OTHER NOVEL | ナノ

臨也信者と喧嘩人形が屋上ではじめまして


「あ、」
「ん?」

それは、風の心地よい夏の日のことでした。
時刻は昼ちょっと過ぎ。1人青空の下、手作りのお弁当など広げているとその人は現れました。太陽の光を受けてきらきらと反射する金髪に、高校生とは思えない程の長身と確りとした体躯。その人には見覚えがありました、

(えーっと、しずちゃん、でしたっけ?)

確かオウルさん(折原臨也さんのこと、オウルというのは私が着けたあだ名です!) がそう言っていた気がします。オウルさんが大嫌いと豪語している珍しい生命体Aです。思えば、オウルさんに付き纏うようになって大分経ちますがこうしてこの方と見合うのは初めてです、ともなれば第一印象は大事ですね!

オウルさんに付き纏う私と、オウルさんが大嫌いな彼。対照的な2人ですが、オウルさんという一点に置いて私たちは繋がり合っている。この縁は掴み取って然るべきですっですよねオウルさん!

「初めまして!」
「!」

私はにっこりと笑いました。うん、笑顔は大事です。

「3年の矢包ひなみと申しますっ どうぞよろしく」
「……、平和島、静雄」
「なるほどっ シズオさんですか!」

だからシズちゃん、なんですね!
オウルさんったら嫌い嫌いいってこんな可愛いあだ名を作っちゃうなんて。なんだかんだ言って実は仲良くしたいだけなんじゃないでしょうかっクスス。

「…お前、何時もアイツと一緒にいるよな」
「? アイツ、とは…オウルさんのことでしょうか」

突然お話されて驚きました。でも話しかけて頂けるということは彼も私に興味があるという事、これは重畳です。そう思ったのも束の間、シズオさんの顔があっというまに不機嫌色になってしまいました…あれ?私どこかでしくじってしまったでしょうか!?

「…オウル、ね」

そう、シズオさんは呟かれました。…一体、なんなのでしょう。

「…アンタ、アイツと弁当くわねーの?」

後々思うに、この質問はなんとも彼らしからぬものでした。
ですが初めてお会いした私がそんなことに気づくわけもありません。私はシズオさんの言葉に疑問持たずに答えました。

「はい、そうですよ」
「…ふーん」
「確かにオウルさんとは良くご一緒に居させて頂いてますが、何もかも一緒と言う訳ではないのです。第一、私とオウルさんはあまり合わないので」
「合わない? 何が?」
「えっと、波長…、でしょうか?」

思いつくままに答えると、シズオさんは理解でいないと言わんばかりに顔を顰めます。あーんっごめんなさい!私、日本語とっても苦手なんですっ。

「気ぃ合わねぇのにつるんでンのかよ」
「いいえ。私が一方的に突っかかっているんですよ」
「ハッ 変わんねぇーだろ。どっちでも」

___(アンタがアイツといる事実に変わりはないだろう)

そう言うシズオさんの顔は、どこか辛そうに見えて私は驚いてしまいました。この人は何をそんなに辛く思っていらっしゃるのでしょうか?私には皆目見当がつきません。
だから私は言葉を続けました。重い空気を前に、耐え切れなかったとも言います。

「えっと、名誉の為?に言っておくのですか。私はオウルさんに情緒や情景を思い、懸想している訳ではありませんよ。価値観が合う訳でもありません、何もかも合わないからこうしているです」
「どういう意味だよ」
「えっと。ですから、そうですね…例えるなら、この時間です」

ぺちんと箸をおいた私に、シズオさんは真っ直ぐにこちらを見ました。

「私は1人でお弁当を食べていますが、1人で食べたいと思ったからじゃありません。単純に、一緒に食べる友達がいないからです」
「!」
「加えて、私は好んで1人でいるわけではありません。えっと、オウルさんとの決定的な違いはここでしょうか…? オウルさんは好んで独りですけど、私は独りを好みません。できるなら誰かと居たいと思ってます、独りはとっても寂しいですから」

これは答えになるでしょうか。
そう思って笑えば、シズオさんは少し顔を歪めた後「そーかよ」とだけ言いました。嗚呼良かった、解ってもらえたようです。安堵から私はもう一度笑ってお箸を取りました。今日は卵焼きが上手くできたので嬉しいです、よしよしこれは最後まで取っておきましょう!

「……」
「…!」

そう思っていた矢先、不意に彼が動き初めました。そうしてどすりという音が横からこんにちは。見ればシズオさんがこんにちは。

「?」

何事かと思い横を見つめていると、シズオさんはごそごそとビニールを漁り始めます。そこから出て来たのはパン、お昼ごはんです。どうやら彼もここでお昼を済ますご様子です。

「…」
「……」
「……ンだよ、文句あんのかよ」
「いーえ」

じろりと睨まれたので素早くそう答えると、彼はバリリと豪快に開けたパンに齧り付きもふもふと食らい付きます。生クリームパンです。とっても甘そうです。

「…、オレも」
「?」


「独りは、寂しい…から……」


そう言ったシズオさんの耳は、まるで林檎のコンポートみたいに蕩けていました。きっと食べたら砂糖の甘みが詰まっているんだろうな。

「……それじゃあ、」
「…」
「私たち、おそろいですねっ」

笑う私に、シズオさんは一瞬渋い顔をしたが直ぐにどこか諦めたように笑った。少しだけ眉を下げて笑うシズオさんの笑顔が素敵で、私はもっともっと笑いました。

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