、ある物すべてに無垢に喜びや楽しみを見出していた時代だし、それは別に特別なことではない。ミシャは他の男の子とも仲が良かったし、ゴールドはその倍の男女と仲が良かった。そんなゴールドがミシャにとって特別になったのは誕生日の事だ。

片親が仕事でひとりぼっちの誕生日になってしまった私にゴールドがお菓子を持って来てくれたのだ。少し形が歪なクッキーを私は喜んで食べた、そしてその美味しさに驚かされた。聞けばそれは彼の手作りだと言うからもっと驚いた。そしてそれ以上にお菓子が大好きだった私は喜んだ。それからというものゴールドは度々お菓子を作っては振舞ってくれた。そして私の黒歴史が始まる。

多分悪戯だったのだろう。チビゴールドがお菓子をあげる代わりにちゅうしてくれと言ったのだ。嗚呼そうだよ、ちゅうってキスのことですよ!接吻ですよ!小さな私はそれが単なる親愛の挨拶みたいなものだと勘違いしていて、その、しましたよ、しましたとも!お菓子美味しかったです!

その所為でキス=親愛の挨拶だと確信した私は一緒に遊んだ男にあろうことかバイバイのちゅうなんぞどこぞのラブラブカップルだー!と叫びたくなる上虫唾も走ることをやらかした。ああもう死にたい、思い出しただけで死ねる。

その思い出を境に私の幼少期はシフトする、曰くイジメられ時代。その筆頭はなぜかあのゴールドだった。大好きだった相手に苛められるのは子供ながらにとても応えて私は良く泣いていた。まあ幸いだったのは片親が忙しくて家に滅多に帰らなかったからそれがばれなかったことだろう。

だから私は引っ越しに反対しなかったのだ。引っ越し先ではとても楽しかった、友達が沢山できた、私を苛める子はいなかった。平穏が戻ってきたのだ。ポケモンに苛められていた私は自然とポケモンに関係ない職を望んだが決まらず、期限を延ばすために大学へと進学した。そこで彼__ゴールドと再会する。

ゴールドがジョウトチャンピョンになりもう雲の上で一生関わらなくて済むと思っていた私は絶望した。何が特別講師だ最悪だ!!こんなのあんまりだ!!と思ったけど、翌々考えれば彼が覚えている訳ない。私は小さい頃と随分印象が変わったし興味本位で髪を染めたばかりだったし、そう思っていた。ええ、そう思っていましたよ。

『なに髪染めてんの、すげぇ似合わねぇ』

そう言って頑張って朝セットした髪を乱暴に引かれるまで。

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