「……めんどくせぇなァ。テメェがやれよ、あげは」

『わかってるっての。今回はあたしのミスなわけだしねー…』


あげははため息を吐いて、一歩前に出た。桐島さんよろしく、そう一言言って。
今井が死ねぇ!と言ってこちらに向かってくる。…ああ、なんて単調な動きなのだろう。
後ろでは高杉がくつくつと笑って、あげはの名を呼んだ。


「それから銀時から伝言だ。必要に応じて"アレ"を使っていいとよ」

『お、マジでか。……まあ、許可はなくとも使うつもりだったけど』


あげははニッと笑うと"アレ"を背負っていたケースから取り出した。あげはたち万事屋が持つことを許されている"アレ"……今回は相手が一般人のため取り出したのは一本の木刀。

キィンッ
あげはは素早く木刀を薙いで、今井の持っていたナイフを弾いた。そのまま勢いに任せて今井を木刀で殴る。
鈍い音とうめき声が公園に響き、再び静寂。今井は完全に気を失っていた。


『はい、終了ー』

「呆気ねェな」


心底つまらないという風に高杉が呟いた。


***


「あげはー、高杉ー!待ったがか?」

『おー辰馬』

「遅ェよ坂本」

「すまんの!ここまで意外と距離があったきに時間がかかってしまったぜよ」


あげはが今井を伸した約二十分後、警察を連れた坂本が公園に現れた。
警察と連絡を取るのは坂本の役目。坂本財閥の息子である彼は警察にもコネを持っているのだから。


「金時とヅラにも知らせておいたぜよ」

『うん、助かる。…じゃ、あたしはこのまま桐島さん送ってくから』

「ならわしらは先帰っちょる」


今井がパトカーに連れ込まれるのを確認した坂本は、高杉のまたがるバイクの後ろに乗った。


『じゃああたしらも行こうか。歩ける?おぶってこうか?』

「いえ、大丈夫です」

『そう?』


二人は並んで歩き出す。彼女たちが公園から出て行ったのを見送って、高杉と坂本も公園を後にした。


***


桐島の家の前、あげはと桐島の二人は向かい合っていた。


「今回は本当にありがとうございました」

『いえいえ。こっちこそあたしの不注意で怖い目に合わせて悪かったね』


あ、そうだ。そこであげははふと思い出した。公園に行く途中で晋助から預かっていたものがあったっけ、と。


『桐島さん、はい』

「え?」

『オトシモノ』

「…あ!ストラップ!ありがとうございますあげはさん!」

『いや、うん…あたしが見つけたわけじゃないんだけどね…』


実際に見つけたのは高杉だった。あげはと合流する少し前に拾っていたらしい。


「お金は後日渡しに行きますね」

『うん、待ってる。それじゃ、あたしは帰るから』

「はい、ありがとうございました」

『またご贔屓によろしくー』


あげははヒラリと軽く手を振って、万事屋へと向かったのだった。


***


『…もしもーし、銀時?……うん、そう。………うん、』


暗い道に一人の女の声が響く。そして女は暗がりの中で口角を上げた。


『依頼、完了だよ』




正義と悪の狭間にて、
(またのご依頼)
(お待ちしてます)


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