「…あ」 「!」
珍しく映画を観に行こうと思い立ったはいいものの、急なので友人が誰も捕まらなかった。更にこの時期めぼしい映画もなかったので余計に誰もついてこなかったのだけれど、とにかく映画館に行きたかった私はこうして一人出掛けて来て、動物ドキュメンタリーチックな…小動物が色々する…映画を見終わって会場から出てきた所で、まさかの毛利君を発見した。
.「あ、あれ、毛利君…毛利君もこれ見てたの?」 「…そうだ」
ロビーで待っている間に貰っておいた無料配布の薄いパンフレットを見せつけると、毛利君は目を反らした。一枚もののパンフレットには、大きくタイトルが印字され、周りに大量の小動物が群がっている。
「映画見るの好きだったんだね?」 「……まぁ、嫌いではない」 「えっ、行っちゃうの?」 「通路で足を止めて話すのは好かぬ」 「あ…そうだよね…出ないとね…」
微妙なタイミングで急に歩き出した毛利君だったが、彼は正しかったので、私も急いで彼に続いてロビーへ出た。
「小動物とか好きなの?」 「質問攻めではないか」 「だって毛利君とこんなところで会うなんて、びっくりしたんだもん。映画見るならこの時代劇とか好きそうに見えるけど」
壁に飾られた上映中の映画ポスターを指差すと、毛利君は黙った。 答えを催促する一歩手前で、大勢が座れる長椅子を示され並んで座る。
「時代劇が好かぬとは言わぬ」 「ふーん…。さっきの映画どうだった?」 「……朔の方はどうなのだ」 「ミーアキャットがとても可愛かったなぁ、と」 「ほう…」
え、あれ、この反応は、感心?
毛利君は始終気まずそうな態度だったが、私のミーアキャット可愛い発言で機嫌を良くしたらしい。意外と小動物が好きだったのか…?
「テレビでやるようなものの延長かと思ったが、中々愉しめた」 「あ、そうそう!私もそう思った!結構ストーリーちゃんとしてたね」 「…そなた、単に動物好きでこれを見たのではないのか?」 「それもあるけど、ストーリーも大事でしょ」 「………」
あれ、この反応もどうやら感心だ。 毛利君…この映画のおかげで大分私を見なおしたな……。
「…後でもう一度見にくる予定ぞ」 「この映画?」 「見るものは何でもよい。……そなたも来るか?」 「………え!?」
これはまさかの展開だ。 もし、私がしつこく誘いをかけた友人が一人でも同伴していたら、出がけに見つけた毛利君は声をかけても止まらなかっただろう。 もし、私がしつこく毛利君を質問攻めにしなければ、こんなところに座って雑談する間も無く帰ってしまった筈だ。
「い、いいの?」 「構わぬ。だが余計なものを連れて来るな、喧しいのは好かぬ故」 「うん、うん…」 「来週の日曜は暇か?」 「はい、ヒマです…」 「よし……」
毛利君は携帯電話を取り出して連絡先を教えよと言い放った。 慌ててこちらも携帯電話を取り出し、赤外線通信のやり方を教えながら連絡先を交換すると、毛利君は立ち上がった。
「連絡する」 「うん…あ、あのさ毛利君」 「なんぞ」
なんだかとても冷静なので不安になるのだが、
「デートだよね?」 「っ!!」
やっぱり赤面したのでほっとした。
小動物でお近づき
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