なぜこの年頃の女子たちは、こうも友情と恋愛が醜く混ざり合ってしまうのだろうか。親友と言っても過言ではない友人は、目当ての男子と私が二、三言葉を交わしたのを目にして火のように怒った。
「私が彼のことを好きなのを知ってるくせに――」と、彼女は必死になって私を責めた。当然私は友人として彼女の恋を応援したいし、妨害なんて考えていない。だが、向こうから短い世間話を投げてきたのだ。時間にすれば一分にも満たない程度の会話など、彼女の邪魔をした部類に入ると思ってもいなかった。 私に悪気が無かったことを告げても、彼女の怒りはどんな言葉さえ油として受け入れる。一方的に大声で叱られ続ける私の姿が、クラスメイトたちの目にどう映るのか心配だった。
「もう二度と口をきかないから!」 「………ごめんね」
やがて一方的な火事は収まった。ここまで大っぴらなのは珍しいかもしれないが、起こったことは稀有ではない。しかし脱力感や喪失感が涙を誘った。
「判った」 「…何が?」
友人を失ったことを三成に告げると、彼は表情を変えずに背を向けた。「判った」と返される内容の話じゃない。だから、不思議に思って止まらない背を追った。 三成は易々と新しい友人を見つけて談笑する、くだんの彼女を見つけると、低い声で威圧的に名を吐き出し、振り向いた肩を壁に打ちつけた。
「いッ、……!!」 「貴様に問う。舞雷に謝罪する気はあるか?」 「は…?舞雷…?何よ、自分の女がちょっと怒鳴られたから、報復しようっていうの?あの女が悪いのに?」 「私の舞雷が悪い、だと?」 「そうよ、判ってて私の好きな人と仲良くしてるのを見せつけ――」
パンッ、と、何かが弾けるような音がした。 激情的なところのある三成のことだ。彼女の肩を壁に打ちつけた時点でこうなることは察しがついた。本当なら、こんなことで怒って貰わなくても結構だった。でも、私は三成を止めたりしない。
顔面を殴られた彼女は鼻から血を流しながら絶句した。周りの全員も絶句していた。 静かな空気の中で、三成の狂気だけが際立っていた。
「私の舞雷が私以外の男と仲良くしていたなどと、よくも嘯けたものだな。私の舞雷を侮辱した後は、私をも侮辱するのか」 「……、…は、何言って、るの…?」 「貴様の五臓六腑を引き裂いて窓から吊るせば、少しは気が治まるか」 「ちょ…、何、待っ、待って、舞雷、止めてよ!」 「あはは」
一連のことを三成に話したときは、ただ軽く慰めてくれることだけを期待していたのだ。けれどこうなってしまっては、私はただ、愉快なだけだ。
だって、私に止められるわけ、ないもの。
「さすがに、本当にお腹を割いたりしないと思うよ。ただ、あの人への恋が叶わないものになるくらいには、ぐちゃぐちゃにされちゃうかもね」 「な、にを言って……?」 「私には止められないもの。……かわいそう」 「舞雷、お前は黙っていろ。私はお前だけを愛している。お前が懸念するようなことはない」 「うん、判ってる。……貴女が醜く嫉妬するからいけなかったんだよ」
彼女の目が見開かれた。私は目を細めた。 心の底から貴女をかわいそうだって思う。だけど、だけどね、私のために狂い火になった三成のことが愛しい。愛しすぎて他のことに集中できない。
三成は鼻血を出した彼女を床にねじ伏せて、踏み付けた。ここまで時が止まったように固まっていたクラスメイトたちの一人が同時に甲高い悲鳴を上げて走り去り、一泊遅れて全ての学徒が教室から逃げて行った。
「ねぇ三成、」 「…何だ、舞雷」
そろそろ私を構ってくれる?
情焔
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