『? 眼鏡ケースかな』


階段を登っていたら隅っこの方にポツンとあったのはやはり眼鏡ケース。外には名前がなく、申し訳ないが中を開けさせてもらえば、内側にちゃんとクラスと名前が書いてあった。持ち物にあまり名前を書かない私はきちんと書く人を尊敬する。


『2年って事は同じ学年か』


名前が書いてある人とクラスを宛てに、向かう事にした。


『…どうやって入ろうかな』


着いたは着いたが、問題はどうやって入るかだ。私のクラスとは大分離れているから仲の良い子なんていないし、ましてやこの眼鏡ケースの名前に書いてあったのは男の人だった。

教室の前で悩んでいた時、誰かに話しかけられた。


「どうなされましたか?」

『あ…えっと、このクラスに柳生くんってお見えですか?』

「柳生なら私ですが…」


なんと、私の目の前にいる彼が柳生くんらしい。確かに彼は眼鏡をはめているし、間違いないだろう。


『そうでしたか。あの、これが階段に落ちていました。誰のかが分からなかったので勝手に中を開けてしまってすみません』

「! ありがとうございます。実は今気付いた所で探しに行こうと思っていた所なんです。いえいえ、こちらこそわざわざ持ってきてくださり本当にありがとうございました」


柳生くんは丁寧な口調で礼儀正しかった。彼が謝ってくれている時、確かに彼なら持ち物に名前を書き忘れる人ではないなと不謹慎にも考えてしまっていた。


「何かお礼を…」

『そ、そんな大層な事をしたわけではないんで気にしないでください』

「そうですか…?ではせめて名前だけでも教えて貰えませんか?」

『あ、私はみょうじなまえです』

「みょうじさん、本当にありがとうございました」

『いえいえ、どういたしまして』



お届けもの


「紳士たるものが女性に迷惑をかけるとは…」

『え?紳士?』





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