私は運動が特別出来るわけでもないし、勉強が特別出来るわけでもない。とか言って家庭が特別出来るわけでもないし、美術や技術、音楽が特別出来るわけでもないんだ。そういう事は自分が一番分かっている。


『だからってはこれはないよね…』


人より少しマイペースな性格をしているからか、美術の作品が周りより遅く完成出来なかった私は、同じように完成出来なかった人たちと一緒に残されて放課後やらされている。今日は部活もあったのに行けなさそうで少し残念だ。


「あれ、みょうじさんだ」

『え、幸村くん?どうして此処に…』

「俺も居残りなんだ」


この場に幸村くんが現れるとは思いもしなかった。幸村くんは部活を遅れて来そうな事をしない人だと考えていたからだ。


『幸村くん部活は行かなくていいの?』

「本当は行きたくて仕方ないんだけどね…流石に居残りをサボると後が面倒だからね」


苦笑いしながら答える幸村くん。しまった、彼を困らせてしまった…これは聞くべきではなかったなと反省する。
私は話題を変えようと幸村くんの絵を見せて貰ったが…上手すぎるのは気のせいだろうか。


『幸村くん…絵上手すぎるよ。未完成には見えないよ』

「そうかな?…俺さ、好きなものには没頭すると言うか…納得するまでやり遂げたいタイプなんだ。だから今日は自分が納得するまで残るつもりで来てるんだ」


人間というものはこんなにも違うのかと疑ってしまいそう。私は一刻も早く終わらそうと雑になっていても気にしないのに、幸村くんは時間を使ってまでも納得するまでやり遂げようとする。人間の造りからして違うのかもしれない。


「みょうじさんのも見せて?」

『えっと…その、私の絵……スゴい下手だよ?』


それでも見たいと言う彼に根負けして私は彼に見せた。下手な絵なのにみょうじさんらしくて良い絵だね、とお世話を言ってくれた。幸村くんは本当に良い人だと思う。


「季節は秋なのに桜を書くなんて本当、みょうじさんらしいね」

『それは美術の先生にも言われたよ。今の季節なら紅葉とかでしょう?って』

「ははっ、だろうね」



お題は特になくて、頭にすぐ浮かんで来たのが桜だったからそうしただけ。幸村くんはコスモス畑を描いていた。


『でも幸村くんも桜を描いてるから一緒だね』

「桜…?あ、確かにコスモスは秋桜って書くもんね。一緒だ」

『桜同士、頑張って終わらそうね』

「うん、頑張ろう」



美術室で居残り


『(にしても幸村くんはテニスも出来るのに美術も出来るんだなあ…)』

「(みょうじさんには本当やられるなあ)」





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