雛唄、 | ナノ

12


 欲しい、と思った。

 その無垢な瞳が。
 濁りのない澄んだ瞳が。

 彼女の外見には何ら興味はない。容貌だけで見てしまえば彼女は普通だ。私が興味があるのは彼女の中身であり、その思考を支配する未知の世界。

 初めて逢ったあの時は彼女をついつい虐めすぎてしまい彼女の本質を見ることは罷り得なかったが、今日は徐々に彼女の本質を曝け出してもらうとしよう。どうなるかは分からないが。

 欲しい、ただその一心で。
 以前とは打って変わったこの欲望のまま。

 持参したお茶菓子と彼女の部屋に置いてあった麦茶を頂戴して一服することしばらく。私の行動に狼狽しつつも我々を追い出そうともせずに共にお茶を嗜む女人。いや、正確には追い出せずに渋々我々に付き合っているというのが正しいのか。

 月が雲間に隠れては姿を見せてを繰り返すものだから、室内は時折暗闇に覆われる。蝋燭の灯一つでは心許ないようで、私と尊奈門は暗闇に慣れているからそこまで気にならないものの、雛ちゃんが夜目なんぞを使えるわけもなく、月が顔を出す度にあきらかにほっとした表情を浮かべていた。

(さて、と……)

 お茶もして程良く休憩したことだし、そろそろ本題に移るとしよう。

「私たちがここに来た理由を教えてほしいかい?」
「………………」
「別に今、君が教えてほしいって言ったとしても私たちは何もしないよ?」
「…………いいです、べつに」
「……尊奈門、お前が私についてくるから雛ちゃんが変な警戒心もっちゃったじゃない」
「ここに私をつれてきたのは組頭じゃないですか!」
「そうだっけ」

 尊奈門が隣で何やらここに来た経緯を勝手に話し始めてくれるのだから、これでは面白くない。教えてほしい、と彼女の口から言わせることで見返りを要求できたというのに。しかしながら、今更止めるのも面倒だった。尊奈門の言葉に適当に相槌を打ちながら視線は彼女へ向けておくことにしよう。雛ちゃんは分かりやすい、その表情が微々たる変化をもたらすことで彼女が何を思ったかなんてことは手に取るように分かってしまう。

「風呂に入ろうとした私に彼女に会いに行くとかただそれだけ言って連れ出して! どこに行かれるのかと思ったらこんなところで……! 私はもう御免です。まだここの先生方には私たちが侵入したことは悟られていないみたいだからいいものを……!」

 尊奈門に視線を向けることはしない。それにしても、尊奈門はやはりまだまだということか。帰ったら鍛え直さねばならないようだ。

(悟られていない、ねぇ)

 私だけが侵入していたのならここの先生方に悟られることはなかっただろうが、今回は伴にまだ十九歳の尊奈門を連れてきたのだ。忍術学園の教師ともあろう人材がコイツの気配に気付かないはずがない。この部屋に突入してこないことから今は様子見といったところだろうが、私たちが何かしら行動を起こせばこの部屋に仕掛けられた罠をすぐさま作動させることだろう。この部屋に仕掛けられた罠。ソレにこの部屋の主である彼女が気付いている様子はない。

(知らぬが仏か)

「私に、会いに……?」

 彼女が小さく零した声音は戸惑いを隠せていやしない。それはそうだろう。しかし、私は以前彼女と別れる間際に確かにまたね、と告げたはずだ。彼女にとって私に対する第一印象は首を締め上げてきた怖い人だろうから、そんな些細なことは記憶から抜け落ちていても何ら不思議ではないが。

「ねえ、雛ちゃん」
「…………なんですか」

 強張りながらも言葉を返してくれた雛ちゃんに微かに口角が上がる。その瞳がどこまで持つのか私は試してみたいのだ。私が今から何をしようとしているのかをおおよそ悟ったと思われる尊奈門が怪訝な視線を向けてくるがそれは全て無視するに限る。

