銀時の後ろから聞こえてきた声に思わず、げ、と声が出た。銀時も声の主に気が付いたのかあたしの上から退いた。
そこにいたのはニヤニヤと笑う晋助と、青筋を浮かべている小太郎と、何故か上機嫌な辰馬だった。
「な、何をしてるんだ貴様ら!!破廉恥な!!」
『誤解だって小太郎。そもそも何であんたらがあたしたちの後ろから来るのさ』
そう、彼らはあたしたちとは反対に寺の周りを歩いていたはずだから、出会うなら正面からになるのが普通だ。
「…ああ、それは、」
小太郎が辰馬の方を見た。
「坂本の奴がカブトムシを見つけたとかで追いかけて行ってしまってな。それを追いかけていったらこうなったのだ」
『子供か』
だがなるほど。だから辰馬はあんなに上機嫌なんだね。
「それで、貴様らの方は何かわかったか?」
『いや、収穫なし。そっちは?』
「こっちもだ」
お互い子供の声は聞こえなかったらしい。
「大方志士たちが寝ぼけてたんだろうよ」
「そうだな。今日のところは引き上げるか」
「わしもそろそろ眠くなってきたぜよ。…ん?金時どうした?顔が真っ青じゃ」
「い、いや、だってよォ……。あっちからなんか聞こえてくるんですけど…」
『……あ、ホントだ。子供の泣き声』
「「「「!!」」」」
耳を澄ませると確かに聞こえてくる声。あたしは声の聞こえる方へと足を進めた。
少し行くとうずくまってすすり泣く一人の男の子がいた。
「ふえ、ひっく……母上、どこ…」
『ねえ、』
「!お姉ちゃん誰…?」
『あたしはあげは。あんた迷子でしょう?あたしたち今からこの林を出るところなの。なんなら一緒に行く?』
「本当?そしたら母上に会える?」
『会える会える(多分)』
男の子に手を差し伸べて一緒に立ち上がる。そして手をつないだまま、あたしは陰で様子を伺っていた四人の方に歩き出す。
「幽霊ではないのか?」
「あげは触れてるしなァ」
「なんじゃ。案外普通の子供ぜよ」
「あ、当たり前ェだろ。スタンドなんざいてたまるか」
あたしは後ろでそんなことを言っている四人の言葉を聞きながら林の出口を目指す。
そして林を出たところで、あたしはある方向を指さした。
『ほら。あっちに行けばあんたの母親に会える。あたしはついていけないけど、真っ直ぐあっちを目指せばきっと会えるよ』
そう言えば、男の子は、うん、と言ってあたしが指さした方へと走り出した。
「ありがとうあげはお姉ちゃん!」
『どういたしまして』
それだけ言うと男の子は闇の中へと見えなくなった。
「なあ、あげは。あっちって村の方じゃねーよな?」
『ん?ああ、そうだね』
「え…?ってことはさ…」
『あたしが指した方。ちょっと行ったところに墓地があるじゃん?』
「じゃ、じゃあ…あのガキは、」
『どっからどう見ても生きてなかったね』
「ぎ、ぎゃああああああああ!!」
夜に溶けた探し人(幽霊は本当にいたのだな)
(それほど怖いモンじゃなかったのう)
(志士たちが大げさすぎンだよ)
(ねえ、疲れたから帰ろうよ)
(なんでお前らそんな冷静なの)
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