花宮真よりお泊りのお誘いのようです
「おい、明日俺ン家泊りに来い」
「…はい?」
訳が解らず小首を傾げる。そんなわたしを無視して、花宮くんはぱちぱちと生徒会の資料をホッチキスで体良く纏めて行く。
「明日って…土曜?」
「そうだよ。じゃなきゃ言うわけねーだろ」
「部活はないの?」
「緒戸…お前はアレか。俺が一からナニまで懇切丁寧に説明してやんねーと何も理解できねぇのか?その頭はなんだ、飾りか?少しは自分で考えるってことを覚えろこの馬鹿」
「いたいいたい」
ぐりぐりとホッチキスで額をいじめられる。いたいよばか!
舌打ちしながらも止めてくれたので額をさすると指の裏に跡の感覚。あ、これは酷い。
「女の子を傷物にした…」
「そうかい」
「酷いんだー。もうお嫁にいけない…」
「そりゃ世の中のためになったな。流石おれ」
「酷い…。傷物にしたらね、した人がお嫁に貰わないといけないんだよ。そういうルールなんだからね」
むくりと膨れて言えば、ぴたりと花宮くんの手が止まった。え、なに。思わずそちらを見れば、花宮くんもこちらに視線をくれた。じっと、目が合う。え、なにこの空気。
「…いいのかよ」
「は?」
「もらっちまっていいのかよ」
「え、は?」
訳が解らずシナプスの代わりにクエスチョンマークを伝達していると、かたりと花宮くんが立ち上がった。パイプイスがぎしりと鳴いた。そうして机にゆったりと手を置いて、わたしの方へと体を擡げてくる。えちょ、こわ。
そうやって至近距離に来た目に、こくりと息を飲む。
「良いんだな」
「…ちょ、はなみや、」
「なら___」
くいとネクタイを引かれた。苦しくは無かったけど、花宮くんの顔と肉薄してしまった。今にもくっつきそうな唇が、続ける。
「___明日、一生消えない傷をくれてやる」
「…」
「返事は」
たっぷり三秒おいて。わたしは意味を理解した。
え、花宮ってそういう欲あったんだ。そっちに驚いたよ。いやもう驚きすぎて、正直なんて答えたら良いのか解らないよ、えっと、えっと…えっと、
恋合わせの神経衰弱「マロ眉」
次の瞬間。強烈な頭突きを食らった。怒鳴る花宮くんの声を聞きながら、やっぱりわたしにシリアスは似合わないと痛感した。
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