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エロ漫画家(Domなわたし)とプレイボーイ(Switchなマーリン先輩)の凸凹はなし


※Dom/Subユニバース設定
パロディなので一部キャラクターは氏名が異なっています



「一度でいいから、先輩にプレイしてみてほしいなあ」

たっぷりと。蜂蜜に漬けたフルーツのように甘い声で、友人が呟いた。熱に浮かされた瞳には情欲色がチラついていて、うげえと顔が歪む。

「マジで言ってるの」
「マジマジおおマジ〜。まあ、シノには解らないかもね」
「はいはい、どうせわたしはランク低いですよ」

ケッ。とフォークに刺したサラダが落ちるから、胸に込み上げる苛立ちを収めるようにガツンと突き刺した。もしゃもしゃしていると、流石にわたしの不機嫌を察したのか#とも#が少し慌てたように捲し立てる。

「うそうそ、違うって。シノのプレイに満足してないわけじゃなくて、それだけ先輩が魅力的っていうか」
「ホォー」
「有名なんだよ先輩のプレイ、もうドラッグみたいに効くんだって。サークルの友達もシてもらったみたいなんだけど、もう先輩にシて貰うと他のDomじゃ満足できなっちゃうんだって」
「そんな簡単に誰とでもするとか、ヤリ魔か」
「やだプレイボーイって言って、でも来るもの拒まず然るもの追わずってスタンスみたい。それにほら、先輩Switchでしょう。だからDomとSubどっちの気持ちも分かるのが良いんじゃないかって、」

その後も楽しそうに“センパイ”の話をする#とも#の言葉を聞き流しながら、ちらりと視線を他所にやる。キャンパスの広い中庭に、男女問わず多くの人に囲まれている男がいる。

太陽の光を受けて七色に輝く髪、アメジストに似た淡い色の瞳。誰もが見惚れる花の顔で柔らかに微笑む、この大学で知らぬ学生はいない有名人。生命理学科の3期生、#とも#がセンパイと呼んでいるので名前がわからないが。確か一度聞いたことのあるそれは、女みたいなかわいらしい音だったと思う。

(まあ確かに、かわいい顔してる)

男にも女にも、…DomにもSubにも受けそうな顔だ。まるで一つの美術品のような、それでいて頭脳明晰というのだから神様というのは本当に不公平だ。遠く人の生垣に囲まれた彼をぼうと見つめていると、ふと彼と目が合ったような気がした。

「シノ」
「なに」
「もうわたしの話聞いてよ、あなたのSubが寂しがってます〜」
「ああ、ごめんね。___#とも#はわたしが知らないことを教えてくれるから、あなたと話をするのは楽しいよ。いつもありがとう、#とも#」

やさしい声で机に伏せってしまった#とも#の頭を撫でれば、#とも#は嬉しそうにクスクス笑った。その満足そうな様子に、わたしも自然と笑顔になる。…彼女に呼ばれて視線が外れたのだから、不自然ではなかったはずだ。たまたま見ていた、と言う風に解釈してくれればいい。

脳裏に染みついたようにして消えない、アメジストの光。
それを振り払いながら、わたしは自分のパートナーのケアに努めた。その光景を、誰が見ているとも知らずに。







ダイナミクスと呼ばれる第二性の存在は、もはや血液型と同じように社会常識となっている。男女の性差と同じように、個人の人生に深く関わってくるダイナミクスは大抵3歳児検診に合わせて行われるのが通例だ。わたしはそこでDomと診断された、Subに比べるとダイナミクスの影響が少ないため中学校までは何気なく過ごしていたが。高校に入った頃に、一変した。遅れてきた、第二次性徴期。

その日を境に、わたしの腹の底に隠れていた支配欲が牙を剥き出しにした。

一人ではどうしようもできない欲求に、病院にかかった。そこの医師に紹介されたのが、パートナーシップ制度。自分と同じようにダイナミクスを持て余し、かつ、Claim(クレーム)…特別なパートナーを持たない相性が良いDomとSubを引き合わせてくれる制度。どちらかというと社会福祉の側面が強いが、この制度をきっかけにClaimの契約をするペアも多いと聞く。

だがわたしと#とも#は、どちらかといえばビジネスライクな関係だ。仲が悪いわけではない、互いにこうして同じ大学に進学する程度には親交もある。#とも#は惚れっぽいSubだが、それも彼女の魅力だと思うので抑圧したことはない。素直で甘えたがりなところは可愛らしいと思うし、褒め(ケア)のし甲斐がある。

