これは、いつもの女中が大阪城に来るより少し前の話である。
郊外でほのぼのと畑を耕していた舞雷と、そこかしこを血の海に染め上げる石田三成が出逢ったいきさつは何であったか。ともかく二人は身分違いの恋に溺れて、遂に三成の堪忍袋の緒が切れた。戦の合間を縫ってコソコソ逢いに行けばすぐ引き返すという逢瀬に耐えられなくなったのだ。
三成はさっさと秀吉に許可を貰い、舞雷を半ば拉致するように、引き止める両親らの手を逃れて彼女を大阪城に連れ帰った。そしてそそくさと舞雷を着飾らせ、身分どうこうという部分は上手く流して婚姻した。
そして来たる初夜。
「なんか凄く慌ただしかったね、三成様!よく判らなかったよ」 「そうだろうな…だが、お前はもう私の妻だ。別に身分が露見したところで問題はないが…いつ不躾なことをしでかすか判らん、ひきこもりだと言ってあるから大人しくひきこもっていろ」 「……酷いね三成様…」 「………それよりだ、舞雷」 「え?」
婚礼の儀は済んだのだから、その夜と言えばすることは判る筈だ。既に閨に入って布団を尻にしているというに、しかし舞雷は呆けた顔で、迫る三成を見つめた。
「……まさか、本当に判っていないのか…?」 「何が?」
本気でとぼけている舞雷を前に、三成は心底悲しいような虚しいような想いにかられた。 今にも「疲れたから寝るね、おやすみ」とでも言い出しかねない舞雷を前に、三成はじりじりと距離を詰めて、彼女の頬や肩をそれっぽく撫でた。唇を寄せて耳や首筋に触れるだけの接吻をする。が、結果彼女はくすぐったがるだけだった。
「ねぇ三成様、もう疲れたから寝・」 「今夜は寝かさないぞ、舞雷!」 「へ?」
まさに予想通りの台詞を吐こうとした舞雷を阻み、三成は半ば怒った。もうじれったく誘うのでは埒が明かないと判断し、かぶりつくように唇を合わせた。勢いがあり過ぎて歯がぶつかり、舞雷が小さく悲鳴を上げる。そのまま夜着を左右に裂くように脱がせてしまえば、彼女はようやく初夜のことを思い出した。
「あ、あ…!」 「……?」 「しょっ、」 「ああ…ようやく判ったか」 「えっ、ええと…、三成様、私ちょっと心の準備というものが…」 「お前は何もしなくていい」 「な、何もされなくていいなら…」 「………」 「……えへ…」 「馬鹿か」 「ひゃあう!!」
ちっともしおらしさのない舞雷を言葉で言い包めるのはどうでもいいと判断し、三成は外気に触れる彼女の肌を直にさすり、乳房に手をやった。 色気の無い悲鳴を上げる舞雷の方は、本人なりに余裕がなかった。おかげで、もうどうにも止まる様子のない三成が、一度も殿方に触れられたことのない己の体を弄ることにどう対処したものかが判らない。
「わっ、あっ、うっ!」 「……おい」 「ひーん!」 「…舞雷、此処はどうだ、感じるのか?」 「か!?」 「………」 「い、いたい!」
三成が親指の腹で乳首を捏ねる。されている舞雷は至って真面目に出るもの拒まずの喘ぎを発し、素直に答え、始終喚いている。 愛しくてたまらず妻にした相手におしとやかなしおらしさが無かろうと、三成は構わなかった。大体彼女の魅力はこれだと彼は思っている。いつまでも無邪気で素直なのが。
「あっ!そ、そこっ、やだ…!」 「ちゃんと濡れてるな…指の一本位は大丈夫だろう?痛いか?」 「ぁな、なんか痛い、いたい!」 「……痛いだけか?」 「ええぇん…!」
狭い膣に指をねじ込まれた舞雷は、痛みとそれに交じる快感と、羞恥に耐えられなくなって顔を覆った。 その様が可愛くて三成は微かに口角を上げる。体を屈めて顔を隠す手の平をどかし、涙を流す彼女の額に唇を当てて、猛る己の魔羅を宛てがった。
「力を抜け。…少し、痛むぞ」 「うっ、ぐ…!?はぁッ、うぇッ!いたっ、あぅ…熱いよッ…!」 「もう少し我慢していろ…!」 「ひーん…!」
熱い塊がねじ込まれ、破瓜が裂かれる痛みが舞雷を強襲する。歯を食いしばったり目を強く閉じ、激しく息を吐いて痛みに耐える様を可哀想に思いながらも、三成はようやく愛しい女と結ばれたことを心底喜んだ。
やがてぬちぬちと出入りする肉棒に膣壁が慣れて来る。もう切なくか細い声を上げるだけになった舞雷を撫でてやりながら、三成は最奥に己の白濁を叩きこんだ。
「……大丈夫か?」 「………」 「おい、黙るな。まだ痛いか?」 「…ちょっと…」 「…次からは善くなる筈だ」 「……ほんと…?」 「努力する」
白い布に散った血の赤いてんてんは、二人が結ばれた証。
*それは月光の美しき宵
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