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両面宿儺妹IF世界線でDLにいく


※IF世界線、虎杖悠仁と宿儺が双子設定



虎杖悠仁には双子の兄と、血の繋がっていない妹がいる。

「オイ、シノの弁当と水筒は持ったのか」
「持ったって、何度聞くつもりだよ。っていうか、自分で持てよな」
「黙って疾く荷物を運べ」

シューズの紐を結んでいた悠仁の背を、宿儺が足で蹴ろうとしたがそれは寸前でぴたりと止まる。目敏くその様子を見つけた少女が、キッチンから飛び出してきたためだ。

「悠仁お兄ちゃんイジメちゃだめ」
「…はあ」
「ナイスシノ、もう宿儺すっげぇオレのことイジメるの。もっと叱ってやって、そいつシノの言うことしか聞きやしねぇ」

余分なことをいうなというように宿儺の鋭い視線が飛んできたので、慌てて立ち上がり避難する。冗談ではなく、この兄は手加減というものを知らないようで。兄弟ケンカの名目で何度も病院送りにされている、その度に祖父が顔を真っ赤にして怒ったが宿儺は何一つ聞きやしない…そう、彼がいつしか見つけてきた、kの小さな妹の言うこと以外は。

「シノ、忘れもんない?」
「うん、何度も確認したよ」
「チケットは」
「持った」
「シノ動くな、結びがほつれる」

外はすっかり冬の寒さが染みてきた、吹く風は冷たいが悠仁はこの程度どうということはない。体を暖めるために左右に足を上げながら、忘れ物がないかとシノと指折り確認する。その間に宿儺がシノの首にマフラーを巻いた、その手つきは甲斐甲斐しい兄そのもので、見慣れた光景ながら悠仁はなんともいえない気持ちになる。あの、その優しさの一割でもいいからオレにもくれませんかね?

「気ぃつけていってこい」

玄関で半纏を着た倭助に見送られ、朝早く虎杖兄弟とシノは家を出た。今日は待ちに待った日であり、シノの中学校への進級祝いに千葉の有名なテーマパークに遊びに行く日だ。

この日のために、シノは頑張って受験勉強をした。学校の授業など指折り数えるほどしか出ていない癖に、なぜか頭の良い宿儺が教鞭をとり。悠仁が夜食を作り、虎杖兄弟の手厚いバックアップのお陰で希望していた中学に合格することができたのだ。

「あのねあのね、言ったらここでポップコーン買って、それからね」
「ああ」
「こっちのアトラクション近いじゃん、シノが乗りたがっていたやつ」

受験勉強という名の地獄から抜け出すことができたシノは、それからというもの毎日ウキウキで。本屋で買った観光誌を擦り切れるほど毎日眺めていた。大事な相棒はもちろん今日も一緒だ、仙台駅から新幹線に乗りまずは東京駅へ。その後乗り換えて舞浜駅に向かうと片道は凡そ三時間程度かかる。

帰り道も同じなのだから、実際にパークにいられる時間は少ない。少しでも効率的に回ろうとああでもないくでもないと頭を回すシノの様子が微笑ましいのか、地元では手の付けられない暴君として有名な宿儺も今日ばかりは大人しい。

(まあ、早起きしてシノの弁当つくってたし)

宿儺は料理の腕も良かった、まあ彼が手料理を振舞う相手は今のところシノだけだが。偶におこぼれという形で食べられるので、次点で悠仁と倭助と言ったとところか。

「シノ、今日さ宿儺がベントー作ってくれた」
「! ほんとう、うれしい」
「だって、良かったなあ〜 お兄ちゃん?」
「殺されたいのか貴様」

額に青筋を浮かべた、振り二つがにらみ合う。勿論、シノの前では決して宿儺が暴力という手段を取らないことを解っていての揶揄いだ。それが解っているからこそ、宿儺もキレているのだろう。だがシノが直ぐに、ぎゅっと悠仁と宿儺の腕を抱きしめて「ケンカ、ダメ」と厳しく言う。

「ゴメンって〜」と、むすりと膨らむシノの頬を悠仁が突いた。すっかり怒りはどこかに飛んで行ってしまったのか、宿儺はぼんやりと窓の外を眺めるという作業に入った。だけどその手は、決してシノの腕を払わないのだから、彼のシノへの甘さは相当なものだ。



東京駅に着くと、人の波に揉まれてシノが何度か迷子になりかけるというハプニングがあったが事なきを得た。なんだかんだと言っているが、悠仁のシノ専用センサーも中々のものなのだ。そのまま京葉線に移動すると、ちらほらとテーマパークのキャラクターグッズを身につけた若者が増えてくる。みな同じ目的地を目指しているのだろう、中には訓練された兵士のように移動している者もいて感心させられる。

「あのね、」

当然席なんて座れるはずもなく。一番安定していそうな座席側の角にシノを入れて、通路と扉側を塞ぐように悠仁と宿儺が立った。邪魔にならないようにリュックサックを抱えたシノが小さく声をかけたので、2人は何かと彼女の声を拾うために身を屈める。

「みんなでカチューシャつけよう、三人分買えるようにおこずかい貯めたの」
「……本気言っているのか」

ニコニコ頬を明るめるシノを前に、珍しく宿儺がぐうの音を上げた。その視線がちらりと、待ちきれずに自前のカチューシャを取り出している乗客へと向けられる。ファンシーを絵に描いたような、おおよそ宿儺とは似ても似つかないグッズだ。正直悠仁は、それを宿儺が着けている様子をイメージするだけで笑える。

「ぐ ブフッ 、シノは、どれが欲しいの」
「えっとね、人魚姫の… かわいくて」
「どんなん?」
「貝殻がね耳になっているの、リボンがついてて わ、わたしには可愛すぎて似合わないかな」
「お前が欲しいものを身につけろ、他人の目など気にするな」

きゅうとしぼんでしまったシノに宿儺がきっぱりと言う。「きっと似合うぜ」と悠仁も言えば、シノの表情に笑顔が戻る。そうかな、どうかなと。すっかり調子の戻ったシノに内心ほっとしながら、悠仁はオレはどれにしようかなとまだ見ぬパークに心を躍らせた。







「んじゃ、オレあっちで食いもん買ってくるから。仲良くしろよ、宿儺」
「さっさと行け」
「気を着けてね、お兄ちゃん」

パークに入ってからは怒涛のように時間が過ぎた。必ず乗りたいと言っていたアトラクションに並んで、ポップコーンを食べながら一人ひとつカチューシャを買って、豪華な宿儺手製のお弁当を食べた。

そうしてパレードの待ち時間、座り込んだ宿儺の足の間に入ったシノに見送られ悠仁は買い出し班として旅出つ。くそぅ、ジャンケンで負けなければ今事は宿儺と逆の立場だったはずなのに。

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