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王国最強の将軍には血の繋がっていない娘がいる


※ワタル娘設定、突然のパロディ



___「第三小隊、  ジィ E34地点到着しました ジジ」
___「第六から続けて ジ 七八、A13地点でエンカウント! 戦闘を開始します ジジ」

「お〜、がんばってんねぇ」

通信端末から聞こえてくるダンジョン攻略状況、その中に父の名がないことに安心しながら岩肌を蹴りあげる。膨大な魔力によって聳えるダンジョン内にはそこら彼処に侵入者を排斥するための罠が蔓延っているため、その僅かな違和感を見逃さないように視覚強化を解除することができない。

「ゴールド、上から来ます。接敵まで10メートルです」
「言われなくてもわかってるっつうの!」

先行していたゴールドが一際強い踏み込みで、前方に躍り出る。それを待っていた魔物が、五月雨のようにして上空の岩肌から飛び降りてきた。異様に長く曲がりくねった節と背中で涎を垂らしている第二口格、ぎょろついた9つの眼は毒々しい黄色……特徴的な腐臭、腐獣(デザート)だ。

ゴールドが腰に履いた双剣を抜くのを見て、わたしもそれに続く。翡翠に煌めく細剣に刻まれた魔杖の加護をもって、補助魔法を発動させる。

「gyagyagyagaygygya___!!」
「___フッ」

襲い掛かる敵を前にしても、ゴールドの金の瞳は揺るがない。整えた呼吸と共に揮われた魔剣、雷のように刻まれた魔石脈が赤く煌めき、揺らめくような焔の軌跡を描きながら暗がりの魔物を両断する。

接敵から状況終了までは一瞬、足を止めることのないゴールドに続く。宙を舞う腐獣が腐蝕性のある体液を撒き散らしているが、施した対汚染の効果を付与した防御膜に弾かれる。

この程度ゴールドは身一つで躱してしまうだろうが、念のためだ。暫くの間、そうしてゆく手を阻む魔物を一掃しながら進んでいくと、ふと気配を感じる。魔物ではない、これは。

___「エニシ部隊 ジジ 先方、第二支援部隊と合流してください」

「おっ」

ゴールドが声を上げると、樹形図のように広がる道を抜け不自然に広がる岩肌の空間に出るのは同時だった。合流部隊も同じだったのだろう、岩肌の上からフリーフォールしてきた第二支援部隊と合流する。

「いくぞルビー! 他のヤツ等に手柄先取りされんじゃねぇぞ!」
「ぐふっ ちょ、くるし…!」
「ゴールド、あなた突っ走りすぎよ! 支援部隊皆置いていくなんて何考えてるの!」
「オレに着いてこられねぇ雑魚どもの面倒なんてみれるかってぇんだ!」

ルビーくんの首根っこをひっつかんで、高笑いしながら行く手を阻もうとする魔物に突っ込んでいくゴールド。それを見て呆れたようにクリスタルが「もう!」と叫んで呼吸を整える、状況を顧みて込み上げる怒りを堪えようとしている様子はなんとも真面目な彼女らしい。

「クリス、わたしが後方を守りますから支援をお願いします」
「わかったわ、任せてちょうだい」

魔弓を構え弦を引けば、弦に添えられた魔石がクリスの魔力に呼応して瞬きの間に水晶の弓を生成する。千里の彼方まで見通すと謳われるクリスの瞳は正確無比に魔物の心臓…核を捕らえる。

放たれた弓は北風の加護を纏い、ゴールドに牙を向けていた魔物たちに突き刺さる。そうしてできた隙を縫うようにしてゴールドが双剣を振るった、漸く狭い岩道から解放された反動か。その剣捌きは、水を得た魚のように本来の豪快を取り戻していた。

「ルビー!」
「はいはい」

そんなゴールドを見て、苦言をもらしながらもルビーが同時に施している数重の魔術は完璧に彼を守っていた。武器を持たないルビーに食らいつこうとした魔物は、不可視の障壁に拒まれ自らの膂力で押し潰れる。

その向こうでゴールドが叫んでいるのを端目に、ルビーは億劫な様子で魔杖を掲げた指をくんっと押し曲げる。すると大地が鳴動を始め、まるで意思が在るようにして自ら裂いた割目に魔物たちの身体を呑み込み始めた。足を取られ動きを封じ込まれた魔獣がつんざくような声で奇声を上げるが、その音毎ゴールドの斬撃によって両断されていく。

___「 ジジ クリュウ将軍、 ジィ 最下層到達 状況を開始します ジ」

背後から襲い掛かってくる魔物を薙ぎ払っている中、通信端末から聞こえてきた報告に目が覚める。

(お父さん、)

はやく追い付かないと、





それは竜のようであった。

強大な岩の巨人とも。毒を孕んだ蛇のようにも視える。漆黒の鱗に肉を守り、鋼の顎で獲物を砕く___災厄が魔力を吸い込んで獣を象った成れの果て。

人が想い描く災害そのもの、想像力によって強化された悪夢の化身。

天を裂くような咆哮が空気に溶ける魔力を振動さえ、ソニックブームを起こす。巻き込まれた兵士たちが岩肌に叩きつけられ、魔竜が自らに群がる塵芥を払うように尾で地面を薙ぎ払った。

「後援、負傷者を抱えて下がれぇ! 戦えるものは前へ、魔術部隊援護を怠るな!」

キョウの号令に従い、負傷した者を連れて一部の兵士たちが下がる。それを阻むように振り降ろされた魔竜の爪腕を、ワタルの大剣が弾き返す。剛腕で振り抜かれた大剣が触れた先から、魔竜の皮膚が焼ける。

「クリュウ将軍っ」
「行け___!」

鍛え抜かれた刃金に刻まれた災厄を薙ぎ払う聖典は、闇から生まれた種族にとっては天敵とも言える。この世にある唯一の世界敵の存在を嗅ぎ分けたのか、魔竜が鼓膜を裂くような金切声を上げる。警戒と威嚇混じりの八つに割れた金輪赤眼が、ワタルを殺すべき獲物として取られる。

「AAAAAAAAAAAA_____!!!」
「____ッ、」

山脈程ある体躯が暴れまわり、ワタルを圧し潰そうと牙を剥いた。まともに受ければ抜け出すことは容易ではない、連撃を躱しながら返す刃で反撃を試みるも光すら通さない黒鱗がそれを許さない。

「将軍を援護しろ!」
「魔術部隊、追撃開始___!」

同じくして最下層に辿り着いたカリンの号令と共に、魔術部隊が魔術による遠隔射撃を開始する。第五要素を纏った魔弾が四方から魔竜を貫いた、弱点属性が解らないいま弱点を探りながら戦うしかない。

ダメージは期待できそうにないが、光の弾幕でよろけた魔竜の隙をついて一度後ろに下がる。途中、際どい戦域にいた負傷者を抱え防衛戦線に戻って来たワタルに、キョウが言う。

「いけるか、ワタル」
「聖典は効いているが鱗を砕けない」

ワタルが回収した負傷者を医療班が連れて行く、大剣を握り直したワタルがカリンたちを見る。

「解析は」
「あの様子だと今しばらくかかるだろうな、腐蝕と呪汚は確実だろう。今の内にアンチポーションを飲んでおけ、今ここにいる奴らではおぬしには着いていけんぞ」

そう言ってキョウが懐から取り出した瓶をワタルに投げつける。受け取ったそれのガラス蓋を抜いて、ぐいと中身を煽った。味が良いとは言い難いが、これは嗜好品の類でないので文句は言えない。

「もって10分といったところだ」
「十分だ、ありがたい」


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