「これは夢これは夢これは夢…」 「……38.4℃、辛そうだな」 「………」
風邪をひいた。寒くなってきたというのに薄着で余裕をこいていたのが悪かったのだと思う。 あいにく一人暮らしなので看病をしてくれる人はおらず、大人しく寝ていたところにこの三成が看病にやって来た。それは嬉しい。嬉しいのだが、この格好は一体何だ。
仰向けに寝ている私を跨ぐように座っている三成は、その格好を見て茫然としている私に平然とした態度で体温計を宛がい、表示を見て神妙な顔つきで私の額に手を当てている。
「とりあえず冷えぺたを買ってきたから貼ってやる」 「…これは夢…」 「まだ言ってるのか?」
そりゃ言うわ。
そう、突如看病に現れたこの三成、あろうことか男の癖にナース服を着ているのだ。傍でこうして見てみると、雑貨屋にあるようなコスプレ用の安いものだと判るのだが、どういう経緯であの三成がこれを着、しかも平然としているのかが判らない。 終いにはあまりにも三成の態度が普通なので、熱の所為で見ている幻覚なのだろうと思い込んだ程だ。
三成は、男らしく大股開いているお陰で際どい所まで捲れ上がったスカートの裾から白い太腿を覗かせ、私の上から退くと、持ってきた袋を漁って私の額に冷えぺたを貼った。
「ね、ねぇ三成……」 「薬はあるのか?無くてもいいぞ、買ってきたからな。とにかく腹に何か入れて薬を飲んで寝てしまえ」 「み、三成ってば……」 「……ん?」 「……」
嗚呼、見れば見る程ホンモノだ。
「なにその、格好……」 「………ああ、これか。お前の看病に行くのに何が必要か刑部に聞いたらこれを着るべきだと言われてな」 「………」 「看病=この扮装、なんだろう?」 「…馬鹿……」
馬鹿だ、この人は馬鹿だ。 いくら信頼する友人に言われたとはいえ、このご時世にいい年した男がそんなことで誤魔化されないでいただきたい。確実に大谷さんは三成を(というか私も含めて)からかっているじゃないか。
「…どうせやるならカツラもつけて女言葉でさあ……」 「?」
いや、何を言い出すんだ自分。ああいよいよ熱が酷い…意識が朦朧としてきた……薬どころではない、もうすぐにでも眠ってしまいたい。
「……目が覚めたらこのことを忘れていますように……」 「おい舞雷」 「というか夢オチですように…」 「寝るな舞雷、薬を飲んでから眠れ!今私が粥を作ってやる!」 「……いいよもう…」
勿論粥は酷い出来で、余計に熱が上がってしまった。
目を覚ませばずっと傍で看病していてくれたらしい三成のうたた寝を発見したが、やはり服は…ナースだ。
白衣の天使的な…
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