『おお!やっぱこの旅館はいいねー。落ち着いた感じ』

「毎年格安で泊まらせてくれている女将に感謝だな」

「ちょっと待ちや、ヅラ。わしのおかげで泊まれるんじゃ」

「ヅラじゃない桂だ。それを言うならお前ではなく、お前の親父殿のおかげだろう?」

「どっちでもいいからよー。部屋いこうぜ。銀さんもう疲れたって」

「銀時に賛成だな。チェックインも済ませたし、行くぞ」


毎度おなじみの万事屋メンバーたちはある旅館に来ていた。
ここの女将と坂本の父親が友人らしく、あげはたちは毎年この旅館に安く宿泊させてもらっているのだ。


「素敵な旅館だね、ここ!」

「せやろ?あたし、一回はここに来てみたかったんやで!!」


あげはたちが部屋に向かおうとしたところ、そんな声が聞こえた。
振り向けば、自分たちと同じくらいの女が二人、男が一人とその親だろう男が一人。そして……。


『あ、コナン君』

「え?」


何度か顔を合わせたことがある江戸川コナンがいた。
コナンもこちらに気付いたのだろう。なんでここに?という顔をしていた。


「おお、久しぶりだな?コナン君」

「なんで疑問形?つーかけっこう最近会ったよね俺ら?」

「きれいな姉ちゃんがおるのー」

「よお」


上から順に桂、銀時、坂本、高杉。
この四人もコナンとは何度か会っていた。お互いが学校帰りの時によく会うのだ。


「コナン君、知り合い?」

「あ、うん。学校帰りによく会うんだ」


蘭の問いに、コナンは敢えてあげはと銀時とは銀行強盗に遭遇したときに関わったことがあるということは言わなかった。
そしてコナンはあげはたちに蘭たちの事を教える。


「そしてこっちが小五郎のおじさんに、蘭姉ちゃん。大阪から来た平次兄ちゃんに、和葉姉ちゃんだよ」


コナンの言葉に桂が、ああ、と何か思い出したように言った。


「小五郎、というと。貴殿はあの有名な眠りの小五郎殿なのですか?」

「いかにも!俺があの有名な名探偵、毛利小五郎だ」


桂の"有名"という単語に反応を示した小五郎は、得意げに胸を張った。
それを呆れたように見るのは、眠りの小五郎の正体を知っているコナンと服部だ。


「そっちのおんしもテレビで何回か見たことあるぜよ」


そう言って服部の方を見る坂本。


「俺か?俺は服部平次っちゅーてな…「平次はな、西の高校生探偵として有名なんやで!」……おい、和葉!俺の言葉遮んな!!」

『ああ、それきいたことある。西の服部、東の工藤、だっけ?』


服部を遮って前に出た和葉の言葉にあげははコナンの方を見た。そんな彼女の顔は少し楽しそうだ。
絶対楽しんでるよ、この人。
コナンは目が合ったあげはに対し、そう思った。


「それにしても、面倒事に巻き込まれやすい俺達万事屋と、事件に巻き込まれやすい君たちがこんなところで出会うとは……。何か起こりそうだと思わないか?」

「いや、何ナチュラルにフラグ立ててんのお前ェェ!?」

『銀時の言う通りなんだけど!こんなとこで事件起きたらアンタのせいだからね!?このバカ!!』

「バカじゃない桂だ」


相変わらず騒がしい人たちだな。
まるでコントのようなやり取りをするあげはたちを見るコナン。
そんなコナンに服部が近づく。


「なあ、工藤。あのねーちゃん、なんか知ってるようやけど大丈夫か?」

「多分、な。俺の正体は知ってるみたいだけど、敵意とかがあるようには見えねーし」


服部は、ふーん、と呟いた後、いまだに騒いでいるあげはたちを見た。



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