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「なあ、坂田、高杉。俺も混ぜてくれよ!」
教室では銀時と高杉の攻防(という名の遊び)を眺めていた山本が手を挙げた。
箒と黒板消しという何とも言い難いものだが、一応野球は野球。野球少年の山本に火が点かない訳がなかった。
「そんなら山本。これで銀時を潰せ」
「潰すの!?」
クツクツと意地の悪い笑みを浮かべて、山本に黒板消しを渡す高杉にツナが思わずツッコみをいれた。
しかし対する山本は特に高杉の言葉は気にしていないらしい。サンキュ、と人の良い笑みを浮かべて黒板消しを受け取っていた。
「ちょ、10代目!ヤバくねぇッスか!?」
「え…?」
そんな様子を見ていた獄寺がツナに耳打ちする。
「あの野球バカ手加減てモン知らないんスよ!?」
「あ!そうだった!」
そう、山本は普段温厚であるが、野球に関しては手の抜き方を知らない。
それを思い出したツナは慌てて止めようとするが、時すでに遅し。
ビュンッ
ドゴオッ
「「……………」」
「うわっ!悪ィ坂田!本気で投げちまった!!」
山本の投げた黒板消しは目にも止まらぬ速さで銀時の横を通り過ぎ、壁に突き刺さった。
銀時を潰すよう言った高杉もそこまでは予想していなかったらしい。銀時と高杉は二人仲良く突き刺さった黒板消しを見て固まっていた。
「……こうなると思ってたぜ」
「知ってたんなら先言えよォォ!!」
その言葉を聞いて我に返った銀時が獄寺に詰め寄る。
「銀さんマジで死ぬかと思ったんだけど!?」
「よかったじゃねーか」
「獄寺テメェェエエ!!」
めんどくさそうに言う獄寺。銀時はますます額に青筋を浮かべた。
「大したもんだな。お前さんのその肩力」
「そうか?」
そして一方では山本を素直に褒める高杉と少し照れくさそうに笑う山本。
そんな四人を見てツナは思った。
「(どうしよう………………
収拾つかなくなってきたんだけど!)」
早く帰って来てあげは。
なんてツナが思ったと同時に勢いよく開かれた扉。
『ヤバい!ヘルプ!』
入って来たのはひどく慌てた様子のあげはだった。
「どうしたのあげは!?そんな慌てて…」
『それが……うおっ!?』
女らしからぬ声を上げたあげはがツナの頭を押さえて下にしゃがむ。
え?え!?と状況の把握できないツナの頭上を何かが掠めた。途端に顔を青くするツナ。
『セ、セーフ…』
「今のトンファー?…てことは、」
「……ここで何してるの、沢田綱吉」
「ヒ、ヒバリさん…!?」
ツナの口から出たその名に騒がしかった教室がシンと静まり返る。
「もう放課後だっていうのに何で教室で群れてるの?」
「い、いや…それは……」
「おまけに、」
チラリと雲雀が目をやった先には壁に突き刺さったままの黒板消し。
あげはと雲雀を除く五人の顔からサッと血の気が引いた。
「誰だい?僕の並中でこんなことをしたのは」
「銀時がやりました」
「高杉ィィィイイイイ!?」
「へえ…」
「ちょ、待て待て待て待て!俺じゃねェよ!いや、俺じゃなくはないけど俺じゃねェよ!!」
「言ってること支離滅裂だぞお前」
「もう黙ってくんないかなホント!!」
銀時と高杉が言い合っている間にも雲雀はジリジリと銀時に歩み寄ってくる。
「別にいいよ、坂田銀時」
「え…」
雲雀から発せられた意外な言葉に銀時が安堵の表情を見せた。
ただしそれは一瞬で崩れることとなる。
「全員まとめて咬み殺すからね」
「ええ――――!?」
「俺らもかよ!?」
「ヤベ、ヒバリのヤツ相当怒ってるよな…」
『てか黒板消し突き刺さるって何やってたのアンタら…』
「いろいろ。…で、どうすんだ銀時?」
「決まってんだろ………逃げろォ!!」
銀時の合図であげはたちは一斉に廊下に出て走り出す。
「逃がさないよ」
すかさず雲雀は彼女たちを追い掛けていった。
彼らの鬼ごっこは最終的に銀時が雲雀のトンファーを木刀で弾き飛ばすまで続いたのだった。
誰かのソバにいるということ(騒がしくて仕方がない)
(貴方はそう言って笑った)
title:たとえば僕が
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