「っえ?」
「シーッ!」

鶴姫と散策途中、急に強く腕を引かれ、体勢を崩した舞雷は素っ頓狂な声を上げる。
彼女の腕を引いた鶴姫は、耳元で「危険が迫っています!」と続けて叫んで、振り向こうとする舞雷を抱き締めるように引き止めた。

「気づかないふりをして逃げるんです!て……あっ!」
「え、え?何?」
「貴方だったんですね、ずっと私たちをつけてたの!」
「つけてた?!ねっ、ねぇ鶴姫ちゃん、誰?!」

どうやらその危険な人物というのが遂に顔を出したらしいのだが、未だ鶴姫に抱き締めるよう拘束されているおかげで、振り向こうにも振り向けない。
一体何が現れたのかと、どうにか鶴姫の腕を緩めて後ろを振り返った時だった。

「……あれ?三成だ」
「舞雷…なんだその有様は?」
「有様?」
「なぜその女に体を触れさせている!貴様も離れろ!」
「なっ、貴様って私のことですか!?なんてこと!しかも言っている意味がよくわかりません!」
「舞雷に触れるな!」
「私たちはお友達なんですよ!」
「舞雷は私の妹だ」
「だから何ですか!?意味不明です!」

聞いていて「まったくだ」と思うものの、舞雷は追跡してきた兄の三成を止める言葉など思いつかない。というのも、今に始まったことではないからだ。昔から三成は妹の舞雷をそれはもう大切にしており、行く先々ついてこられるのは勿論、かすり傷程度で一心不乱に心配してくるのだから。

「ごめんね鶴姫ちゃん…三成頭おかしいんだ」
「何でついてきたんですか!?」
「三成はね、私のことが大好きなんだよ。それだけなんだよ…」
「大好きって…」
「私は舞雷を目に入れても痛くない程に可愛がっている。例え女が相手とて触れることは許さない。二人きりで外出するのも許さない。まして貴様…舞雷に抱き付いたな…」

途端三成から殺気が立ち上る。
いくらなんでも鶴姫さえ返す言葉を失った。向けられた殺気に冷や汗が流れるのを感じるだけだ。

「はい、三成ごめん、だからだめ、斬るのは!刀だめ!斬滅だめ!」
「なら今すぐ私と帰るか」
「帰るから!」

本当はまだ日も高く、遊び足りなかったのだが。
仕方ないとばかりに兄の背を押す舞雷は、苦笑しながら鶴姫に謝った。


ついてゆきます