歯止めがきかなくなった。そこかしこに散らばった舞雷の髪を跳ね除け、数度殴りつけたことと髪を切られたことで怯えきった舞雷の身体を持ち上げる。そのまま、毛利はどうしようもなく心臓を騒がせて、寝室に彼女を運んだ。
「いや、いやっ…」
「黙れ…!!」
確かに擦れ違いはあった。どちらともなく干渉する回数が減り、職場も違う二人の生活リズムもずれていく。するとおかしいくらいに二人の仲は薄れていったように思えた。そうすると互いに声をかけることも憚れるようになってきて、結果、消滅するかのように。この悪循環に嵌ったのはどちらも悪い。が、愛していないなどと誰が言ったのか。毛利には判らなかった。舞雷の心が離れようとも自分は違う。いくら気まずくなってしまったとはいえ、自分の中から愛が消えれば、とっとと同棲生活などやめて新しい道を行く。お互いそれだけの力があるのだから。
「確かに我も悪いやも知れぬ」
すぐにわかるであろうとは思ったものの、浮気を臭わせる嘘を言った。結果舞雷はそれを信じて出て行き、それに苛立った毛利が締め出したのは事実だった。
「…だが、それですぐ男を咥え込むとはどういうことだ?」
「や、だ…ぁ…!」
「はじめからいたのか、男が」
「いない、いないっ…」
「…車は見た。その男の連絡先を知っていよう?」
「痛っあ…」
「また会うのであろうな、上等の上着を貰ってもくるまいし」
「ひっぅ、」
「返しにいくのであろう。浮気相手、か……それにしては干渉するな…」
「っあ、元就ッ…、許して…」
「………許せ?」
「っ!」
責めつつも舞雷の服を剥ぎ、強く首筋に吸い付き、乳房を揉んで攻めていた毛利は動きを止めた。無感情な冷たい瞳に見下されて舞雷が凍る。
「許してやらぬこともないぞ、その男の死体でも持ってくるならな…」
「な、に…、言って…」
「舐めよ。男にしたようにな」
「っあ…うぅ…」
悲しくて仕方なかった。舞雷は毛利の考えていることが全く判らなくなったのだ。最近の擦れ違いについてはあまり重視しないようにしていたけれど、昨夜の件で、彼は自分に対する愛情を失ったのだと確信していた。それがどうだ、確かに今考えれば毛利の発言には疑問があった。少しでも冷静だったら嘘に気づいて、些細な口喧嘩で幕を閉じただろうに。後悔は後を絶たない。しかしもうすぎてしまった。
結果的に毛利が一番傷ついたのだろうと舞雷は漠然と思う。勿論自分だって…と言い分はあれ、逆らいきれず言われるままに唇をペニスに寄せる。……男にしたようになんて、出来る筈がない。
「…それで、男は満足したか」
「んくっ…」
「下手にも程があるわ…!」
ガッと舞雷の頭を抑えて自ら腰を進める。喉の奥を蹂躙されて、舞雷は胃の奥から吐き気を覚えた。耐え切れず嗚咽をもらすが、毛利は何も止めなかった。頭を強く抑えることも、喉の奥を亀頭で突くことも。
あまりの苦しさに、舞雷はこのまま窒息死するのではないかと錯覚したくらいだ。が、涙と鼻水、涎で汚れたまま耐えた。少したって毛利が喉に直接精液を注ぐ。とろりとしたそれが喉を滑っていくのを感じながら、舞雷は必死に酸素を求めた。
「あっぅ!」
「その男と我と…、どちらが気持ち良いか言うてみよ…!」
「そん、なっ、ああっん、あ!」
「このまま終日犯してくれる…!貴様がくだらぬ欲を持て余さぬよう…!」
「ひぁっあ、ぁ…」
襲ってくる快楽の波に逆らえず、舞雷は身体を震わせた。


*掴み損ねた罪の色