「なまえ」

『しぃちゃんこれスッゴく面白いゲームだね』

「やろ?…ってちゃうちゃう。自分いつの間に来てたんや」



従姉妹のなまえは俺の合鍵を持っとるからいつでも入れる。やけど自分今日来るなんて聞いてへんで。



『あ、メールするの忘れてた。お母さんがね、しぃちゃんにお土産を買ってきたから届けに来たんだ』

「何処に行ってたん?」

『横浜中華街』

「それめっちゃ地元なんちゃうん」

『そうだね』



こんなマイペースな従姉妹と話すときはいつもこんな感じ。若干岳人やジローと話してる気もするのはたぶんアイツらもマイペースだからだろう。



『しぃちゃんも一緒にやろうよ』

「また俺が勝つやろけどな」

『私今回自信あるよ』

「勝ったもん勝ちやで」

『確かそれ…やっくん言ってたやつ?』

「四天宝寺のありがたき御言葉っちゅー話や!ってよー言うてたやろ」

『言ってたねえ』



一緒におってもほんと楽。とくにギャーギャー言われる訳でもなく、気まずい空気もなく、お互いが気を使わずにいられる女子はなまえ以外に出会ったことがない。

なまえが立海のテニス部や他のテニス部に色目を使うどころかどーでも良さげな態度を示すのは、俺と謙也が小さい頃からずっと一緒にいたからだろう。



『しぃちゃん?』

「ああ、スマンスマン」

『ピノキオにしよー』

「なまえにピッタリやな。俺はピーチって…何勝手にクッパにしとんのや!」

『ピーチとかしぃちゃん似合わないからね。クッパがお似合いだよ』



ニヒッと意地悪く笑うなまえを見てるとほんと平和ボケする。ああ、やっぱりコイツのそばにおると安心やわ。



「なあなまえ」

『わわっ、レース中に話しかけるのはルール違反!』

「誰が作ったルールやねん。立海の…とは限らず、これまで知り合ったテニス部の奴ら好きか?」

『普通だよ。どっちかと言われれば好き』



しぃちゃんとやっくんは大好きだけどね。と付け足すなまえに俺はやられた気がした。





東京の従兄弟と平凡



『…何コントローラーを抱え込んでるの?』

「今胸をやられたんや」

『変だよ』

「誰のせいやと…」

『? よく分かんないけど、その姿写メってやっくんに見せてやろーっと』






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