 私は、彼女の身がただ欲しいわけじゃない。彼女のその我々には持ち得ない光が欲しいだけだ。そのためには、まずは彼女の持つモノがどの程度のものなのか今一度試してみなければ。

(容易く濁ってもらっては困る)

「君は人を殺したことがあるかい?」
「ッ……」
「そう、ないの。じゃあ、死なせるまではいかずとも人を傷つけたことは? 殴ったり、蹴ったり、刃物で相手の身体を突き刺したり」
「…………っ」
「喧嘩くらいはあるかな。じゃあ、大量の血痕を見たことは? 呻き声を聴いたことは?」
「ッ…………!」
「誰かの断末魔を聞いたり、血潮に染まる屍を見たことは?」

 彼女が我々と異なることは知っている。私たちとは違うセカイで生きていたからこそ私は西園寺雛という人物に会いにきたのだから。彼女が人を殺したことがなければ、生死の境目を苦しげに漂う人に遭遇したことがないことくらい分かる。分かるが、私は滔々と彼女の耳にも、心にも痛い言葉の数々を述べていく。

 やがて、彼女の表情は変化を止めた。
 言葉をこれ以上、自らに刻まないようにするための自己防衛が働いたのだろう。それがより一層、こちらの加虐心を煽るということを目の前の女人は知らないと見える。

「死にたいと思ったことは?」
「消えたいと思ったことは?」
「……殺したいと思ったことは?」

 人間なら誰しも一度は思うのではなかろうか。そんな意味も込めて声をわざと低くすればその肩がびくりと跳ねた。ああ、やはり面白い。クツリと笑いを堪え切れずに漏らせば隣から突き刺さるような視線を感じた。でも尊奈門は何も言わない。それは曲りなりにも私の部下である証拠だ。

「人が死ぬ時はそれはそれは嫌な音がするものさ。銃で仕留めればそこまで気にはならないけどね。刀や苦無、手裏剣で相手の身体を切り刻むからにはこう……」

 ぐちゃり、そんな音を口から紡ぎだす。今の私はきっと悪党の顔をしているに違いない。自分で想像しておかしくなってクツクツと笑ってしまった。隣から溜め息が聞こえる。失礼だぞ、尊奈門。

「……ッ……ん、は……」
「うん?」
「ッ雑渡さんは何がっ……!」
「欲しくなっただけ」
「ッどういう……」
「そのままさ。私は君のその瞳が欲しい。前に君を冗談で誘拐するとか言ったけど、あれから色々あってねー……冗談で済ませたくなくなったんだ」
「……意味、わかんないです」
「だろうね」

 彼女に逢ったあの日から、城にいる女共の瞳を観察していた。濁ったモノ、薄暗い影を纏ったモノ、色を失ったモノ。まだ無邪気な子供たちのソレはそこまでではなかったが、脳裏にちらつくのはただひとつの面影。それは恋慕の情ではない。しかし、それに酷似しているような気もした。

 ああ、私は彼女の屈折していないあの瞳が欲しいのだと。

「……ねえ、私にも笑ってよ」
「え」
「うん、だからね。君がここの生徒たちに見せる笑顔を私にも向けてくれないかと思って」

 雛ちゃんはなかなかに聡い子だ。私の言葉の裏を簡単に読み解いてくれる。

「見てた、んですか……」
「ずっとじゃないよ? 私はそこまで暇人じゃないし。ちょっと時間が空いたときに少し様子を見に来てただけ。……ね、これで君の部屋を私が知っていたことにも納得がいくでしょ」

 軽やかに告げれば彼女は唇を噛み締めるものだから、私に見られていたことを察せずに悔しいとでも思っているのだろう。たかが女人に気配を悟られる私ではないのだから、雛ちゃんが気付かなくて当然なのだけれど。それを彼女に告げたら輝きが俯いてしまった。

