「いよっしゃあー今日はまちに待ったバレンタイン!!」

「今年も来たかこの年が…」

「丸井貴様たるんどるぞ!」

「幸村、去年の失態を今年はどう生かすか決めているか?」

「んー…無難なのはやっぱり屋上かな」

「そんなにスゴいんスか?」

「そりゃあもう…赤也の想像よりもスゴいぜよ」

「それは大変ですね…」



立海の男子テニス部、ましてやレギュラーの彼らにとってバレンタインデーは凄まじいものだ。丸井はかなり喜びを見せているが、他の生徒とは桁の違うチョコを貰う彼らにとって女子からいただいても誰から貰ったのかは判断つかない。

また、去年その中から食べたチョコで体調を崩した丸井をみて他のメンバーは危険を感じたのだ。



「丸井も危険を感じてほしいよ」

「大丈夫だぜぃ幸村くん! 見分けをつけれるよーになったんだ!」

「たわけっ!! そんな問題か!」

「…無駄な才能じゃの」



結局彼らは休み時間の間は屋上に行くことにしようとしたが、柳の計算により、人が現れる確率が低い体育館裏に隠れることにした。




ーーー
ーーーーー



「あー暇っスねぇ」

「仕方ない、なんなら赤也教室に戻っても良いが?」

「…それは勘弁」

「にしても想像以上だったな」

「全国2連覇したからじゃねーの?」

「機嫌を損ねるな丸井。確かにね、ったくそんな事で来られても何にも嬉しくないのになあ…」

「…つーか足音聞こえねえか?」



サクサクと軽やかな足音が徐々に聞こえてくる。足音からして女だった。



「足音的には1人…か?」

「レギュラーが此処にいんのバレたらヤバくね?」

「ただでさえ華和のせいで苛ついていたのに……」

「落ち着け精市」

「(やべえ! 俺らより足音の女の方がやべえよ!!)」



足音がピタリと止まった。レギュラー全員、汗が流れ、心臓が高まった。



『あ、やっと見つけた』

「みょうじ、さん?」

『? もしかして話合いしていた?』

「そうに見えるか?」

『ご、ごめん』

「いや、すまない。今のは俺が悪かった。みょうじが現れるのはデータ外だった」

「みょうじさんはどうして此処がお分かりになられたのですか?」

『うーん、前に仁王くんが此処で休んでい…あ』

「仁王貴様!」

「たまたまじゃ、たまたま」

「なあなあ! チョコくれるのか?」

「ちょっ、図々しいっス丸井先輩! けどあるんスか?」

『え、チョコいるの?』

「「え、ないの!?」」

『だって女子たちがみんなにチョコ渡すって言ってたから…』

「マジかよ〜ちぇっ」

『あ、華和さんがみんなを捜してたよ』

「ぜったいに報告しないでね」

『了解です』



現れたのはごくごく普通で平凡なみょうじなまえ。立海男子テニス部レギュラーと話せる人物である。彼女は平凡であるが、非平凡でもあるのだ。



『真田くん、先生が呼んでたらしいけど理由が理由だから今日はもう良いから明日の昼休みに来てくれって言ってたよ』

「それをわざわざ言いに捜してくれたのか?」

『うん、そんな捜してもないから気にしなくて良いよ。じゃあみんなもう少しの辛抱だからがんばってね』



ベタベタするわけでもなく、ツンツンしているわけでもなく、彼らに普通に接する人物は少なくともこの学校では彼女ぐらいだろう。そんな彼女はある意味非平凡と言えるのだ。



『あ、そうだ』

「? 何か言い忘れかい?」

『ううん、ハッピーバレンタイン。ほんとはあったんだけどちょっと意地悪しちゃった。要らなかったら誰かにあげちゃって良いからね』



そう言ってこの場を去る彼女。この場に取り残されたレギュラーたちは、唯一同世代の女子から貰ったチョコを笑い合いながら食べていたそうな……。





ハッピーバレンタイン



「やっぱりみょうじさんは何か違うね」

「ああ、データをよく覆してくれる奴だ」

「ってかチョーうめえ!!」

「うむ、これはほろ苦い感じが良い味だ」

「え、俺の結構甘めっスよ?」

「一人一人に名前が書いてあったって事は味がそれぞれ異なってる可能性がありそうですね」

「ほぅ、益々みょうじの奴面白いぜよ」






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