<お姉ちゃん>。と零崎双識
彼女と初めて会ったのは何時のことだったか。
記憶的に言えばそれは間違いなく人識を見つけて間もない時…俺が17の時、春、××県××町18-7、彼女の自宅で、なのに。俺はもっと以前に、彼女に会ったことがあるように感じた。まるで彼女の隣が当たり前のように。まるで彼女の視線が当たり前のように。まるで彼女の指先が当たり前のように。まるで彼女の声が当たり前のように。俺がいて。俺を見て。俺に触れ。俺を呼ぶ。まるで、まるで、その感覚は。ああ、気色が悪い。気持ちが悪い。この感情を是としてはならない。ならない。ならないのだ。私は、私は、私は。なのに、彼女は今日まで生きている。こうして生きている。生きて私の前に何度も立っている。息をしている。会話をしている。視線を交わしている。なぜ。人識が彼女を「姉」と呼び慕っているから?違う。彼女はあまりにもたやすい存在だから?違う。彼女に恋をしたから?ありえない。なら、なぜ。
「あ、お久しぶりです」
「やあ、ひなみちゃん」
まったく、彼女が俺と同い年とは思えない。彼女は小さすぎる脆弱すぎる頼りなさすぎる軽すぎる儚すぎる当たり前すぎる軟すぎる、本当に。瞬きをすれば刹那の内に飲まれそうなほど。
「うちの愚弟はお邪魔しているかな」
「はい居ますよ、どうぞ」
「失礼するよ」
零崎の中の零崎、秘蔵の鬼である人識。生粋の殺人鬼である人識。その人識に未だ殺されない女。おそらく世界中でただ一人。唯一、無二、単一、孤独。彼女でしかありえない奇跡。
「げ、兄貴」
「げ、とは挨拶だね 人識」
「なんで入れるんだよ、姉貴ぃ」
「人識のお兄さんでしょ」
「まあ、そうだけどさ」
「何か入れてきますね」
「ああ、悪いねひなみちゃん」
「姉貴! 俺もおかわり」
「はいはい」
ああ、なんて君という存在は<最悪>なのだろう。