探偵 | ナノ

風邪っぴき諸伏景光のお見舞いにいく


※-警察学校編情報前の捏造諸伏です



「ヒロくんが風邪?」

テイクアウトのコーヒーを片手に、降谷くんが頷く。メールでは「試験対策で暫く缶詰」って言っていたのに…わたしにはウソついて、降谷くんには本当のことを言っていたのだろうか。そう思うとむっとしてしまう。二人の付き合いが長く、男の友情には女が入れないことも理解しているが、納得できるかといわれれば別の話だ。そんなわたしの気持ちを酌んだのか、降谷くんが続ける。

「アイツ、朝倉にだけカッコつけしいだからな。久しぶりにガチで風邪ひいて、色々へこんでいるんだろう」
「いろいろ?」
「自己管理ができてない、そのせいで朝倉に会えない」

コーヒーカップを持つ手でわたしを指さす降谷くん。む…。

「お見舞いいければ…」
「メールの感じだと食事も風呂も真面にできてないみたいだからな… 会いたくないんじゃなくて、会えないんだよ。察してやれ、男にも一応女に会うまえに整えたいABCがあるんだ」
「降谷くんはお見舞いに?」
「そのつもりだったけど…今ので気が変った」

いうなり、「持ってろ」とコーヒーカップを渡された。大人しく受け取ると、ポケットから携帯を取り出した降谷くんがなにやらかこかことメールを打ち始める。暫くして「サンキュ」とコーヒーカップを回収された。

「今から“僕が”見舞いにいく体でメール送った。アイツ、いま判断能力鈍ってるからお前だって気づかずにカギ開けるぞ」
「え、」
「タダじゃないからな、一応僕が渡しに行く予定だった講義のプリント、ノートのコピー、それに同期の見舞金で買った缶詰とゼリーとポカリ、持って行けよ」
「う、うん! ありがとう、ふるやくん!」

約束のものを受け取り、降谷くんとキャンパスで別れた。
景光くんの一人暮らししているアパートに向かい、ピンポーンとチャイムを鳴らした。扉の向うからバタンっという大きな音がして吃驚したが、やがてガチャガチャという重い音。キタ…!わたしは身構えた。約束のものを受け取る時に、降谷くんから受けたアドバイスを頭の中で繰り返す。何時でも来い…!と意気込んだ次の瞬間、ぎいと音をたてて扉が開いた。

「ゼロ、わりぃおそくn  だああ!!!!?」
「お見舞いにきました!」

どーーーーん。
効果音をつけるならそんな感じだろう。わずかに開いた隙間から、体を滑り込ませてそのまま景光くんにタックルをかました。降谷氏曰く。気づかれたら梃子でも開かぬ関がゆえ、函谷関の鶏の声も一度のみ。初手肝心、追い出せないように自ら突っ込めとのこと。だがどうやらやりすぎた。そのままどすんっと玄関に倒れてしまった。いつもなら容易く抱きとめる景光くんが…!?

「わーっ ごめんなさいごめんなさい! 大丈夫、ひろく ん     ?」
「      」

起き上がると、下敷きにされた男の人は絶句していた。絶句…わたしも絶句。…だれ?
景光くんといえば、黒い短髪の爽やかなイメージが強い男性。だが目の前の人は…ぼさぼさの髪と、無精髭で、あまり似つかない。それにちょっとくさい。あれ?と首を傾げているうちに、下にいた男の人は真っ白だった顔を真っ青にして、グレーの瞳を見る見るうちに見開くと低く唸るような声でいった。

「ゼロォォォオ…! アイツっ裏切りやがって…っ!!」

喉のガラガラも相俟って野犬が唸るようだった。びっくりしたが、同時に納得する。降谷くんをゼロと呼ぶのは、景光くんだけだ。やっぱりこれ景光くんだ。うわーうわーめずらしい!いつもぴしっとした景光くんが、髭ボーボーでよれよれのスウェット着てる。そう思うと妙にドキドキして…ぎゅっと抱きついてしまった。

「ひ、ヒロくんなんか匂いちがy」
「わーーーー! ヤメテ!マジで!! ホントお願いってか帰って!今日だけはムリ!!!」
「んっ ん〜」
「かわいく強請ってもダメ! 匂いかがない! 離れろって! ゆき!!」

