「貴様、男のくせにチャラチャラと髪を伸ばすでない。あとアンダーシャツが赤くて目障りぞ」 「も、申し訳ございませぬ生徒会長殿!!」 「いいんだよ真田の旦那。生徒会長こそアンダーシャツが新緑で目に優しすぎるっての」 「貴様こそなんだその奇天烈な柄は!」 「普通に迷彩柄だよ知らないの!?」
突然1年の教室にやってきた3年の生徒会長毛利に絡まれた真田と佐助は、生徒会長に怯えてそそくさと逃げたり壁際に避難しているおおよそのクラスメイト達とは打って変わり、慣れた風に会話していた。というのも二人の傍に座っている舞雷が原因でしょっちゅう毛利に絡まれているので、いつ彼が現れても今更なのである。
「…まあよいわ。とにかく我が言いたいことはひとつ」 「ギクッ…」 「自覚はあるようだな、舞雷……」
現れた毛利は口を開くなり真田に絡んでいったので、舞雷は少しだけ…そう、ほんの少しだけ期待していた。このまま自分に絡むのを忘れて去るか、休み時間終了のチャイムが鳴るかを。だが毛利は、いましがた真田と佐助両名と交わしていた会話がとても無駄だとすぐに悟り、打ち切って本題に入るのだった。
「やはり下着の色が透けているではないか!」 「透けてませんってば!!」 「は、破廉恥!!」 「いやいや透けてないでしょ。俺様には残念ながら下着見えないもん」 「そうでしょ佐助くん、別に透けてないよね。なんか毛利先輩朝から透けてるって言い出して…」 「透けておる。確実に透けておるわ…!これでは屑共の下心を刺激するばかり…!なんとかせねばならぬ!!」 「毛利の旦那、うちの破廉恥に敏感な真田の旦那が無反応ってことは、全然大丈夫ってことだよ」 「先程破廉恥と申したではないか」 「透けてるってあんたが言ったからでしょー。大体、ほんと透けてない。残念すぎるくらい透けてない!」 「おのれ貴様、そのような誤魔化しで舞雷の刺激的な姿を放置しろと…!」 「じゃあ毛利の旦那あててみてよ、舞雷ちゃんのがどんな下着か」 「あてるもなにも、見えておるわ。白と薄ピンクの水玉柄よ」 「……え、毛利先輩視力いくつ…ってそんなレベルじゃないよ…」 「当たったわけ…?」 「破廉恥ぃいいぃ!!」 「だからブラウスをこの墨汁で染めてやろうと我は朝から…」
と毛利はぶちぶち言いながら墨汁の入った容器をどこからともなく出した。しかし、見事下着の柄を当てられはしたものの、普通の人には透けて見えないので舞雷は別に恥ずかしくない。お気に入りのブラウスを墨汁染めされるなんてまっぴらごめんだった。
「い、嫌だって言ってるじゃないですか!」 「黙れ!恥を知るがいい!」 「…あれだね、毛利の旦那は透視が出来るんだよ、そうに違いない」 「じゃあ墨汁で染めても意味ないんじゃ!?」 「さあ今すぐに我の部屋(生徒会長室)へ来るがいい!我直々に染めてやろう」 「その間どうすんのー?舞雷ちゃん下着姿で待ってるはめになるじゃん」 「ああその間服などいらぬ。何故なら我と肌を・」 「は、はれッ、破廉恥―――ぃいいぃぃいい!!」 「はいはい旦那、黙ろうねー」 「さ、佐助くん身捨てないで!幸村くんより毛利先輩止めて!!」 「ごめん、無理」 「早くこぬか」 「うええぇえ!!」
その痩身のどこからそんな力が出るの?という具合に馬鹿力で毛利は舞雷の腕を引っ掴む。こうなると逃げられないパターンが常だった。己の純潔とお気に入りのブラウスの純白を守るため、舞雷は抗おうとしたのだが、やはり毛利は微動だにしない。 いよいよ駄目か。そう思った時だった。毛利と腐れ縁の3年不良アニキ、長曾我部が教室に乱入し、嵐のように毛利をぶん殴って回収して行った。
はちく!
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