私はあれから考えた。確かに華和さんは卑怯な手をつかってマネージャーを務めている。とは言ってもマネージャー業をしないただの見学者。真田くん達はその事に良い風に思っていない。とか言って私は華和さんを辞めさせる権利があるのか。


『益々悩んじゃうなあ』


今いる場所はテニスコートより少し離れた場所。此処はテニスコートが見える穴場だと柳くんにこの前教えてもらったのだ。見えるのは真田くんなど見知った人たちとファンの子たち、そしてコートで椅子に座っているのは監督さんではなく華和さんだった。


『華和さんを辞めさせるんじゃなくて更正させるのは駄目なのかな…』

「それは無理に近いっスよ」

『! あ、れ…切原くん?さっきまでテニスコートにいたような気がしたんだけど』

「俺瞬間移動出来るんスよ」

『え、ほ…ほんと?』


嘘に決まってんっしょ。即座に返され、少々ヘコむ。それよりも切原くんは私を嫌っていたはずなのにこうも普通に話かけられるとは思いもしなかった。


「みょうじ先輩、あん時はすんませんっした」

『あ……うん、良いよ』


たぶん、勝手に彼女設定にしたことだろう。でもあの場所にいた私も悪かったのだと、私も彼に謝った。


「んであんだけみょうじ先輩にむちゃくちゃ言った癖に今更図々しいんスけど……1つ依頼出来ませんかね?」

『うん、良いよ。私の出来る限りならね』

「お願いっス……俺たちの居場所を取り戻してください!」


目の前の危険信号


そう言って頭を下げる彼はとても痛々しかった。





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