自分は健やかに眠っていたように思うのに、ふと三成は息苦しさを感じたと同時、大きなカバにのしかかられる夢を見た。

「ッ!!」
「おっ、やっと起きた。やっぱり口で言うだけじゃ爆睡してる人間なんて起こせないよなー」
「…舞雷…貴様、何をしている…?」
「何って、体で三成を起こしてる」

問題あるの?とでも言いたげな瞳が三成を見つめている。
感じた息苦しさやカバの夢は、寝ている三成の上に急にのしかかってきた舞雷の影響だったのだ。

三成は、ちら、と視線を窓の方へ運ぶ。窓は全開、間隔の狭い隣家の窓も同様に開いている。その隣家の住人が他でもない舞雷で、二階だというのに身軽に三成の家へ窓で移動するのだ。

「わざわざ貴様が来なくとも私にはこれがある」
「その目覚まし、煩くて毎朝こっちまで音聞こえるんだもん。鬱陶しいからその目覚ましより先に、私が起こしてやろうと思って」
「いらん。もう来るな」
「やだね」
「…今度こそ鍵を直すからな」

三成は呆れた風に舞雷をどけて身を起こす。
彼の部屋にある例の窓だが、随分前に舞雷が鍵を壊した。おかげで彼女が窓から来るのを防ぐことも出来なかったが、文句を言いつつも三成は数年放ったらかしだった。
その真意を舞雷は見抜いていて、今の台詞も黙って流す。

「もういいだろう、戻ったらどうだ」
「いやいや、せっかく来たんだから朝の用意手伝ってやるよ〜」
「不器用な貴様が何を手伝う。それより己をどうにかしろ。いくら幼馴染でもそんな格好で男の部屋に侵入するな」
「あれ?欲情した?」
「さっ、触るな!」
「あはは!照れるな照れるな!」
「ッ…朝から忌々しい…!」

三成の寝込みを襲った舞雷の格好は、まさに寝起きそのまま。ブラジャー装着無し。パジャマに裸足。のしかかられていた時に、胸元が際どい所まで彼の視界に入ったのだ。

思わぬ反応に舞雷の機嫌はもの凄く良くなった。

「いいから帰れ!程度を知らんというなら私も激怒するぞ!」
「いつも激怒してるようなもんじゃん。今更マジギレされても怖くないし」
「くそっ…頭痛がしてきた…!舞雷の所為だ…!」
「はいはい、わかったよ。じゃあ学校行くのに自転車乗せて。乗せてくれるならすぐ戻るし、十分以内に着けたら明日はこない」
「それでいい、早く行け!着替えられない!」
「気にせず脱げばいいのに」

全く照れ屋だなぁ、と、着替えさえ彼女の目を気にして出来ずにいた三成にぶちぶち言いながら、舞雷は渋々窓のサッシに片足をかけた。


お隣同士