Merlin

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彼の魔法使いが創り上げた人工神殿は、わたしの心象に残る故郷の風景を完璧に再現していた。時間の流れから切り離された、永久の箱庭。わたしのためだけに用意された楽園の花壇。
陽の光の中に照らされながら、水路の中に足先をつける。ふくらはぎの半分ほどまで浸すと、皮膚を介して葉脈のように張り巡らされた魔術回路がすこしずつ水を吸い上げていく。乾きかけていた仮初の肉体が、細胞が、息を吹き返していくのを感じて、ほうと安堵の息が零れる。
「ただいま、ミワ」
そうしてどれほどの時間が経ったのだろう。春色の庭で風に揺らいでいたら、するりと頬を撫でられていた。その指先が、忘却していたいまのわたしの形を思い出させる。何度も彼に愛されて、斯く在れと求められた願いの全て。
「…おかえりなさい、あなた」
掠れた声に、過ぎ去った時間の長さに気づかさせる。ライラック色の瞳が鏡のように映すわわたしは、柔らかな蔦に絡まれていて、まるで、花園で眠っているような有様であった。そんなわたしの身体を、マーリンがそっと抱き上げる。彼がわたしをすくいあげるほどに、ぷちぷちと蔦の千切れる音がした。その音がどうにも懐かしくて笑ってしまうと、「なにかおかしなことでも」と彼が訊ねてくる。
「あなたに摘まれた日を思い出したの」
「百年以上前のことを? 君は妖精なのに、本当に色んなことをよく覚えているね」
「全部じゃない、あなたに関することだけ」
例えば、いま彼が誰に仕えているのか。外の世界が、どうなっているのか。わたしは何も知らない。
時折、人間社会で彼が演じている役割に付き合って、妻という名目で催しに参加することはあってもそれだけ。ああそういえば、彼がその魂に祝福を与え、師として鍛えた獅子の子はどうなったのだろう。
「エレイン様は、きっとあなたをお許しにならない」
「僕にすこしでも許されたい気持ちがあるのなら、ずっと昔に君を返しているだろうね」
「帰してくれたら、こんな面倒なことをしなくても済むのに」
七色に煌めく髪に頬を擽られながら、その肩口に甘える。わたしと抱く紳士の腕とは逆の方、血脂にまみれた左腕、わたしが触れる前にそれはラズベリー色の瞬きに溶けてしまう。
マーリンは返事をしない、ただ微笑みを湛えた男の顔を装ってわたしを見つめている。その瞳の奥に揺らめく冷たさに「そう、」とわたしは何度目になる諦めを口にして、「愚かなひと」
妖精にもなれない、人間にもなれない。
どちらの世界でも存在を許されなかった月の妖精の生きた遺物。
きっとわたしは、彼の死体に添えられる一輪として、その生涯咲き続けることになる。
「ナルティアモンガの魔法の杯_____これが、この時世、最後の願望器。緻密で無駄のない魔力の結晶だ。この先で鋳造されるあらゆる聖杯は、これを理想の原型(すがた)とするだろうね」
左手に掲げられた聖杯が、陽の光を受けて輝く。その美しい金の身姿に、こくりと喉が鳴る。それに気づいたマーリンが「ああ、すぐに準備をしよう」と額を擦り付てくる。
「君のための聖杯なのだから」
魔力で浮遊した聖杯が、まっすぐに花園の中央、白亜の噴水へと捧げられる。マーリンが施した魔法陣が起動し、聖杯がどろりと溶ける。金色が溶けて、マーリンの魔力と混ざり、蜜色の滴へとその姿を変貌させる。
___かつてわたしは、湖の乙女の畔に咲いていた。
ふらりとその地を訪れた魔術師によって、母なる大地との根(つながり)を切り離され、神域から連れ去られた。それからは彼の望むままに人の似姿を取って、まるで恋人のように寄り添い続けている。
しかし、わたしは所詮、湖の畔に咲いた百合の花。
花の妖精としての力は、根を切り離された時に失った。僅かに残った根は腐り、少しずつ枯れていくわたしを生きながらえさせるために、マーリンはひとつの選択をした。
花に陽を、春の光が絶えぬ異界を創った。
花に水を、星の内海から組み上げた魔力を溶かした水で異界を満たした。
花に蜜を、乾いたわたしの唇を、聖杯の滴で濡らす、
マーリンの指先が、少しだけわたしの唇を割る。溶けた黄金の蜜は、甘く、彼の花の香りがした。
「満足するまで食べるといい、足りなくなったらまた“創らせれ”ばいいのだから」
____聖杯は、何時の時代も人間の願いから生まれる。
人間が夢を見る限り、成長しようと望む限り、その営みは続くであろう。
少なくとも星の獣がそれを望む間は、人間は『夢』から逃れられない。
Tips !
マーリンが、湖の貴婦人の畔に咲いていた百合の妖精に一目惚れして引き抜いてしまった世界線。ずっと隠していたが、花乙女が枯れてしまいそうになったので方向転換した。この世界の騎士王はアーサー、マーリンの放任主義と花乙女(は妖精なので基本的に惚れっぽい)の母性に板挟みになって育ったので、苦労適正A+くらいある。
マーリンが、湖の貴婦人の畔に咲いていた百合の妖精に一目惚れして引き抜いてしまった世界線。ずっと隠していたが、花乙女が枯れてしまいそうになったので方向転換した。この世界の騎士王はアーサー、マーリンの放任主義と花乙女(は妖精なので基本的に惚れっぽい)の母性に板挟みになって育ったので、苦労適正A+くらいある。

