舞雷はただ着飾って座っていれば人形のように美しい女だった。 柔らかく触れれば柔らかく触れ返す。しとやかな女だった。 だがその心の内には深い闇を。
「だって、だってね、三成が…」 「………」 「三成が悪いんだよ……」
整った美しい眉をへの字に曲げて、縋るように、乞うようにブツブツ言いながら、舞雷は私に縄を巻き付ける。確かに抵抗すれば舞雷を捩じ伏せてしまえる。こんなものから簡単に逃げてしまえる。しかしそうはしなかった。逃げようとさえ思わなかった。
「あんな女と共闘するなんて…」 「……ああ」 「三成がっ、わる…」 「ああ、私が悪かった」
見つめていれば吸い込まれると錯覚する潤やかな瞳に大粒の涙が滲む。 ぐるぐるに巻き付けていた縄から手を離し、舞雷は大袈裟に震える手のひらで私の頬を包んだ。そのまま顔を寄せて唇を当ててくれれば、私は渾身で答えるつもりだった。しかし舞雷は戦慄くだけで接吻を縋らない。ただ不安げに私を見つめた。
「…好きなの」 「…わかっている、」 「愛してるの」 「私もだ、舞雷」 「……だから、だから…」 「…いいぞ、舞雷。私は、お前を選んだ時から全て赦している」 「………」 「その刃で私を殺せ。それがお前の愛ならば、私は全霊で受け止めてやる」
刃を突き刺すきっかけとして、舞雷の掲げた理由は瑣末なものなのだろう。しかし所詮私も同じだ、この愛しい存在の為ならば、心が闇に溶けても構わなかった。
舞雷は子供のように泣きじゃくりながら、小刀を握って振りかざす。振りかざしたが、突きたてられた肩口はちくり程度で刃は落ちた。
「ごめんなさっ、ごめ…、なさッ…」 「…謝るな」
傷口から少しの血が流れた。それを見とめた舞雷は顔を青くし、慌てて吸い付くように唇を寄せた。 紅をさしていなかった唇に私の血が染みて、それは酷く官能的に見えた。
紅い唇が戦慄を
|