くろこのばすけ | ナノ

恋人緑間真太郎とイチャイチャする


そっと眼鏡を取ると、緑間くんの目つきがもっと悪くなった。自分で奪っておきながらびくりと体を震わせると緑間くんの眉間に皺が寄る。あーごめんねー!

「返せ、緒戸」
「も、もうちょっとだけ…」
「…」

おどおどしながら口にしてみた小さな抵抗。私の手から眼鏡を奪還すべく僅かに動いていた手が止まる、そして数拍。緑間くんは呆れた様に溜息を着いて壁に背を預けた。
その時にぎしりとベッドが沈んで、緑間くんの足に挟まれる様にして座っていた私の体も上下した。おおっ

「…」

手持ち沙汰に眼鏡を見る。家に居る時も外にいる時も、バスケをしている時も緑間くんと一緒の黒縁の眼鏡は…ある意味、彼のお得意のラッキーアイテムよりずっと彼を彼足らしめている様に感じるけど…これは恐らく少数意見だ。

きっとタカさん(←緑間くんの同級生。未だに本名は不明なのだが『俺のことはタカさんって呼んでー!』と何故かハイテンションで迫られたのでそう呼んでいる)辺りは反対するだろうな。

「…」

改めて見上げると、緑間くんの不機嫌そうな目がこちらを見下げていた。うーん目線が悪いし、眉間に皺が寄っている。こういう顔すると益々高校生に見えないよ、緑間くん。

「んっ」
「、」
「眉間に皺寄ってますよ、お客さん」

ぴたりと眉間に二指乗せてぐりぐり〜ってする。でも緑間くんは怒らない、酷く邪魔そうにしているだけ…本当に緑間くんは私に甘いなあ。調子乗ってぐりぐりと後ろの壁に圧したら壁に頭がぶつかったのか「止めるのだよ」と流石に怒られた。

大きな手に手首を取られる。がっしりと私の腕を掴む手は大きくて、私の腕を掴むには聊か大きすぎる。あまり触られることが好きじゃないので反射的に振り払うべく腕を振ると、その反動を利用されて私の体は容易く一転。ぽすりと緑間くんの腕の中に引き込まれてしまった。

「んっ、緑間くん…」

肩の後ろから回って来た大きな腕がぎゅうと私の体を抱きしめる。温かい温度が背にぴったりと張り付いて、首筋に緑の髪が埋まった。首筋に吐き出された熱がくすぐったくて身を攀じる。

緑間くんの体はやっぱり大きすぎだと思う。私を抱きしめるには、やっぱり大きすぎる。女子の平均以下の体躯の私に、男子…日本男児の平均超えも甚だしい緑間くん、デートで並んでいてもずっごいデコボコで見目が悪いの私が気にしていることを緑間くんは知っているのだろうか。一生懸命ヒールで稼いでいるのだよ。

「みどりまくん、眼鏡割れちゃう。腕ゆるめて」
「割れる前に返すのだよ」
「うーん…」

それはなんか嫌だ。
緑間くんに拘束された腕の中で、なんとか腕を動かして胸元に握りしめていた眼鏡の位置を変える。うん、これで割れないだろう。そうしてから誤魔化す様に首元にある緑間くんの頭に擦り寄れば、シトラスの香りがした。うーん流石パーフェクト緑間、香りまで気を使うとは…

「…甘い、」
「?」
「お前は良い匂いがする」
「え、そう? 緑間くんの方が良い匂いだよ。ていうか、私臭いでしょ?放して、」
「断るのだよ」

香水も何も付けていない女子力ゼロの時分が急に恥ずかしくなって逃げ出すべく暴れるも更に拘束されるだけだった。駄目だ、現役バスケ男に引きこもりまっさりの私じゃ勝負にならない。

くそうと悔しさを零して、立てていた膝を緑間くんと同じ様に投げ出す。私のロングスカートに包まれた足は緑間くんの黒いスラックスの足の間にすっぽり収まる。私なんか短足になった気分だよ…

「…臭くない」
「ん」
「臭くないのだよ。お前からは花の香りがする」
「それシャンプーとボディーソープの香りだよ」

「俺はこれが好きだ」

吃驚_____して、目をまんまるにして緑間くんを見る。私の首筋から顔を上げた彼は、そんな私を見て不機嫌そうに眉間を寄せた。

「…なんのだよ」
「え、えっと…緑間くんからはシトラスの匂いがする」
「ふん、それこそシャンプーの付香だ」
「うん。でも…私もこれが好きだよ」

思ったよりもすらりと出た言葉。じっと見上げて言った先、緑間くんは少しだけ目を見張ったあと「そうか」とだけ言って眼鏡のブリッジを押し上げる…そこに、眼鏡はないけれど。

癖なのだろう。その仕草が可笑しくて思わず吹き出してしまう。変な声を出して俯き肩を震わせる私に緑間くんが不機嫌そうに「笑うな」と言う。でも堪えきれなくてぱふりと彼の胸に埋まったらやっぱりシトラスの香りがした。

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