「(ああ、逃げたい…!というか早く朝になっちゃえ…!)」
「そもそも貴様と夜這いが重なるなど計算してないぞ!」
「それは私の台詞だ毛利元就!」

え?この状況?元就サンが言っております通りでございます。
自分の小さな家で、いつものように一人布団に横たわり、いざ就寝…というところで、何かが二匹侵入してきた。泥棒の類かと震える私の顔を左右から覗きこんできたのはまさかの顔見知り二人で、双方が双方の存在に気づくと、私の頭上で口論を始めてしまった。

「フン、何にせよ貴様は去ぬがいい」
「貴様が消えれば万事順調だ」
「このようなことを大谷が快諾すると思うてか。これは裏切りに値する行為ぞ。今大人しく引き下がれば、大谷には黙っていてやる」
「夜這いを仕掛けるべきと私を嗾けたのが刑部だ」
「チッ…使えぬ…!ッ、貴様、何を勝手に舞雷に触れているか!」
「ひゃぁっ、冷たっ!」
「!すまない舞雷…」
「可哀想に…我が温めてやろう」
「っひぇえ!どっちも冷たっ!!」

ばっちり眼は合ってしまっていたので寝たふりは出来ないし、逃げだそうにも左右でしっかり挟まれてしまっているので無理だった。
このまま口論が続いて朝になり、夜這いを無効化できたらな、などと願いながら大人しくしていたら、するすると冷えた手が脇腹に触れるものだから寒くて仕方ない。

「舞雷がどちらかを選べばことはおさまる。手を温めても毛利と口論している間にまた冷えるからな、さっさと選べ」
「えええ…」
「我は舞雷を抱きたくて此処に来たのだぞ」
「奇遇だな私もだ」
「…貴様は違うであろうが我は舞雷しか抱けぬ」
「それこそ同じだ」
「貴様の言う裏切りだの信念の問題ではない」
「……なにが言いたい?」
「我は……」

彼らがなにを主張しようが選んでたまるものかと思っていた。妙に耳に痛い内容を吐きだし始めたが聞こえないフリを貫こうと。
しかしいつになく真剣な顔で(いや、いつもと変わらないか)、元就が私をじーっと凝視してきたので聞かざるを得なくなった。
三成も元就がなにを言うのかとりあえず聞く姿勢だ。

「我は、舞雷にしか勃たぬ」
「ッげほっ!!」
「………」

そして私は猛烈に咳き込み、三成は返す言葉を見失った。

「この際ばらしてやるが、我は昔から性的不能」
「とんでもないこと暴露しはじめた!」
「…………」
「だがそなたのことを考えただけで嘘のように勃起し・」
「止めてーーー!三成なんか言えばいいのに!口論が長引いて朝になるのだけを待ってるんだから私!」
「……憐れだな」
「恋敵に同情しちゃったの!?」
「つまり貴様は童貞というわけか」
「いかにも」
「いかにも、じゃないよ!」

なんだこれ、夢なのか!?夢だと言ってくれ!!

「仕方ない…今晩だけは引いてやる。舞雷…だが私はお前を諦めたわけではない。次は私が可愛がってやるからな」
「ちょ、待って三成クン…!本当に帰るの?!」
「舞雷こっちに来ぬか。手は温まったぞ」
「え、え?!」
「またな」
「これ、我を見ぬか」

夢ですよね、夢……!


よるのとばり