「・・・・何だこれ。」
この教室の主、坂田銀八は朝のHRの為に来た教室の黒板をみて若干動きを止めた。
そこには小さいながらも綺麗な字で、ある言葉が紡がれている。
銀八は何事もなかったかのように気怠げにHRを始めた。
教室全体を見渡し、欠席者と遅刻者の確認をする。
銀八の目線の先には不自然に机に突っ伏した名前がいた。
「名前ー、お前昼休みに国語科準備室な」
『ふぇっ狽ネななな、何でですか!?』
「ん〜、色々と聞きたいことがあるからさ〜」
*昼休み*
名前は深呼吸をして準備室の戸に手をかける。
『失礼しまー・・・す』
少しだけ開いた隙間から声を掛ける。
「おー、入れや」
そっと開けたのもどうやら無駄だったようだ。あきらめて名前は銀八に手が届く距離まで近づいた。
『えーっと・・・・先生、私一体どうして呼ばれたんでしょう?』
「あれ〜?名前、自分で分かってるだろ?」
少しの沈黙の後、観念したように名前が口を開いた。
『・・・・黒板のアレ、ですか・・・?』
「そ、あーいう事は先生直接いってもらいたいな〜」
『直接言うのが恥ずかしいから書いといたんじゃないですか・・・・』銀八には聞こえないほどの声で口ごもりながら言った。
「何か言った?」
名前は何かを決心しようとしているようで銀八の声には答えない。
数秒の出来事だった。名前の手が銀八の頬に添えられ、ほぼ同時に触れるだけのキスが落とされる。
名前は真っ赤な顔を近づけたまま小さな声ではあったが、はっきり言った。
『銀ちゃんお誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう//』
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