『父さんまた母さんと喧嘩したの?』

「…うるせーよぃ。アイツが何回もダイエットしたら?ってうるさいから悪ぃんだ」


面倒くさそうに俺のところにやってきたのは愛娘のなまえ。地毛は俺の色そっくりそのまま引き継いでいるから見た目は不良だが、本当は老人とか子どもとかに優しいすごく根の良い子だ。


『またそれで喧嘩か…何回目だろうね』

「しつこいアイツが悪ぃし…」


中学2年生にもなりゃあ大人の喧嘩の仲裁に入れる年頃だろう。毎回こうゆう喧嘩をする度に俺はなまえに宥められているような気がする。


『母さんはさ…父さんの為に言ってるじゃん』

「…おう」

『父さんに長生きしてほしいから言ってるんだよ?』

「…おう」


知ってるさ。アイツが俺の事を考えて言ってくれている事くらい。でも素直にやろうと思えねーんだよ。ダイエットなんて甘党で大食いな俺にとって苦痛しかねーもん。


『…私だって、父さんに長生きしてほしい』

「は?」

『父さんは…私が嫌いなの?』

「んなわけねーだろぃ!」


俺はなまえが命だから、絶対に嫌いになるわけない。むしろ好き過ぎてなまえに近づくような野郎を追い出す勢いだからな!


『じゃあ…私の為にダイエット、して?』

「!」

一撃必殺。

めったに泣かないなまえが泣きそうなうるうるした瞳に赤くなった頬。そして同年代よりも少し小さい身長で必然的に上目遣い……俺がなまえと同い年ぐらいだったらマジで惚れただろうに違いない。

そして肯定せざるにおえなかった。



ダイエットしましょう!


『母さん、成功したよ』

「やっぱり?ふふ、なまえが言えばやると思ったわ」


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