びら、と目の前に出された一枚の写真に絶句した。厳密にいえば、それは写真をコピーしたただの紙切れだった。しかし問題なのはそこに映っている絵だ。全裸の女がカメラに向かって大仰に開脚し、あられもなく陰部を曝して舌を出している酷い構図。見知らぬ恥女ならいざ知らず、その女は何故か私の顔をしていた。当然こんな恰好をしたことはない。そもそも、処女だ。 「清廉ぶって、この俺をつまはじきモンだってフッた女のすることとは思えねぇよなァ…?」 「っ……」 ごくり、と生唾を飲んだ。この絵を見せつけて来ている男は、校内でも随一の不良、長曾我部元親。不良の類を毛嫌いしている私が、この男の告白を受け入れる筈もなかった。そもそもあれが本気の告白だとも信じていない。 長曾我部はニヤニヤしながら、絶句する私を舐めるように観察していた。 「こんなの……っ」 「あン?」 「っ、こんなの、知らない…」 本当だった。体の芯から恐ろしくて震えが来るが、これはきっと工作されたものだと思う。だとすれば犯人は、恐らく目の前の――― 「ご、ごめんなさいっ…あの時のことを怒っているのなら、謝るから…」 「……ぜんっぜん話が見えねぇな…」 「だから…不良は厭だって、キツイこと云ったでしょ…それで腹が立ったんでしょ…?だからこんな仕返しを・」 「仕返しだ?」 ずい、と男が身を乗り出して、私を壁際に追い込んだ。逞しい体躯と壁に挟まれて異様に怖い。心臓があり得ない位に跳ねて息まで苦しくなってきた。 「もちろん、俺ァこの後アンタにこう言うぜ?『この恥体を学校中に曝されたくなけりゃ、この俺の命令に従え』ってなァ。けど仕返しなんかじゃねぇよ。確かに、アンタにゃ俺みてぇな男は簡単に受け入れられねぇんだろうしよ。恨んじゃいねぇ」 「………」 それは一体、どういうこと? 恨みの仕返しでなければなんなの?どうせ下してくる命令は、その絵に映っているような性的なことなのだろうことは厭でも察しがついた。目の前の男はまだ笑っている。これから先がものすごく楽しみだと言いたげに。 「ど、動機が恨みじゃなきゃ…」 「愛だよ、愛。俺はどうしようもなくアンタを愛してンのよ…舞雷…」 ああ、なんてこと。あの時の「愛している」が本当だったと?いや、問題はそんなことじゃない。動機を理解しようとしてどうするの。そんなことどうでもいいのだ、今は男から逃げる方法を……嗚呼、嗚呼、見つからない。 長曾我部が持ってきた脅迫材料は、彼自身の手でぐしゃぐしゃに丸められ、その辺りの床に落ちた。あんなものデータがあればいくらでも量産可能。そういうことだ。目の前が真っ白になる、男の舌がねっとりと右の頬を舐め上げて、声も出なくなった。 「おら、自分で脱ぎな」 「あ、あ……」 「命令、きけるよなァ?今日此処でたっぷり犯して、孕ませてやっからよ。腹が出てきたら一緒に学校辞めような、一生面倒みてやっからよぅ…」 私は震える手で自分のブラウスに手をかける。男は既に勃起した性器を取り出して、腹の底から嗤った。
※ 「すっげぇな、太腿伝って垂れてら…俺の精液…」 「っぅ……」 「…ん?心配すんなって。まだまだ俺は何回でもいけますよって」 「ヒッ!」 長曾我部元親は私が処女であることをもの凄く喜んだ。震える手で命令通りにブラウスを脱ぎはしたが全力で拒否をする私を片腕で押さえつけ、床に捩じ伏せて男根を挿入し、痛みと圧迫感で呻く私を延々突き上げた。そうして何度か膣内に精子を注ぎ、困憊して何も出来なくなった私を立たせ、腿を伝う溢れ出た精液を観察した。 「ちがうっ、ああ、んぐ…!」 「正常位でヤッてただけだしなァ、足りねぇんだろ?」 ああ、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。精液がとろとろ溢れ、足を滑っていく感覚が生々しい。ぽたぽた床に垂れている気もする。そして、また男が猛ったそれを捻じ込んでくる。 処女だったことなど忘れたかのように膣はゆるくなっていた。中も男の精液で申し分なく濡れていて、つまり、もう痛みも苦しい圧迫感もなくなっていた。もっと悪辣に言えば、嗚呼、脳天を刺すような快楽がそこには確かに存在したのだ。 「あっあ、あっ、ん…!」 「ほら舞雷、倒れんなよ」 片足を持ち上げられて立ったまま貫かれ、頭の中が煮えて来る。気持ち悪い筈なのに気持ちがいい。逃げたい筈なのに逃げようとも出来ない。逃げられないのはあの丸まった紙のデータの所為?つくられた偽物の卑猥な己の絵柄が、皆の目に映るのが怖いだけ? 「いっ、いいっあ、いっちゃ…!」 「イくのか?いいぜぇ、イきな…俺もまたあんたの中に出すからよ…ッ!」 「あ―――ッ、んっ…っ、」 「っ、ああ…ほんと可愛いぜ舞雷…」 私は自分を脅し強姦している男に縋って快感を傍受した。だから頬を涙が流れた。感じるべきじゃなかった、それなのに。 男は脱力して倒れかけた私を抱き抱えた。そしてまだ繋がったまま、もう一度「愛してる」と言って唇を寄せる。
*脅迫
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