『………』
「………」
目を覚まして一番最初に見たのが、なんか気持ち悪い巨人とか。バカな。 そんなことを考えるあげは。
窃盗犯を捕まえるという依頼中、犯人の男が持っていた箱が突然光り出した。そして目を覚ましてみれば見たことのない場所ときた。 周りに建物や人の気配はなし。唯一存在しているのは、さっきから自分の方を見て一向に動こうとしない巨人のみだ。
『…すいません、ここはどこですか?』
「………」
『………』
返事がない。屍のようだ。 さっきから一言も声を発さない巨人。まさか話せないのだろうか。
巨人はまだ自分を見つめたまま動かない。 殺気がないから敵ではないのか。そう考えたあげはは巨人をよそに、もう一度自分の置かれている状況について考えてみた。
万事屋の依頼で窃盗犯を追いかけていた→犯人の持っていた箱が光り出した→気付いたら知らない場所にいた→一緒にいた銀時はいない→代わりに変な巨人が一体→何故か自分の体は15、6歳くらいまで退化している。
『いや。全然分からねーよ!』
誰かこの状況について教えてください。 あげはは切実にそう願った。
あげはが一人もんもんと考えていたその時。巨人が突然走り出した。
『!?……なっ!速い!見かけによらずアイツ超速い!!』
実際速度はそこまでないのだが、人間とは一歩の歩幅が違う。 見る見るうちに巨人はあげはから遠ざかり、見えなくなった。
『なんだったんだ、一体…』
ここに来て初めて一人になったあげはは、とりあえず人。普通の人間を捜そうと歩き出した。
***
『………』
「………」
『……え、またこのパターン?』
しばらく歩いた先、そこにいたのはまたしても巨人。しかもさっきとは違う奴。 もしかして、ここには巨人しかいないんじゃ。 あげはがそう思い始めた時だった。先程と同じように巨人が突然動き出した。 違うのは自分に向かって手を伸ばしてくること。
これは普通じゃない。 そう思ったあげはは咄嗟にその手を避けた。しかし避けてもまた襲い掛かってくる巨人。
『何、コイツ…』
ヤバい。本能がそう告げていた。 あげははここに来たときに腰に帯びていた刀を抜いて、その巨人の腕を切り落とした。
「!」
その巨人は血を流すものの、すぐにその腕は再生した。そしてまた襲ってくる。
『げー…。マジなんなの』
おそらく手足を切っても意味がない。そう判断したあげはは、襲い掛かってくる巨人の下に滑り込んで背後にまわると、地面を蹴った。 狙うは首だ。
『悪いね』
そう一言。あげはは呟くと巨人の首を切り落とした。
巨人の弱点はうなじ。あげははそれを知らなかったが、背後から斬ったため運よく、その弱点を損傷させた。 巨人はもう動かなかった。
『………』
あげはは無言で刀についた血を振り切ると、刀を鞘にしまった。
「おい」
『!』
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