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瀬名泉の料理はヘルシーなことで有名です


「…おなかすいた」

くうという可愛らしい音ではない。ぐるおぉぉ〜〜〜という腹の虫の盛大な鳴声に思わずそんな言葉が零れた。

「なにそれ 遠回しに俺になにか作れって言うお願い? 百年早いんだけどぉ〜」
「いーちゃんの手作り飯はいらん」

次の瞬間。銀の修羅が凄い言い笑顔で胸倉を掴んで来たので困る。この人アイドルじゃなくてヤクザの方がよっぽど職業合ってると思う。蚊の鳴くような声で「ゴメンナサイ…」と呟けば、「素直な子は嫌いじゃないよぉ〜」と…目が笑ってない。あ、やめて近い。恐い、普通に恐い。

「はいはいそこまで、ケンカしない。 せなっち、一応ことっち女の子だからね?」
「はあ? 知ってるんだけど」
(絶対これは女の子に対する扱いじゃない…)

歪んだ胸元を直しながら思う。

「てか、ことっち凄い音だね。 そんなにお腹空いてるの?」
「うん… こういう時ちーちゃんがいればなあ…」

千秋とはお菓子同盟を組んでいる。同盟は名ばかりではなく、何時もお菓子を携帯し互いに交換し合うのが常だ。だが今日ばかりは千秋が流星隊の活動で終日お休みであり、わたしもストックをうっかり切らしていた。

「そういえばもりっちは今日どうしたの?」
「守沢は休みぃ〜」
「流星隊の営業活動だって。 ちーちゃんは、二人と違って忙しんだよ アハハハ!」

_______お腹が空くと人はイライラしていけない。瀬名に無言の胸倉(以下略)を喰らいながら、わたしは猛省した。羽風も微妙にイラっとしたらしく、「せなっち、やっちゃって」と助けてくれる気配を見せない。恐い。アイドル科こんなんばっか!!!!!

「あ〜もう八つ当たりちょうウザ〜い! ほら厨房いくよぉ!」
「いやだあー! いーちゃんの見た目も味も確かに美味しいけど、カロリーの感じないヘルシー料理はいやだあ!油こってりの焼き肉丼が食べたいんじゃああああ」
「自分で料理一品まともに作れるようになってからいいなよねぇ!チョ〜ウザいんだけど!!」
「あ、俺も一緒する〜 眼鏡くんあとでノート写させてね☆」
「貴様ら学生の本分を覚えているか…?」

できあがった料理はやはりヘルシーだった。

「うまい!さっすが俺のセナ! 愛してるぜ!」
「ちょっと食べながら喋らないでよねぇ王さま。 それに、俺の料理が完璧で美味しいのは俺が一番良くしってるしぃ」
「うわ、 うまっ… これまじでせなっちが作ったの?」
「そうだよはーちゃん。これ全部いーちゃんのお手製、ぶっちゃけちょっと引くよね。男子でここまで料理上手とか、ぷーくすく   」

ガンッと目の前に包丁が突き刺さった。「黙って食べなよねぇ…? 俺に一生分の恩を感じてさあ」と修羅がお怒りである。わたしは黙って箸を進めた。へ、ヘルシー料理が輪をかけて味を感じない、だと。

「あーあ、ことっちじゃないけどさ。 これがかわいい女の子が作ってくれた料理だったらなあ」
「なにかおくん、文句あるなら食べなくて良いんだけど。 全部ことにゃんと王さまが食べるから」
(わたしと先輩が… この明らかに四人前ある量を…?)
「おおっ きたきたインスピネーション! 満腹になった俺の腹に無限の宇宙とともに神の旋律が舞い降りて来てる!!セナ!!ペン!!!」
「ないよぉ」
「こと!」
「すんません。ほんと勘弁して下さい」

結局、先輩は備品のボールペンで作曲を始めた。訊かれもしなかった羽風が「え、俺は? 俺は?月永くん…」と寂しそうにしているが、わたしは「イチゴが今は旬だよねぇ〜」とデザートにまで着手し始めた瀬名泉さまを前にそれどころではない。え、これわたし一人で消化するの?まじで?うそだといって!!

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