くろこのばすけ | ナノ

高尾和成に秘密をひとつ教えてあげる


「む」
「どうしたの緑間くん?」
「色紙…ブブゼラはあったのか?」
「うん。赤いのと青いのがあったから青にした。残念ながら緑はありませんでした…しょぼん」
「くだらない事を言うでないのだよ。…目的のものがあったなら良かった」
「うん、緑間くんはあった? あ、空っぽだね」
「ああ」
「こういうのは使い慣れているブランドの方が良いもんね。私、在庫ないか定員さんに訊いて来るよ」
「いや、良い。俺が行くのだよ、必要な人事は自分で尽くすべきだ」
「おー緑間理論」
「五月蠅い。色紙、大人しく高尾とここで待っていろ。お前は自由にさせると直ぐにいなくなるからな」
「はーい」

そう言ってレジの方へ行く緑間くんに手を振っていると後ろで小さな息遣いが聞こえて来た。何かと振り返れば、少年Aが腹を抱えて笑っていた。

「…どうしたの?」
「い、っいやっ…マジおもろしれー!」

少年のツボはちょっと解らない。

「何時もあんな感じだよ?」

ちょっとむっとした感じで言うと、何故か少年Aは驚きの声を上げる。

「え!じゃあ真ちゃんのこと苗字呼びなの?」
「うん」
「彼女なんだし、名前で呼んじゃえばいいじゃん!」

何故今さっき会った君にそんなことを言われなければならないのだよ。(緑間くん風)
まあでも私的に不愉快ではないので軽くそれに答えた。

「うーん、なんかね」
「うん」
「ずっと緑間くん、って苗字でよんでたから…名前で呼ぶのは恥ずかしいし…なんかあざとくて嫌だなって」
「えー!全然あざとくないって!なにそれ!緒戸ちゃん理論?」
「あ、ぱくったな」
「つい」

てへっと言う少年をむうと見据えるも、気にせずに少年は続ける。

「冗談抜いてさ、ホントにあざとくないって」
「…ホントに?」
「ホントほんと! 名前で呼んであげなよ、真ちゃん絶対喜ぶって!」
「うーん…でも、なんか名前で呼ぶと上手く言えないから…」

「なら尚更慣れて置いた方が良いって! 『緑間くん』に慣れちゃってたら結婚した時タイヘンじゃね?」

からりと笑いながら言われた言葉に、今度は私が目を丸くする番だった。
びっくりして固まってしまった私に、からからと笑っていた少年はん?と小首を傾げる。その様子が、仕様も無く…耐え難くて、私は気づけば笑っていた。

「ぷ、く…あ、あははっ」
「? 緒戸ちゃん?」
「はははっ」

意味が解らないと言う顔をしている少年を置いて私はからからと笑い続けた。思い出すのは緑間くんの渋い顔、低い声、___少年と同じ言葉を言う彼の記憶。

「き、きみはっ…本当に、最高な緑間くんの相棒だよっ」

どうやら緑間くんは素敵に無敵な運命の人と出会えたらしい。
嬉しくてくすくすと笑う私に、少年は飄々とした顔をうっすらと桃色に染めるとどこか居心地が悪そうに頬を掻く。それがまた仕様も無く彼らしい仕草で、私はもう暫く笑顔が顔から・がれてくれそうにない。

「…うわっはずかしぃー…」
「ふふっお互い様です」
「もーその台詞真ちゃんに言って聞かせてよ!いっそのこと!」
「…言っちゃっていいの?」
「やっぱダメ! 絶対実力で言わせっから!」
「はいはーい」




「…てか、なんで俺のこと『君』?名前わかるっしょ?呼び捨てでいーぜ」
「あ、えっと…緑間くんが呼んでたけど忘れちゃって…ごめんね」
「良いって、名乗ってない俺が悪いし。えっとじゃあ…俺の事は『タカちゃん』ってよんで!」
「え?」
「『タカちゃん!』かわいいっしょ?」
「うーん…微妙」
「酷い!じゃあ『カズちゃん』は?」
「…タカちゃんで」
「ん、あと敬語も良いぜ。同い年だし、気楽にいこーぜ」
「うん、ありがとタカちゃん」
「お、良いね!その呼び方。じゃあ俺は……『オトっち』って呼ぶわ!」
「あ、かわいーね、その呼び方!さいよう!」
「やったー!」


「何してるのだよ」




「あのね、タカちゃん。さっきのことなんだけど」
「さっきの?」
「呼び方の事、名前でって話」
「あ、あれ」
「うん、…あのね、私あんまり緑間くんに勝てることないんだ。正直言ってそれが凄く悔しいの、だからこれだけは譲らないって決めたんだ」
「?」







「名前はね、緑間くんが呼んでくれるまで私も絶対呼んであげないの。___きっと、これなら私が勝てる気がするんだ」



「…」
「ふふ、緑間くんにはナイショね?」
「オトっちって…意外と良い性格してるね。俺的にすっごい有りだぜ」
「ありがとタカちゃん」
「?」

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