くんくんするわたしに景光くんが全力でイヤイヤする。でも風邪で上手に力が入らないのか、わたしを剥そうとする手は緩慢だ。ぎゅううううとだきついて、汗っぽい景光くんの体を堪能していると頭の上から鋭い舌打ちの音が聞こえた。直後、ぐんっと体が持ち上がる。…わたしを抱き上げて立ち上がると、景光くんがガチャッと扉を閉めた。キーチェーンまでしっかりと。

「ふざけやがってっ ゼロのやつぜってぇ許さねぇっ」
「え、ヒロ ヒロくん? ヤダヤダ」
「帰れっつったのに帰らなかったお前が悪い! いいから大人しくしてろ!」

薄暗い部屋で何がどうなったのかよくわからないが、わたしは布みたいなものでぐるんっと目隠しをされた。そのまま抱き上げられてドカドカと部屋の奥に連れて行かれる。景光くんの部屋はワンルームなので、ここは寝室兼リビングだろう。何時もより…匂いがつよい。そのままぼすんっとベッドに降ろされて、シャっとカーテンのようなものが開く音。それに日光を感じる。

「ひ、ヒロくんっ これ、これとりたい」
「ダメだ! 取ったら怒るぞ、怒られたくなかったら大人しくしてろ」
「え、でも、ヒロくん風邪 うわっ」
「バッ  カ!」

わたわたしていたらベッドから転げ落ちた。フローリングに落ちたみたいだが、布みたいなものにぶつかった。なにかと思って手さぐりするがよくわからない…ん?

「なんかくさい」
「わーーーーーーーー!!!」

あっというまにベッドの上に戻された。頼むから、大人しくしていてくれ。と念押しされるが、いやだ。

「ヒロくん風邪、寝てないとダメだよ」
「いやいやいやいや、寝てたいけどな? 寝れないのお前のせいだぞ?」
「ヒロくんもいっかい顔みたい」
「無理」
「ヒロくん」
「無理!!!ダメ!!!」
「やー」

ぎゅううと腰に抱きつく。汗っぽいスウェットだ、景光くんがうぐっという苦しそうな声を出したので力が強すぎただろうかと腕を緩めたが、逆にぎゅううと抱きしめてベッドに押し倒されてしまった。何時もより体重のかけかたに容赦がなくて重い。もごもごしていると、景光くんが首筋にすりすりしてきた。その度にお髭がじょりじょりして変な感じ。スウェットの足が蛇みたいに絡み付いて、ミモザスカートを乱す。え、えっちな絡み方だ。

「はあっ くそ、 あ˝―… せめて、風呂… 風呂に入ってからなら、」
「お風呂はいるの? わ、わたしお手伝いする?」
「お前は俺をどうしたいの????」

酷い混乱した声で言われた。えーっと、

「お見舞い、したい。ねえ、あのね、これとっていい?」
「…イヤだ」
「ヒロくん」

ぎゅううとおっぱいに顔を埋めて、子どものように駄々をこねる景光くん。今日のブラジャーは飾りがついているから、ほっぺぐりぐりされると痛い。

「むりだって… まじヤる… でも風呂入ってからっ…」
「ヒロくんしたいの? いいよ、このままする?」
「はあ!??」
「あのね、とる、ね…」

もぞもぞ目隠しをとると、薄暗い部屋に景光くんが見えた。ぶしょったい景光くんが、不安そうにこちらを見ている。可愛い。そっと手を伸ばしてお髭を触ると、ちくちくした。そのまま首に手をまわして寄せれば、彼はわたしの好きなようにさせてくれて…ちうとお髭の生えた顎にキスをする。

「お髭、にあうね」
「っいや 二三日剃ってないだけ… てか、俺ゼロみたいに薄くないから、 いや、何言ってんた俺」
「ヒロくんの匂いいっぱいして、あのね、  …わたしも、シたくなっちゃった」

照れ隠しにぎゅうと抱きついて、秘密を打ち明ける様な声で囁く。腰に回されていた景光くんの腕がぴくりと跳ねて、そのあとぐるりと腕が回る。地獄の底か響くようなバカヤロウという声とともに、わたしの服が暴かれた。

back

×
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -