『あ、桑原くんだ。久しぶりだねこうやって直接会うの』

「そうだな、いつもメールばっかだもんな」


最近保健委員になった(担任が勝手にそうしていたので"ならされた"の方が正しい)私は偶に休み時間や放課後に保健室にいる。保健の先生がいなくて暇を持て余していたら膝からダラダラ血を流した桑原くんが現れた。


『かなり痛そうだね』

「それ程痛くねえよ。だが思ったより血が出てきてんだ」

『部活で応急処置はしなかったの?』

「あのマネージャーがするわけねえよ」

『ああ…なるほど』


最近華和さんはめっきり仕事をしなくなり、テニスコートにずっと居座っているみたいだ。流石に幸村くんや柳くんが注意しても熱中症とか頭痛とか仮病を使うらしい。何とも言えない困った人だなと疲れきった表情を見せる桑原くんに同情した。


「なあみょうじ」

『ん?』

「何でも部の依頼って…何でも良いのか?」

『うん、金銭関係以外なら何でも良いよ』

「そうか…治療ありがとな!」

『いえいえ、部活頑張ってね』

「おう!」


清々しい笑顔で保健室を去った桑原くんを見送った私は目を閉じて耳を澄ました。様々な声が交わる中、聞こえてくる大半はテニス部へのエールだった。


『ちょっと醜いかもなあ』


そんな私の呟きは保健室だけに響き渡った。



苦労人と平凡


「みょうじにマネージャーになってほしいなんて…言えねえよなあ」




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