「あ、いた マーリンさん!」
「はいはい、困りごとならなんでも解決、終わりよければすべてよしハッピーエンド大好きな花の魔術師、マーリンお兄さんはここだとも。どうしたんだい、ミス日宮」
「ローブをお借りしても良いですか」
「…ローブって、わたしのこれかい?」 白いローブ
「ええ、宜しいでしょうか」 にこにこ
「…えーっと、別にかまわないが。君には少し大きすぎるかもしれないなあ、」 のろのろ
「あ、汚してしまうとマズイ…?」 気づき
「これでも一応、円卓の騎士であり騎士王アーサーに仕える宮廷魔術師だぞぉ。もちろん、魔術保護を施してあるとも、ヒュドラの毒でも溶けないから安心してほしい。___あ、先にこっちを着て、腕はここで」 きせきせ
「ふむふむ」 きてきて
「ふむ、やはり裾が余ってしまうね。転んでしまうかもしれないから、こうしておこう」 指パッチン
「おお」 ぴったり
「うん、これでいい。…今年のカルデアハロウィンは仮装大会かな?」
「はい、仮装して誰が一番強いサーヴァントか決めます!」
「はっはは 本当に、カルデアのみんなは何時も面白いことを考えるね。それで、君はわたしを選んでくれたのかい? わたしが、いちばんだと、」
「ええ、もちろん!」 屈託のない笑顔
「…」 じーん(感情を堪能している顔)
「目下の天敵は仮装と言い切ってチート行為に走るロマニ所長(ソロモン)と、最近ロリ形態を手に入れた万能の天才ダヴィンチちゃん女史です」
「彼らはもうレギュレーション違反じゃないのかい」
「カルデア職員はみんなお二人が大好きなので、こんな楽しいことの仲間外れにはできません」
「つけあがる前に絞めておくのも必要だと思うけれど、まあその方が面白いし見応えがありそうだから止めないでおくよ」 お花ぽんぽん
「ん?」
「君に行先に、花の祝福があらんことを、ミス日宮。___ほら、こうして飾ればわたしの耳飾りみたいに見えるだろう?」
「あ、なるほど。__よし、マーリンさんのコスプレをしたからには、絶対に優勝してきます!」
「うんうん、その意気や良し! 頑張りたまえ、わたしも観客席で応援しているとも!」
「打倒・ロマニ所長! いくぞーーー!」 カルデア一般職員(コスプレ)円陣
(元気なのは良いことだなあ) 観客マーリン

「まあ、わたしは早く死にたいのだけど」
「は?」
「真顔怖いやめてマーリン」
「ひみがほひくうっはほとひうはら」 ほっぺびよーん
「だって、そこら中に魔物がいるのよ。しかも人間はいつも戦争している…、わたしみたいな非力でか弱い美少女が生き残るには厳しすぎると思うでしょう?」 かわいい顔
「…」 無視
「うっかりどこぞの王に見初められて浚われて、悲劇の乙女として語られるかも」
「君たち人間は、いつも身に余る夢を見すぎている」 ずばっ
「ひどい!どうしていつもそういう意地悪いうの、ばか!」 髪もしゃもしゃ
「…」 されるがまマーリン
「もさい髪でも顔がいい…むかつく」
「君は本当に僕の顔が好きだね、こんなものただの表面情報でしか過ぎないのに」
「持てる者は贅沢ね、ふふ。 ねえ寒いわ、もっとちゃんと抱きしめて」
「…」 ぎゅう
「はやくわたしを食い殺してね、夢魔さん」
「…、うん」
「できるだけ優しく、痛くしないで。約束したでしょう。そうしてくれるなら、無残に食べ散らかしてもかまわないから」
「…、うん、」
「…ああ、はやく、死にたい。父と母の所に、行きたいわ」
「……う、ん」
楽園なんてものは、存在しない。
君は死んでも、両親には会えない。
だから僕のために生きて欲しいなんて、____安寧を夢見て、僕に微笑んでくれる君に、言えなかった。