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ラギー先輩が好きだ。
惜しみない気持ちでストーカーした結果、1000分の1位の気持ちは伝わっている気がする今日のこのごろである。

レオナ先輩に白い目で見られようと、ジャックくんに憐みの肩ポンを受けようと諦めない気持ちこそが!常に世界を牛耳ってきた!え、都合の良い妄想?ちがうもん、ちがうもん、ぼくドラえもん!

「ラギー先輩、ドーナッツ美味しそう! 一口くーださーいなっ」
「アンタも懲りないねぇ〜」

そういって、大きな口でドーナッツをばくりと食べる。残った2割程度をおもむろに半分に割ると「ほい、どーぞ」とくれた。

……ほら!勘違いじゃない!!「100マドルっす」とか言われているけど、わたしの恋情を営業利用するくらいには思いが伝わっている!わたしはサイフから300マドルを支払った、また次もサービスお願いします。





「はあ…ラギー先輩を養いたい、ずっと家に居てくれるだけでいい…」
「ご病気は相変わらずのようですね、ミワさん 安心しました」

なあにが安心しましただ、1ミリもそんなこと思ってないこと知っているんだからな。

オクタヴィネル寮のモストロ・ラウンジ。夜の営業も終わり、クローズ前のお掃除タイムである。わたしはラギー先輩に貢ぐために本日もせっせとモップを操る悲しき愛の奴隷…。ここはすごく給料が良いのだ。

今日のレジ締めはジェイド先輩が担当らしく、売り上げを数えながら帳簿にペンを走らせている。その目はこちらに向けられておらず、彼が適当に返事をしているのは明白だった。

「そういえば、先輩の正体がウツボだって聞きました」
「ふふ 一応まだ仕事中ですよ? 口より手を動かしてください、イワシさん」
「イワシって呼ぶの止めてください。フロイド先輩の他のみんなには凝ったあだ名つけるくせに…わたしだけ、なんか適当すぎません? いじめですかね」
「そうでしょうか、よく特徴をとらえていると思います。 美味しいですよ、イワシ」
「味の問題じゃない、せめてタイが良かった」
「ご自身を過大評価しすぎでは?」

マドルを整えながらさらっとヒドイこという男だ、まるでギャング。ウツボだけに。…しかもこちらを一瞥もしない、リーチ兄弟が、顔が良くても女にモテない理由が透けて見えるってものだ。

「すこしはラギー先輩のサービス精神を見習った方が良いと思う」
「人魚に陸の獣を見習えとは、…あなたも中々酷なことをおっしゃる。 ああ、右から2番目のソファ席、座面が汚れているので拭いておいてください」
「え、どこ  ぶほぉ」

ノールックで顔面に雑巾を投げつけられた。
___これだからこの人は!

薄暗い照明で気づかなかったが、指示された席をよく見ると確かに汚れがある。何かのソースが落ちたのだろうか。えーんやこやと座面に膝をついて拭いていると、少し遠くから「はしたないですよ」と小言が…姑か。心配されずともスカートの下に短パン履いとるわ。

「あぁそれと、ウツボって通い婚だから、ああみえてリーチ兄弟は“好きなった女の子には”献身的なんじゃないかってクラスの子たちが言ってました」
「今年の一年は低俗な人たちばかりで困りましたね、後で名前を教えてください」
「デスノート作るの止めろや。 で、どうなんですか実際! このまえアズールパイセン、オーバーブロットしたって聞きました。それを先輩たちが噂のオンボロ寮の女の子と助けたとか?いやーこれは怪しい匂いがプンプンしますねぇ! 共同戦線とか燃えるっ展開っ!」
「一年生より先に、粛清すべきはあなたでしたね」

はあーっとワザとらしいため息をついて、ジェイド先輩はカウンターに座った。一息つくように、帽子を取り蝶ネクタイを緩めた姿は…双子の片割れと瓜二つだ。…まあ、口では言わないが。

わたしだけ働いているのも癪で、ダメで元々「掃除手伝ってください」という意味を込めて、そっと近寄りモップを手に握らせてみる。彼は表情を変えず、静かに握ったモップを再びわたしの手に握らせて見せた。この野郎。

「単にオーバーブロットのことを言うのなら、アズールよりもあなたが愛するラギーさんのところの寮長が同じようなことなったじゃないですか」
「わたしが好きなのはラギー先輩であって、レオナ先輩はぶっちゃけどうでも…。 あの人、立場的にも闇深そうだし」
「おや、存外冷たいのですね」
「ていうか! 最近そんな話ばっかりですね、レオナ先輩の前はリドルくんちゃん先輩でしょ? 物騒すぎる、みんなもっと言いたいことは言って、食いたいもん食った方が良い…」
「みなあなたほど体裁を捨てられれば楽でしょうが」
「…ジェイド先輩って本当に一言余分、身長も余分、ムカつく」
「おや自覚がおありでしたか、それは失礼いたしました」

ギザギザ歯を見せて楽しそうに笑いながら、ジェイド先輩は言う。だから表情と言葉は一致させろと言っている! 売られたケンカを買うのも癪で、黙って洗った雑巾をハイター漬けにしていると、ジェイド先輩がとんとんと指でカウンターを叩きながらつづけた。

「近頃、いろいろと物騒なのは確かです。我がオクタヴィネル寮にも数件、不審者の目撃情報があがっています」
「NRCに忍び込むとは良い度胸、それならどこでも就職できる」
「一応とはいえ、生徒はみな魔法士ですから問題ないと思いますが。狙われるとしたら、あなたのような警戒心のない女子生徒でしょうね」
「ふんっ 丸焼きにしてやんよ」

マジカルペンを手に宣言する。ずいーーっとジェイド先輩に見せれば、オッドアイが「ふむ」と宝石を見つめた。

「曇りのない真っ新な宝石ですね。まるであなたの頭みたいで、大変よろしいかと」
「先輩…わたしも一応女子なので、他の女子にするように優しくしてほしいと思うこともあるんですよ…」
「帰りはおひとりでどうぞ、従業員を送り届けることまで僕の業務には含まれておりませんので」
「ッチ」

舌打ちが気に入らなったらしく、その後思いっきりラリアットを食らった。やさしく!してと!いっている!

しかも帰り道は本当に一人だった。いやべつに、大して距離ないからいいけど。別に帰り道は何事もなかった。いやー、うん。それでこそわたしの人生。寮の部屋は真っ暗で、ぶっちゃけ寂しい。実家では、どんなに帰りが遅くても出迎えてくれる家族がいた。ああやっぱり一家に一台ラギー先輩は必要だなあ。

(実家のレオンに似てるからかなあ)

その日は元気いっぱいの愛犬の写真を見ながら、眠りについた。夢の中のわたしは大富豪になっていて、ラギー先輩のふわふわお耳としっぽを好き放題触っていた。

ラギー先輩はあのキラキラの笑顔で「一億マドルになるっス!」と言った。夢の中でもぶれない先輩、流石です。

そんな翌日である、______事件は起こった。

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