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縛らせてください、ワタルさん!


ワタルさんを擽って遊んでいたら、止めろと怒られたことがある。
片手で両手首をホールドされて、ナメめられていると思ったので全力で抵抗したがビクともしなかった。逆に「本気じゃないよな」と煽られる始末、解せない。どうしてわたしがこんな目に。

「ワタルさん」
「…」

用意したのはマジックテープの拘束具、ワタルさんがぐぬうと顔を顰めさせた。
黙って待っていれば、しばらくして大人しく手を差し出してくれた。だがマジックテープごときで動きを封じることはできないらしい、「解ける?」と聞いたら「壊していいのか」と逆に聞かれた。

…まあ、期待はしてなかったけれどね。力任せに解かれたマジックテープの拘束具を見て、カイリューが爆笑していた。くそう、バカにして!

「ワタルさん」
「…」

用意したのはワークショップで購入した粗紐、ワタルさんがまたかとため息をついた。
黙って手を差し出すので、わたしは意気揚々と手首を縛った。だがおかしい、次の瞬間にはなぜかワタルさんの腕が自由になっていった。どういうことだってばよ。

クエスチョンマークだらけになるわたしを前に、「結ばせ方があるんだ」と種明かしをしてくれる。実演しながら教えてくれたが、なぜかわたしの腕を縄で縛る必要が???というか教えて貰った方法で抜けないのだけれど、ちょっと。ちょっと、仕事に戻らないで!先に解いて!ねえ!

「ワタルさん」
「…」

もう怒った。用意したのは、皮ベルトの拘束具。
本格SMサイトで購入したそれは、お金を惜しまなかったことだけあって中々の強度であった。それを見たワタルさんが、なぜか頭を抱えてしまった。

だがこちらも止めるつもりは毛頭ない、さあ大人しく手を差し出せ!




「きつくない?」
「…いや、まあ… ああ、」

歯切れの悪い返事だった。背中に回してもらった腕をベルトで拘束して、更に二の腕にもアームカバーを装着した。さすがのワタルさんもこれなら動くことができまい。

セットで首輪も着いてきたのだが、そちらは「止めろ」と割と本気の声で拒否されたので…また機会。そう、わたしはあきらめない女。

「…で、俺を動けなくして君はどうするつもりだ」

呆れ半分でベッドに寄りかかる姿は、とても動きを制限された人間の態度とは思えない。なんでそんなに上から目線なのか、現状立場はわたしの方が上のはずなのに。

「それが腕を拘束された人間の態度ですか、もっと弱弱しく縋るように言ってください」
「…」
「寝ようとしないで、もう!」

そっと瞼を閉じて眠りの体勢に入るワタルさん、慌てて頬をぺちぺちと叩く。うっすらと開いたグレイの瞳は、自分で承諾したくせに酷く不満そうであった。

「こういうのは君の方が似合うとおもうが」
「ジュンサーさんに通報します」
「俺にするのはいいのか」

ハッと一笑するワタルさんに、当然と頷く。だってあなたは自分で承諾したのですから、わたしは罪に問われません。

「もしこれから抜け出そうとしたらどうしますか、抜け出せますか?」
「…まあ、必要に迫られた場面なら」
「え、できるの」
「ああ、まず右肩の関節を」
「わーーー」

聞きたくないので、ぺちんと彼の口を手で塞いだ。いけない、うっかりグロテスクな話になるところだった。

あぶないあぶないとひとり額の汗を拭っていると、べろんと掌に生ぬるい感触。普段感じない感触に吃驚して手を放す、え、え、舐められた? 驚いてワタルさんを見れば、真っ赤な厚い舌で唇を舐めていた。

そうしてわたしを誘うような、煽情的な色を纏ったグレイの瞳を向けてくる。いつの間にか跨いでいたワタルさんの身体、その足をぐいとわたしのおまたを擦るように動かす。

それだけでも心臓が止まりそうなほど驚いたというのに。ワタルさんは続けて、何かを彷彿とさせるようにとんとんと膝で叩いてくる。その合図に合わせて、…お腹の奥がじゅぐんと重くなる気がした。

「え、えっち」
「なんのことだか」

むぐうと顔を顰めるのわたしに、ワタルさんは知らんぷりをする。
いつまでも自分が優位と信じて疑わない態度に、いい加減腹が立ってきた。そのうえこんな悪戯をされては、わたしにもプライドというものがある。いつまでもわたしがワタルさんに良い様に弄ばれるだけの女と思わないで欲しい!

ガッとワタルさんの襟口を掴む。お?と、目を丸くするワタルさんを放って、襟内にあるホックを外した。そうして明らかになる喉元に、なんだか酷くいけないことをしているような気がする。込み上げる背徳感を知らないフリして、見えない様にデザインされている合わせ裏の隠しチャックに手をかけた。

じいとチャックをズラしていく。深いネイビーとオレンジ色のラインが施されたバトルスーツが開けて、スポーツインナーだけのワタルさんの身体が出てくる。その様子にごくりと息を呑むのがわかったのだろう、黙っていたワタルさんが少しだけ喉で笑った。

「もう終わりか」
「う、」
「ベルトの外し方は知っているだろう」

それは、腰の辺りで止まったわたしの手に対して言っているのか。
…オールインワンになっているワタルさんのスーツ、残るベルトを外せば全て脱がすことができる。だけどこんなことをするのは初めてで、

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