「みょうじ」



この立海は廊下と教室の間の壁には窓がある。私はこの前席替えをしてこちら側になったのだが、窓の向こう側から聞き覚えのある声がした。


『銀色の髪…』



この学校で銀髪はたぶん仁王くんしかいないだろう。窓を開ければ案の定仁王くんだった。



『よく私だと気づいたね』

「勘じゃ。とりあえず電子辞書持っとらんかの?」

『持ってるよ。貸そうか?』

「プリッ」



また変わった言葉言ってる仁王くん。私もつられて返すところだった…ってんなわけないか。



「前みたいに返してくれんのぅ」

『う、忘れかけたのに…!』

「ニョキ」

『……いじわる』



貸すのやめようかなと思ったが、それはそれで仁王くんが次の時間に困るだろうからしぶしぶ貸した。



「おーお、みょうじ分かりやすい顔しちょる。じゃが、お前さんほんと良い奴じゃの」

『わっ』


わしゃわしゃ頭を撫でられて、せっかく結んだ髪がぐちゃぐちゃになったかも。だけど、何故か仁王くんの思ったよりも大きな手が心地よかったから何も言えなかった。



「…小動物」

『?』

「なんでもなか。また返しにくるぜよ」

『うん、分かった』



乱れた髪を直しながら仁王くんに手を振った。あ、そういえば電子辞書の電池って切れてなかったっけ?



『…大丈夫だよね』





とある休み時間の出来事



「みょうじは頭撫でるとあんな顔するんか…ええこと知れたが誰にも言えんのぅ。あとこの辞書電源つかんぜよ」






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