Reborn! | ナノ


\ イ! /


「あー」

小さな呻き声が響いた。
それに汐は読んでいた雑誌を畳み、骸は紅茶の缶を思い切り落とした。がしゃんと物が落ちる音がする。すうと汐の視線が移動した。行きついた先で、おそるおそるこちらを見るオッド・アイに内心爆笑の声が止まらない。

「…むくろ」
「…なんですか」
「ぐずってる」
「…そうですね」

「だっこ、してきて?」

こてんと、小首を傾げて笑う汐に、骸は苦虫を大量に噛み砕いたような顔をする。たっぷり一分おいて、のっそりと動き出した藍色の尻尾に汐は満足そうに笑う。よしよし。あとは、彼がだっこしてくれれば…。

「____って、ちがう」

ひょいと軽々と抱き上げられた我が身に、おもわず手がでる。
ぱしんっと骸の額を叩けば、「いたい」と非難の声が上がる。だが知らない。

「そんなボケいいから。とっとと降ろして、だっこしてきて」
「……だっこしてます」
「わ・た・しをね! わたしじゃなくて、だっこしてくるのはあの子のほう!」

「あ〜…!」

揺り籠で唸り声を上げている赤子をびしりと指さすも、骸は憮然とした顔を緩めない。それどころか、あろうことか汐を横抱きにしたままスタスタと歩き出した。

「ちょっと!」
「汐を抱いていったほうが早いです」
「ソレじゃあ意味ないでしょ!バカ!!」

思わずバタバタと暴れるも、骸はその腕を緩めることはなかった。彼の痩躯に秘められた恐ろしいほどの力と体力は知っているところだが、こういう場面では憎らしくて堪らない。結局、ぐずる我が子は汐の手により抱き上げられた。我が子と汐、二人を横抱きにしながらも、骸はぐうの音のひとつあげなかった。そして、その険しい顔が解かれる事も無かった。


…紆余曲折を経て。汐は、一般人とは程遠い骸と結婚した。無事に出産もした。だが、それまでももちろん、それからも問題は山積みだ。近い所でいうと、骸の子ども嫌いだ。

嫌いというより、苦手。苦手というより、接しかたがわからないのだろう。聞くところ、親に棄てられなまじ酷い幼少期を過ごした彼に、『子どもと接する大人』の見本はない。どう振舞って良いのかわからないし、なにを学ぶべきかも解らない。そんな骸の苦悩はありありと見て取れた。汐には執拗なくらい過保護なのに、赤子には無反応。それどころか、意図的に無視して避けている気さえ見える。どんだけだよ。

「でも、このままじゃダメだよね…」

どうにかしなければ。



「どうしようね、赤さん」
「あうー」

我が子を愛子ながら考える。
名前未定の可愛い赤ちゃんは、母の懸念も知らずに確り父親に似てくれた。よしよし、美人さん。黒味の強い青の髪は、ぷにぷにの頭に申し訳なし程度に生えている。ぱちくりとした目は、父親譲りの鮮やかなブルー・アイ。というか、母親の要素からっきしだよね!可愛く生まれてくれてなによりだけどさ!

ちょっとオッド・アイを期待してたんだけどねー。主産直後、骸とベビー・ルームを訪れて呟いた。すると、骸がとても居心地悪そうに『…僕の右目は、義眼なんです』と今更とんでも発言してくれて軽いパニックがおきたのは今や良い思い出だ。混乱のあまり叫んで貧血起して倒れてしまったのだが、目が醒めた時となりにいた骸の方が今にも死にそうな顔をしていたのですっかり怒る気も失せてしまった。(真っ青な顔で泣きたくても泣けない大きな子供を、ぎゅーっとして夜まで慰めてあげたのだ)

「赤さんも、パパとは仲良くしたいもんねー」
「うぁー」
「えへへ。赤さんはママが大好きですねー!」

ぺちぺちと頬を叩いて来る可愛い子にデレデレしてしまう。っは、違う。今日は赤さんとラブラブするんじゃなくて、骸の苦手意識をどうにかするんだった。

「ふむ。…良い案が思いつかないな」
「うー」
「とりま、思いつく限りやってみるか」
「あー」
「ママ頑張るからね、赤さん!」
「だー」

そうして、汐ママが始まった。

→→→!



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