雛唄、 | ナノ

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 日記をつけようと思った。



「これは実、」



[一日目]


 日記をつけようと思う。なんとなくだけど、こんな貴重な体験してるんだから記録してたって損はないはず。たぶん。一日目、といってもこっちに飛ばされたらしい二日前から今日まで寝ていたらしいから三日目かな。これって俗に言うトリップなんだろうなあ、なんだかなー……全然実感わかない。なんで忍たまの世界だったんだろう。もっとわたしがよく知ってる漫画の世界だとかだったらよかったのに。でも、土井先生格好良かった、何歳なんだろう。二十代前半くらいかな?

 明日から雑用だって。食堂のお手伝いとか指切らないといいけど。でも、まあ、やらないと生きていけないんだろうなあ……なんて思ったりして。ヘムヘム可愛かった。あと書くことは……んー……あ、忍術学園には六学年あるんだって。アニメもっとよく見ておけばよかった。そうしたらあの人の名前も分かったかもしれないのに。

 私の部屋になったこの部屋はとっても綺麗。掛け軸あるし、縁側あるし、広いし。ただちょっと灯りが不気味だななんて思ったりするだけで。ゆらゆら揺れてて、こわいよ。あ、お風呂にシャンプーとリンスがあったのはびっくりした。お風呂も普通によかった。思ったより快適に暮らせそう。トイレはまあ、仕方ないかなぁ……。頑張って生きたい。


[二日目]


 雑用仕事が始まった。思っていた以上にきつくて、正直身体がついていけそうにないと思った。頑張るけどさ。

 ……なんていうか、予想通りみたいな。別に信じてもらえるだなんて思ってないし。大体私みたいな人間がちやほやされるとか逆に気持ち悪いからいいんだけどさ。ヒロインとかキャラじゃないし、そこまで出来た人間じゃないことなんて私が一番わかってるし。でもさすがにあの空気は怖かったな、ああいうのを殺気っていうんだと思う。身体は動かないし心臓は早いしでもう二度と経験したくない。

 てか、疲れた、辛い。日記書くのやっぱりやめようかな。いや、書く、頑張れわたし……! ねむい。


[三日目]


 そういえば、昨日はお風呂入れたからよかったかなーなんて。だって火つけれなかったんだよ? 付けてくれたの誰だろう。優しい。てか、あれ……優しいの? わたしが困ってるの見てたってことはストーカー……じゃなくて監視してたってことだよね。監視つくかもーなんて思ったりもしたけど、……殺されたりとかするよりマシかな。何にせよ、助かったのは事実だからありがとうを言いたい。

 今日はー……血つきの着物を何着か頑張って洗ってみた。結局、落ちなかったけど。あとは、土井先生に学園案内してもらった。広かった。歩くだけで疲れた。学園内構成がなんかすごかったな。いろはの三組って面白い。

 トリップしたのかなっていう実感が少しわいてきた。すごく疲れた。頑張ったと思う。おやすみ。


[四日目]


 土井先生と話せた、嬉しかった。一年は組はどうやら問題児が多いみたい。楽しそうだと思った。疲れた。


[五日目]


 掃除もやることになって、おばちゃんは内心でわたしのこと殺したいんじゃないかと思う。代わりに薪割りの数が減ったからいいのかなあ。

 ヘムヘムと仲良くなれたのが嬉しい。ヘムヘムはちゃんと人間の言葉がわかるようで頭もいいし、二足歩行できる犬とかすごくない? 絶対テレビ出たら人気でると思う。……テレビないけど。これから一緒に掃除をしてくれるって。掃除の時が一番楽しみになったな。あ、でも今日の一番の印象は、おばちゃんがとても怖かったことです。遅刻なんかしたら本当に殺されるんじゃないかと思った。包丁怖い。

 筋肉痛が半端ない、日頃どれだけ運動してなかったんだろう、わたし。眠い、疲れた、おやすみ。


[六日目]


 特になにもなし。皆今日も綺麗でした。同じ顔があった、双子かな。眠い。


[七日目]


 タキヤシャマルくんと話せた。すごく可愛かった。髪もサラサラだったな、彼。うらやましい。んー……いい日だった。また話せるといいな。


[八日目]


 四年生と仲良く? まではいかずとも知り合い程度にはなれたんじゃないかと思う。食事の時が少しだけだけど楽しみになった、よかった。

 ホームシック。おばちゃんのご飯もおいしいけど、母さんの作ったご飯が食べたい。帰れるかなんてわからないけど。……かえりたいな。さびしい。

 おやすみ。


[九日目]


 綾部くんが可愛かった。眠い。


[十日目]


 土井先生の叫び声がきこえてきた。面白かった。つかれた、かえりたい。


[十一日目]


 今日も土井先生の叫び声が聞こえた。しんべヱの鼻水についてだった、面白かった。携帯捨てたくなった。なんでソーラー電池じゃないの、このばか。


[十二日目]


 怪我した、痛い。
 先生、ありがとう。


[十三日目]


 一日しか経ってないのに、なんだろう、大分治ったような気がする。


[十四日目]

  
 朝、久々知くんと知り合いになった。久々知くんは格好よくて綺麗。私の話し相手になってくれるみたい、嬉しい。
 夕方には乱太郎、きり丸、しんべヱに会った。可愛かった。信じてくれるんだって。ありがとう。


[十五日目]


 土井先生に新しい着物を貰った。ありがとう、先生。


[十六日目]

 
 夕食を乱太郎、きり丸、しんべヱの三人が持ってきてくれた。土井先生とも少し話して楽しかった。良い日だったな……。


[十七日目]


 五年生と話した。皆格好よかった。
 知ってたはずだったんだから今更傷つく自分が馬鹿らしい。期待するだけ傷つくだけなのに。何を期待してたんだか、馬鹿だよね……。


[十八日目]


( ハ ク シ )



 これが現実なのだと言い聞かせて。
 これが現実なのだと日々を記録して。
 これが現実なのだと押し殺して。

(夢じゃないなんて証拠はないのにね)

 期待するのは悪いこと?
 帰りたいって思っちゃいけないの?
 信じてほしいって思っちゃいけない?

(声にならない言葉が渦巻いて)

 ごめんねだなんて言わないで。
 知ってるから。
 ごめんねだなんて言わないで。

 たった少し。ほんとに少し。
 君たちを見てただけだけど。それでも、君たちが私のこと少しは気にかけてくれてたこと知ってる。

 わたしがこんな性格じゃなかったら。
 私がもっと可愛くて綺麗だったら。
 もっと君たちのことを知ってたら。



「それは



(傷つくことも傷つけることも)
(……なかったのかもしれないのに)


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