くろこのばすけ | ナノ

赤司征十郎と幼馴染の子がどったんばったん


「すーっ」

「……」
「まあ! とっても可愛いわねぇ。ねっ征ちゃん!」
「……」
「征ちゃん?」
「これなに、ままー」
「まあ女の子を指さしてコレなんていけません! うふふふっこの子は緒戸ちゃんよ」
「あー?」
「緒戸ちゃん、征ちゃんと同い年なんですって」
「ふーん」
「ママの弟の子どもよ。色紙緒戸ちゃん。 うふふふホントにあの馬鹿(弟)に似てなくて可愛いわあ。きっとお嫁さんに似たのね」
「およめさん?」
「きっと待ちくたびれて寝ちゃったのね。悪い事しちゃったけど良いものが見れたわね、征ちゃん」
「…」
「あら、征ちゃんったらそんな緒戸ちゃんのこと見て…もしかして惚れちゃった?」
「ほれ…?」
「うふふふふ〜征ちゃんには少し早すぎるみたいね」
「?」
「あ!そうだ! 征ちゃん良いこと教えてあげる!」
「なに」
「うふふっ。大好きな眠り姫を起こしたいなら優しくキスしてあげなさい」
「きす?」
「チューのこと。女の子はみんな可愛いお姫様なんだから」
「おひめさまなの?」
「ええ、緒戸ちゃんも可愛いお姫様」
「うーん〜…」
「うふふ。チューしてあげたくなっちゃった?」
「どっちかっていうと」
「と?」
「(寝顔が)むかつくからなぐりたいの」
「止めて征ちゃん!!!!!」





どうしようもない微睡の中ピピピピッという目覚ましの音が聞こえて来た。まだ眠っていたくて私はぐずりとベッドにもぐりこむ。それでも鳴り止まない大音量に脳のどこかがピリピリしてきて目覚ましを止めようと腕を伸ばした。

寝ぼけながらの作業は滞り、なんども目覚ましではないものに手が掠め…あ、なんか落ちた。まあ良いや。そうやって探していた目覚ましだったが、突如ぴたりと音が止んだ。恐らく、目覚ましが自動停止したのだ。これは好都合。

もう一度心地よい眠りにひたるべく、ベッドに潜り込もうとした緒戸だが体を動かした際に布団がめくれ上がった。その所為で窓から差し込んでくる日光が顔面に直撃し思わず眉を顰める。

(うっ眩しい…昨日カーテン閉め忘れたっけ…?)

緒戸がぐっと眉を寄せると不意にベッドが沈んだ。流石に可笑しいことに気づき、状況を確認すべく霞む目を擦ろうと腕を上げるがそれを何かにやんわりと阻止された。え?

「起きろ、緒戸」
「ふぇ____」

驚きのあまり口を開くのと息が塞がれるのは同時だった。
渇いた唇に覆いかぶさってくる薄い唇。飲み込まれる呼吸に弾かれたように頭が覚醒した。ふわりと視界に落ちてくる赤い髪に状況を悟り、思い切り抵抗する。だが、緒戸の手は何時の間にか確りと布団に縫い付けられ、体は布団ごと彼の足に押し付けられて意味がない。用意周到過だなオイ!

「はっ!」

漸く解放された時にはもうすっかり目が覚めていた。息苦しさからはあはあと胸を上下させる緒戸に、馬乗りになっていた男は上体を上げ平然とした顔で言う。

「おはよう緒戸、寝坊だぞ」

そう言ってぺろりと唇を舐める幼馴染の姿に緒戸の頭のどこかがプチンッと切れた。
「たまには…」
「?」
「普通に起せられんのか貴様はぁあああああぁぁぁぁ!!!!!」

これが、色紙緒戸の朝の日常である。

ダダダダダッと流れ落ちる様に階段を下りた緒戸はその勢いのままバンッとリビングのドアを開けた。ぜえはあと険しい顔で息切れしている緒戸に緒戸の母はあらと顔をあげる。

「おはよう緒戸ちゃん」
「おはようお母さん! ところでなんで征十郎をうちに上げたのか教えてくれるかな!!」
「朝から出来の悪い娘の面倒を見てくれる優しい子を追い返す訳ないでしょう」
「昨日ぜったい朝来ても上げないでって言ったじゃん!!!!」

そう言ってバンッと机を叩く娘の姿に母は「静かになさい」と眉を顰める。

「まったく女の子なのにはしたない…どうしてこんな乱暴になってしまったのかしら」
「ハハッきっと姉さんに似たんじゃないか?」

突如入って来た馴染のある声に緒戸はぱっと振り返った。そこにいた人物を見るなり、先ほどとは打って変わりぱあと花が咲くように笑みを零す。

「パパッ!」
「やあ、おはよう緒戸」

そう言ってにっこりと笑う久方ぶりの父親の姿に緒戸は感動して抱きつこうと駆け寄る。父も愛娘の歓迎に一瞬腕を広げて見せるが…緒戸が辿り着く手前、さっと何故か横に避けた。「!?」かくして、緒戸は後ろにいた件の幼馴染…赤司征十郎に抱きつく羽目になってしまった。図られた!

「ギャー!!」
「抱きついて来たくせに悲鳴をあげるな」

最もである。

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