だけれど、わたしのダイナミクスはそれでは満足できなかった。




「いっそ、バラしちゃったら? そんなに仲良しさんなら受け入れてくれるよ!例え君が、男の子にかわいい格好させてアヘアヘ言わせるのが好きな特殊性癖もちだとし ごぶふあ」

投擲したぬいぐるみは、見事に担当の脳天に直撃した。おかげで仕上げた原稿が宙を舞ってしまったが、まあ仕方ない。

「自分で拾ってくださいね」
「うぐぐ ボクはそれでもあきらめな 」

「Kneel」

キツイ声で命じれば「あひゃあんっ」と立ち上がろうとしていた担当が跪く。
契約のないSubにコマンドを出すなんて、本来なら絶対にしてはいけないことだが。この大変へん…とく…せい…ごほん。彼に関しては、後ろで「しゅごいのおお」と全身ビクビクさせて悶えているのを見てくれれば解る通り、そういう扱いにむしろ快感を覚えるタイプなので問題ない。

「はあはあ、ホント シノちゃんのコマンドしゅごい。もうボク腰抜けて、イっちゃいそう」
「床を汚したら許さない」
「ああん、その冷たい声もすきぃ 君のグレアもっと浴びさせて!」
(…キショイ)

…彼はアストルフォ、生粋Subのわたしの担当編集者だ。そう、…わたしは、所謂その…エッチな商業誌に連載枠を持つ漫画家…という副業をしていたりする。女性Dom向けの月刊『ユニバース』、短編作家ペンネーム『ブタ真珠』としてこっそり活動中。わたしの描くお話は、…かわいらしい男の子がコスプレしたり鬼畜責めされてアヘアヘするものが多いので、それを大層気に入ったらしいアストルフォが去年から担当についてくれているが。こんな女装好き変態Sub野郎だと解っていたら、頷かなかったのに。

「ねえ、いっそボクと契約しない? ボクならこんなものなくても、君のことをいつだって満足させて___あ・げ・る」

後ろから抱き着いてきたアストルフォが、ふうと耳に息を吹きかける。驚いてびくりと震えてしまった隙に、わたしのメガネが盗まれてしまう。

「ちょっと」
「アハ その眼だよぉ、君のその眼…冷たいのにこんなに体が火照ってぞくぞくするグレア、滅多にない。シノ、ボクが知り合いの病院紹介してあげるからもう一回ランク判定受けてきなよ、ボク君の本気が気になってここがね、熱っぽくて夜も眠れないんだから」
「ッチ Down!!」
「あびゃん!」

断りもなく性器を擦りつけてくる変態に慈悲はない。床にうつ伏せになったアストルフォが命じてもいないのに脱ごうとするので、荒縄(彼が勝手に持ってきて置いて行った)で縛りつけて部屋から蹴り飛ばす。漸く一人に慣れた仕事部屋で息をついて、お気に入りのうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。

ディスプレイには、わたしが大好きなバニーのコスプレをしたカワイイ男の子が喘いでる様子が写っていて。それを見ていると、腹の底がじんわりと熱くなった。満たされる、可愛い、好き。…こんなものでしか満たされない、わたしのダイナミクス。

(これでいい)
______現実でこんなことをお願いすれば、アレ(アストルフォ)と同類になってしまう。

そう思うと、すんと理性が戻って来た。あーーーいけない、彼の甘言に惑わされては。メガネをかけ直して、わたしは仕事に向きなおった。うん、これでいいんだ。

そう自分言い聞かせて、





____それなのに、どうして。

(ねむ……)

這いずるようにして辿り着いた講義室、端っこの席に座って俯せた。…昨日、結局アストルフォに付き合ってコマンドを連発してしまった。おかげでダイナミクスは満たされたが、彼とのコミュニケーションは精神的にどっと疲れるのだ。

今日はこの講義を受ければ最後、あとはいくらでも家に帰って眠ってしまえる。それを心の支えにしてなんとかここまで来たが、授業と言う名の試合が始まる前にすでに敗色濃厚だ。

そんな風に疲れ切っていたから、暴力みたいな眠気に犯されて。わたしは終ぞ、彼が肩に触れるまで呼びかける声に気づけなかった。

「キミ」
「……、?」
「随分とお寝坊さんだね、昨日はそれほどお楽しみだったということかな」

謳うような声だった、まるで教会の聖歌を聞いているような。眠気をさそう声音にうつろうつろしていると、何かがカリとわたしのメガネに触れる。そのまま引き抜こうと、するから____パチンと目が覚めた。

「おや」

弾かれる様にして身を引くと、驚いたような声がする。ずれたメガネのフレームが遮る世界で、あの蕩ける様なアメジスト色がわたしを見た。

「おはよう」
「…」
「もしかしてまだ寝ぼけている?」

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