「私、別に君が好きなわけじゃないんだけどね。ソレは欲しいんだよねー……ね、尊奈門」
「いきなり私に話を振らないでいただけますか」
「だってさ、なんか私が話す度にどんどん雛ちゃん沈んでくんだもん。ここは尊奈門、お前の出番だよ」
「いや、それは組頭が彼女に変なことばかり言うからじゃないですか! 大体、彼女を私たちのところに連れてきたとしてもあっという間にその……組頭が求めているものは曇ってしまうと思うんですが……」
「なんで?」
「なんでって……私たちは戦忍なんですよ? 血まみれで帰ってきたりすることだってあるわけで、その……女性には、酷っていうかなんていうか……。とにかく! か、彼女はここにいた方がその、なんですか……か、輝きのようなモノは曇らないと思います」

 尊奈門の言うことは元から分かっている。彼女の眼が欲しいのは事実だけれど、ソレがもつモノが曇ってしまっては元も子もないことなど分かっている。では、なぜここに来て、彼女に会いに来てまで雛ちゃんを試すような真似までしたというのか。

(別にこれといった理由はないんだけどねえ……)

 ただ、間近で視たかった。それに加えて、ちょっとばかり虐めたくなったのだ。ソレが自身のモノにならないと始めから知っていたからこそ少しばかり歪めたくなった、ただそれだけ。自分のものにならないのならば、自分のせいで歪ませてみるのも一興だと囁く黒が自身の心に巣食っているのだから仕方ないだろう。

「……ここに残していけば君はそのままでいてくれるの」

 私の言葉に雛ちゃんは恐る恐る顔を上げて、ゆっくりと私の言葉を咀嚼した後で、曖昧な笑みを浮かべた。

(あ、なんか面白くない)

「あーあ……残念。でもさあ、雛ちゃん。君がまだ、この学園に疑われてるって知ったらどうかな」
「え……」
「……知ってたかい? 君のいるこの部屋の仕組みを」

 ゆらりと立ち上がってある場所に手を置いた。その仕種で尊奈門も私が何をしようとしているのかを察し、こちらへと瞬時に移動してくる。それを見て、ガコンと壁を押した。地下から嫌な音が聞こえてくるからには結構な規模のからくりらしい。さっさとここを離れねば我々も捕えられてしまうだろう。

「君が何か不可解な行動をした途端、幾重もの罠が作動することになっているらしいね、この部屋は。……この学園が本当に君を受け入れたのなら、こんな罠の仕掛けられた離れじゃなくて違う部屋に移動させるのが当然なはずなのにねえ。さあて、雛ちゃん。君はこんな怖い罠を仕掛けた彼らを許せるのかい? ……ふふ、どこにも行く場所がなくなったら私のところへおいで。歓迎するよ」

 ニヤァと口角を上げて飛躍する。彼女のあの呆然とした顔を見れただけでよしとしよう。同じく飛躍した尊奈門が何か言っているがそんなのに構っている暇はない。どうやら、このからくりは庭先まで通じているらしい。少し気を抜けば面倒なことになりそうだ。

 学園を取り囲む塀に登れば、ようやく駆けてきた忍術学園の先生方の姿が見え、雛ちゃんの叫び声が聞こえた。死なない程度だろうから大丈夫だろう。尊奈門の先を急かす声に頷きを返して、夜の闇へと紛れていく。

 また会いにくるよ、そんな呟きは木々の合間に溶けて消えた。


 ***


 雛ちゃんの叫び声が聞こえたと同時に駆け出した。

(ああもうッだから様子なんか見ないでさっさと追い出せばよかったのに……!)

