くろこのばすけ | ナノ

黒子テツヤを脅す


「赤司は負けるよ。絶対に負ける、」

「え…」
「ここ2年…いや、4年くらいかな。その間にね、絶対にバスケで負ける。それも最低最悪の負け方をするの。解るんだ、私には…なんとなくだけど、これは絶対に変らない」
「色紙さん…」
「ねえ黒子くん。赤司みたいなやつが負けたらどうなると思う?『絶対に負けない』『負ける事なんてありえない』そう思っているし、何より他者からそう認識されている人間が最低の侮蔑と侮辱の下にコートに膝を着くんだ。____そこで赤司はね、…セージュ(征十郎)は誰も体験したことのない絶望に落ちる」
「っ…!」
「敗北と言う名の牢獄に汚泥、今までセージュ自身が幾多の他者を蹴落としてきた沼田場に…今度はセージュ自身が落ちるのよ。あの完璧な、綺麗なセージュが獣の泥浴場なんかに落とされるの」
「色紙さん、何を言って__」
「そんな日が、絶対に来る」

「ねえ、黒子くん。それでどんな気分が…どんな思いか、想像つく?」

「_____ッ」

「私は…、そうなった彼を救えない。きっとセージュのことだから、そうなってから誰かに助けて貰うなんてこと矜持が許さないだろうし…。そうなれば、私はキセキの世代(みんな)が背を向ける中で…独り、沈んで消えるセージュを見ているしかないの」
「どうしてですかっ…! 色紙さんなら、」
「駄目よ黒子くん。それは駄目、…絶対に許されない。…私にはね、入って良い境界線というものがあるの。例えば、キミが座っているそこと、私が立っている此処、そこと此処の間___それが私とあなたの『境界線(生きている世界の違い)』…もっと言えば、『認識している世界の違い』かな。兎に角、私はそっちの住人ではないから…そっちにいけない。だからセージュが……たとえ、私の名前を呼んでも、助けにはいけないの」
「…貴女の言っていること、訳がわかりませんよっ」
「だろうね。だから話してる、解ってもらいたい…いや、気づいてもらいたくて」
「…?」

「ねえ黒子くん。私はね、貴方ならと思っているんだ」

「なにが、ですか…?」

「セージュを地獄へ突き落すのは、貴方であってほしい」

「______」


「私はそう思ってる。だから私はあの時黒子くんに話しかけた。仲良くなった。縁を結んだ。貴方という存在を、一つの個として『黒子テツヤ』と認識して境界を引いた。ねえ黒子くん、人と人が巡り合うことに意味がないと思っているのならそれは間違いだよ。出会いには必ず意味がある。私とセージュ、貴方(黒子テツヤ)と彼ら(キセキの世代)…黒子くんと私。全てあらゆる因果の元にあるの。そして、未来はその因果の元に生まれる。なら、私はこの先にある因果を、その結末を、未来を否定するために何をすれば良い。何ができる?彼の為に、私がセージュのためにできる唯一のこと…!それが!」

「ッ!?」
「貴方(黒子テツヤ)との因果の確立だった」

「……」
「……」
「___ッ」
「…私が怖い?黒子くん。 私は私が怖いよ、生まれた時からずっと…」

「だから、私は私を愛してくれる人を惜しむ。セージュは、…赤司征十郎はね、何時も私のことを大事にしてくれた。『手の掛かる幼馴染』だと罵りながらも何時も手を引いて、傍に居る事を許容してくれたの。私異常に…私の事を大切にして、私の心を掬ってくれていた…」
「あ、色紙さ…」
「…詰まる所、私は『私を大切にしてくれる人(赤井征十郎)』以外どうでも良いんだ。その為に、その他多勢が犠牲になろうとも…一向に構わない。…私はそういう人間なんだよ、黒子くん」
「っ、それはちがう」
「だから、私は貴方に呪いを残す」
「____!!?」

「貴方はこれから先、4年の間に。___赤司征十郎を負かすわ、彼の聖域であるバスケットボールのコートの上で、必ず。貴方は死神となって、その手で『私の大切な人(彼)』の首を狩り落としその魂を地獄へと抛るの」

「___な、にをっ…!」
「言ったでしょう、呪いよ。あるいは『予言』とも言うのかな、私が語るのは『未来』だけど」
「色紙さんっ悪ふざけはいい加減にっ」
「ふざけてなんてない。私はセージュのことでふざけたことなんて一度も無い」
「!」
「セージュが、そうしてくれるから」
「…赤司、くんが」
「うん。だから黒子くん、どうか私の呪いを忘れないでね。この呪いを果たしてね。赤司征十郎を負かして、地獄に落とすのは…貴方の役目」
「っ」
「そして______救ってあげるのも、貴方の役目。どうか、忘れないで、」
「____あ、」


「赤司征十郎(私の大切な人)を助けてね」


私の祈り、果たしてね。


「君(主人公)じゃなきゃ駄目なんだよ___黒子くん」

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