人生奇跡と感じることは多々あるが、こんな一度に奇跡と感じることは二度とないだろう。


『幸村くんは今からどうするの?』

「他校の人達が来ているからね、部長の俺があいさつに行かないわけにはいかないだろう?」


幸村くんの言うとおりだ。わたしは行ってらっしゃいと言えば、行ってきますと笑顔で返してくれた。何故か敗北感を得た。


『なんであんなに笑顔が素敵なんだろうなあ』

「すんません」

『? はい』

「選手の控え室って何処にあるんすか」


あわわわ、ピアスがいっぱいついてるよ。痛くないのかなあ。


『えっとですね、その……』


よく考えればわたし、道のりを教える説明は苦手だった。昔従兄弟に電話で道を教えたけど、途中自分でも何処に行こうとしてるのか分からないほど説明が下手だったことを走馬灯のように思い出した。


『良ければ案内しても良いですか?』

「そのほーが助かりますわ」


俺もあんまこの地は知らんので。と付け足したピアスくんは、さっきから大阪弁を使っている。もしかしたら大阪の方から来たのかもしれない。


『遠いところから来たのですか?』

「大阪の四天宝寺っちゅーところですわ。自分新任マネージャーなんか?」

『まあ、はい。マネージャーっていうよりはお手伝いなんです』

「ふーん」


案外話しやすいピアスくんはやっぱり大阪人だった。にしても、なーんか聞いたことのある名を聞いたような気がした。


『(ま、いっか)』


楽天家なんです


「っち、めんど」

『どーしましたか?』

「や、先輩らがうっさいだけっすわ」

『先輩…? あの、あなたは何年生だったりします?』

「1年」

『と、年下…!』





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