 そう思っても時既に遅し。

 自身が眠りにつく間際に何者かが侵入してきたのは知っていた。学園長先生がおそらくタソガレドキの忍頭あたりじゃろうと言うものだからすぐさま彼女の部屋へ行こうとすれば、学園長先生が止めるのだからもどかしかったらありゃしなかった。なぜ止めるのかと問い詰めれば、彼の人は笑って様子見だとかなんとか告げるのだからどうしようもなかった。

 タソガレドキの忍頭は彼女の首を締め上げた張本人のはずなのに。もどかしさを抱えつつも彼女の無事を祈っていれば、カタンと揺れた彼女の部屋に仕掛けられた罠が作動したという合図。
 あの忍頭のことだ。面白半分で罠を作動させたと言っても過言じゃないだろう。彼女に変なことを吹き込んでいないといいのだが。

「あの部屋にってどんな罠を仕掛けたんでしたっけ?!」
「さて。随分前に仕掛けたままですからねえ。行ってみれば分かるでしょう。死なない程度のものだったはずだが……」

 隣を並走している山田先生の言葉に苦笑が漏れる。

「死なない程度って、奈落とか檻とかですかね……」
「うむ……。西園寺の声が細くなったのを聞くに、奈落に落ちたとみて間違いないでしょう。落ちた先に何があるのやら」
「からくり部屋に繋がってたりしませんよね?!」
「……万が一という可能性もありますぞ」

 冗談じゃない。からくり部屋なんていう恐ろしい場所に繋がっていたら彼女の命が非常に危ぶまれる。忍としての心得を持つものでさえ罠に引っ掛かっては怪我をすることが珍しくもないあの部屋に、いろはのいの字も知らないであろう彼女が落ちたらなんて想像するだけで背筋に氷塊が滑った。

「生徒たちが駆けてくるのも時間の問題でしょうな」
「厚着先生方が連絡に走っていますが……。ここに残った生徒たちと雛ちゃんは山田先生のおっしゃった通り随分親睦を深めていたようですし……」

 いくら忍たま長屋と雛ちゃんの部屋が離れているとはいえ、彼女の叫び声が聞こえなかったはずがない。

「土井先生、見てください」

 山田先生の言葉通り、前方に見えてきた彼女の部屋を見やれば凄まじい有様だった。月明かりで黒々と照らされた物騒な鉄柵が庭先から飛び出し、部屋の扉の前には上から降ってきたと思われる槍の束。おそらく下手に床や庭先の一部を踏めばまた新たな罠が作動するに違いない。

「彼女、無事ですよね……?」
「ここからは血の匂いはしませんが、奈落に落ちたのだとしたら下手をすれば頭を強打して……」
「や、山田先生! 縁起でもないこと言わないでくださいよ……!」

 確かこの部屋の罠は一度作動してしまえばあとは大人しくなるはずだ。新たな罠さえ作動させることがなければ部屋の中には容易く入れることだろう。持っていた手裏剣をいくつか彼女の部屋先へと投げる。

 ついで爆発音がした。

「……や、山田先生。ここの罠ってこんなに過激でしたっけ……?」

 顔が引き攣ってしまう。
 それは山田先生も同じらしい。先ほどまで冗談めかして彼女の生死について話していたがそれが冗談で済まなくなってきた。これはいただけない。

 爆発が止むとほぼ同時に問題の部屋へと足を踏み込む。

(ッお……?!)

 途端、横から飛んできたのは八方手裏剣だった。咄嗟に避けたが、こんな危ない物まで仕掛けられているとは思いもしなかった。そして部屋の真ん中を陣取っている檻。天井から落ちてきたと思われる。その中は暗闇。夜ということもあって底の見えない奈落。

(これは、危ないんじゃないか……?)

 顔からさあっと血の気が引いたのが自分でも分かった。どくどくと早鐘を打ち始める心臓。彼女がどうか無事であってくれと仏にも祈る思いだった。

「ッ雛ちゃん! 聞こえたら返事してくれるかい?!」
「………………っ」
「雛ちゃん、いるよね?!」

 この檻が邪魔で仕方ない。彼女の息を呑んだ声が聞こえたから生きてはいるだろう、しかしどんな怪我をしているか分からない。このまま時間だけが過ぎれば生死に関わるかもしれない。

(早く、早く助け出さなければ……ッ!)

