兄弟子(冨岡)と弟弟子(炭治郎)で仲良し水一門
※ゆるふわ時空
「兄弟子ー! ただいま戻りましたー!」
ずんだずんだと勝手に柱の稽古場に上がり込む。だが目当ての姿がない。はてと、首を傾げていると、てちてちと足音が、兄弟子の足音だ!
「あさぎ、こっちだ」
「! 兄弟子、かわいい妹弟子が五体満足で戻りましたよ! 任務も完璧に熟しまして、帰路ついでに野良鬼も倒しちゃったりして! これはエライ!いい子! 褒めて然るべき!!!」
「そうか」
どーんっと体当たりして、ぎゅううううと抱き着いて。無理やり兄弟子の手を頭にのせれば、よしよしと撫でてくれる。嬉しくてにへ〜と笑うと、少しだけ兄弟子の顔が綻んだ気がした。
「義勇さん、もしかしてその人が…」
「ん? どちらさま?」
「…ああ、こいつだ」
「ん? ??」
兄弟子の腕の間から顔をのぞかせてみれば、男の子は少し照れ臭そうに笑った。かわいらしい子だ、目が大きい。額が真ん丸で、痣のようなものがある。鬼殺隊の服を纏っているが見覚えがない、兄弟子を見上げればぼそぼそと答えてくれた。
「同じ水の呼吸を修めている、先生の手紙を持ってきてくれた」
「鱗滝先生の… あ、じゃあ錆兎さんが言ってた見所のある新弟子って君のことか! よろしくね、名前はなんていうの?」
「はい、竈門炭治郎と申します! 本日付けで鬼滅隊に水柱様の門下生となることになりました、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」
「お返事がいいねえ、さては君は良い子だな。 わたしは、花酒あさぎだよ 同じ鱗滝先生のところで学んだんだ、 だから君の姉弟子だね」
「はい! 鱗滝さんや、錆兎さんから話を伺っています!」
「うんうん、ああそれと。 大事なこと忘れてたけど…姉弟子なので、わたしのことは誠意を込めてお姉ちゃんと呼ぶように」
「炭治郎、付き合う必要はない」
「わかりました!!!」
「!?」
兄弟子の冨岡義勇が何故という顏で衝撃を受けていたが、わたしは素直でかわいい弟弟子ができたことが嬉しくてそれどころではない。「でも、姉さんの方が呼びやすくて…あさぎ姉さんでも良いですか」と口をいっぱいにして聞いてくる炭治郎を、耐え切れず抱きしめてめちゃくちゃ良い子良い子してしまった。
「兄弟子!兄弟子! この子かわいいよ!!」
「そうか」
「もうわたしの家つれてかえるー!」
「止めておけ、炭治郎もあまりあさぎを付け上がらせるな …切りがない」
「むごむご」
炭治郎とわたしは無慈悲な兄弟子によって引き裂かれた。炭治郎はこれから義勇さんについて、修練を積むらしい。そのために、この水柱の稽古場…もとい、駐屯所に引っ越してきたとのこと。
「あ、じゃあわたしとお部屋隣にしようか。 兄弟子、わたしの部屋の隣使っていいでしょう?」
「好きにしろ」
「やったー、兄弟子も良いって! 良かったね、炭たん!」
「炭…?」
「あ、でも夜は一緒に寝ようね! わたしと炭たんと、兄弟子の三人で!」
「え!? そ、 そそそそれはあまり良くないと! 嫁入り前の女性と同衾なんてできません!!」
「気にしなくていいよ、わたしいつも兄弟子と寝てるもん」
「!!?」
「迷惑極まりない」
すんという顔でいう兄弟子のなんと薄情なことか。確かに、わたしがこの駐屯所に引っ越してきたその日から、夜になると兄弟子の布団に潜り込み、それはもう迷惑そうな顔をしているが…きっと照れ隠しに違いない。兄弟子が妹弟子のわたしを可愛いいと思わない理由が!ない!(偏見)
「そうとなれば、今日は炭たんの歓迎会だね! わたし腕によりをかけてお夕飯つくるよー!」
「いえ、任務帰りのあさぎ姉さんにそんなことされられません!俺がやります!」
「じゃあ一緒にやろ、わーい姉弟子と弟弟子の初めての共同作業だね、兄弟子壊滅的に不器用だから一緒に料理できる子できてうれしー!」
「悪かったな」
「兄弟子、なにか夕飯のリクエストありますか?」
「鮭大根」
「代り映えしねー!」
だけど一応作りました、愛情たっぷり込めてね。炭治郎にはわたしの割烹着を貸したのだが、これがすごく似合っていてとても面白かった。炭治郎は炭焼きの家筋の出らしく、「火加減なら任せてください!」とどやさ顔していた。その言に偽りなく、炊きあがったお米はふっくらと立っていて、とても美味しかった。どれほど美味しかったかと言えば、あの無表情の兄弟子がにまあと笑ったほどだとだけ言っておこう。兄弟子ほんと笑うの下手だな、気持ち悪いよ!
「あさぎ姉さんは、義勇さんの継子なんですか?」
「違うよー 候補としては上がったけど、わたしの腕じゃとても兄弟子の領域まで達せられないからね。 その点、炭治郎は見込み大だよ! なにせ鱗滝さんと錆兎さんの太鼓判付だもん!」
「いえ、俺なんて本当にまだまだで…」
「謙遜謙遜、大丈夫だって。 才能があれば、あとは自ずと経験から技術は身に付くんだから」
まあ、つまり才能がないと致命的ともいう。わたしが良い例なので、なんともいえない顔でむーんとなったが、炭治郎から返事がない。男の子にしてはお喋りで、わたしがなにか言えば打ち返すように言葉をくれていたので、どうしたのかと彼を見る。わたしが洗った食器を拭きながら、炭治郎はどこか苦しそうにうつむいていた。
「あ、あの…、」
「ん? どったの?」
「…あさぎ姉さんの刀は何色ですか!?」
「んーわたしの刀!? 唐突だねえ、一応青色だよ〜」
水の呼吸に適性のある隊員の日輪刀は、すべからく青に染まる。だがわたしの日輪刀は濃紺に近く、兄弟子である冨岡義勇や、育手補佐を務める錆兎のように透明度の高い青ではない。日輪刀の青の濃度、それは色の透明度がその使い手の技量と比例するという。うっ、お腹がいたいぜ…!
「そういえば、炭治郎の刀まだ見せてもらってなかったね。どんな色をしているの?」
「! え、あ…っすみません!!」
「おうふ 唐突な謝罪90度」
「俺の、俺の刀…青く、ないんです!」
「え、じゃあ何色?」
「黒です!!」
半場ヤケクソといった炭治郎の声に、居間で茶を飲んでいた兄弟子が「煩い」と小言を言う。だがそれどころじゃない、黒…だと。それって、あのハズレと名高い黒刀のことか!
「_______関係ない!」
「え」
「関係ない、刀の色なんて意味ないよ!」
「あるに決まってるだろう、愚か者が」
「兄弟子は黙って!いいの!例え黒刀でも炭治郎はうちの子!水一門の末っ子!だよね、兄弟子!」
ぎゅうううーと炭治郎を抱きしめながら叫ぶ。すると、眉根を顰めていた兄弟子が呆れたようにため息をついた。そして、ぼそぼそと言う。
「炭治郎が…水一門の剣士として、志高くあるのなら問うまでもないことだ」
「!」
「兄弟子…! っ〜〜〜〜好き!!!」
「ぶふっ」
土足のまま居間の兄弟子に抱き着けば、勢いで兄弟子が茶塗れになったが些細なことだ。炭治郎が「あさぎ姉さん、服が透けて乳房が見えそうです!隠して!」とわちゃわちゃして、兄弟子が「馬鹿者っ 茶を飲んでいる時に抱き着いてくるな!!」とわちゃわちゃして。今日も笑顔が絶えない、楽しい我が一門。暖かくで優しい世界に、わたしはへにゃりと笑った。