「……ど、どいせんせい」

 聞こえてきた彼女のか細くもきちんと意思を持ったその声音にどうしようもなく安堵した。彼女の今の状況を聞けば、下の方に藁と毛布が幾重にも重なっていたようで手首を軽く捻った程度だという。出血している様子もなく、どうやら最悪の事態は免れたようだった。

 そんなものが敷いてあったとは驚きだ。しかしながら、そんな中途半端な善処をするくらいならもう少し罠を軽いものにすべきだったのではないだろうか。後で学園長先生に抗議しに行こうと一人心に決めた。


「――雛ちゃん」


 程無くして騒ぎを聞いて駆けつけてきた生徒たちと我々教師陣とで部屋に仕掛けられた罠を回収し、既に作動してしまった罠の残骸をどうにか片付け、彼女が落ちた奈落に自らも飛びこめる頃にはすでに陽が昇りかけていた。

 縄をつたって奈落へと降りる。

 外では陽が昇ってきたといってもここは奈落の中であり、夜目をきかせねばならない。夜目は使えないだろう彼女でもさすがに私がどこに降りたかは分かったのか、私の声がした方に視線を彷徨わせている。

 手を伸ばす。
 その熱に触れる。

 この指先が触れた瞬間、大きく肩を跳ねさせた彼女をそのまま抱きしめた。

「ッよかった……!」
「せ、んせ……」
「怖かったろう……」

 彼女の頭を押さえてこの腕の中に閉じ込める。これでもし彼女が亡き者になっていたらと思うと力を込めずにいられない。私がやはり、あの時学園長先生の言葉を振りきってくせ者を追い出しておけばよかった。そうしたら、彼女をこんな怖い目に遭わせることもなかっただろうに。自分の未熟さに悔しさを覚えずにはいられない。

「君が無事で本当に……本当によかった」

 そう零した後に彼女の身体ががたがたと震え出したのが伝わる。ああもう、ごめんなんてちっぽけな言葉では足りない。彼女の恐怖を拭い去るのにこんなありきたりな言葉では足りない。足りない、というのに出てくるのは謝罪の言葉ばかりだった。

「ッ……せんせ、い……!」

 自身を呼ぶ彼女の声は涙混じりで、より一層強く抱きしめる。雛ちゃんの恐怖が少しでも払拭されることを願って。



「艶やかなを掻き抱く」



 ようやく地へと足をつけた彼女に告げる。生徒たちがぎゃあぎゃあと次々と言葉を彼女へとかけるものだから彼女にちゃんと聞こえるように、その耳元で、そっと優しく。

「気分転換に学園の外に行かないか」

 部屋を変えねばいけないことについてなど、彼女に言いたいことはまだまだあるけれど、それはほとぼりが冷めてからにした方がいいだろう。

 だから、今はそれだけを。
 彼女にただ優しく告げる。

「ッ…………い、きたいです……」

 返ってきたこれまた蚊の鳴くような声にほっと一人安堵の笑みを零す。少し休憩してから、きり丸も連れて一緒に海にでもいこうか。

「ねえ、ハチ。土井先生って雛さんのこと好きだと思う?」
「勘右衛門、お前はまたソレか!」
「えーだって、なんかあった方が面白いんだもん」
「確かに土井先生、雛さんのことさっき思いっきり抱きしめてましたしね」
「お似合いだと思うけどなー」
「雛さんを助けるのは私の役目なのにッ! ああでも、土井先生なら……!」
「お前じゃ雛さんを助ける前に罠に引っ掛かるんじゃない?」
「何を言う、馬鹿ヱ門!」
「土井せんせー! 俺、雛さんとだったら土井先生、結婚してもいいと思いまあす!」
「「「「…………きり丸」」」」

 後ろから聞こえてきた生徒たちのくだらない言葉の数々は放っておくに限る。しかしながら、今頃になって羞恥が湧いてきた。ああ、困ってしまう。


(56/88)
[ もどる ]

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -