奥州筆頭伊達政宗は、突然現れた憎き相手を前に呆れかえっていた。というのも、何の前触れもなく突如現れたこの石田三成、いつもの刑部も連れず単身何をしに来たかと思えば、開口一番「ずんだ餅をよこせ」と言うのだ。
「貴様聞いているのか」 「ん?sorry…いや、まさかの要求に拍子抜けしちまってな。つか普通明らかにテメエに対して敵対心剥き出しの相手にそんな感じで来るか?」 「私の世界最高に可愛い妻がずんだ餅を所望している。だから来た」 「阿呆だぜ小十郎、こいつ」 「同感です」 「能書きはいい、餅をよこせ」 「Oh、小十郎、去年のカビた餅があったろ。あれくれてやれ」 「判りました政宗様!」 「餅は餅でもずんだ餅だと言っている!!我が妻舞雷に詫びろ!!」 「なんなんだよコイツは…」
いつかの負け戦に対する憤りも吹き飛ぶ勢いで政宗は呆れてしまった。しかし、至って三成は真面目である。本当に、真面目に言っているのだ。 少しからかってはみたものの、政宗は悩んだ。とにかくずんだ餅を持ちかえらないことには、という感じの三成を前に、彼をはぐらかすことなど無理だろう。かといって快諾してくれてやるのも癪だし、大体その妻というのはどんな女なのか?と思考は至る。
「そんなにテメエのwifeは怖ぇのか?」 「わぃ〜…?なんだそれは!」 「妻だよ、妻」 「…舞雷は怖くなどない。可愛いんだ」 「なるほどテメェはそのfaceで愛妻家かよ。笑えるぜ!」 「秀吉様亡き今、私にはもう舞雷しかいない。舞雷の望むことは何だって叶えてやるし、その為なら貴様を斬ってずんだ餅を持ち帰るのも当然だ!」 「じゃあテメェは餅狩りでもしてな。天下の戦に手は出すんじゃねぇ。西軍大将の座も降りろ。そのwifeが天下欲しいなんて言わねぇだろ」 「黙れ。舞雷は私に天下を捧げる許可をくれた」 「は?」 「…政宗様、ずんだ餅をくれてやるのが良策かと。台所に余っております」 「…OK小十郎…名案だ」 「私は許可を貰ったから舞雷に天下を捧げて愛情を示す」 「Alright。もういいって」 「舞雷は家康の首を狩る許可はまだくれないがずんだ餅を持ち帰ればきっと許してくれると私は・」 「あ゛〜うるせぇ!小十郎早く餅持ってこい!カビてるアレじゃねーぞ、ずんだ餅持ってこい!!」 「しばし待たれよ!」
ダッと小十郎は踵を返してお台所へ走り出した。三成はまだベラベラ喋っている。政宗は両手で耳を塞いでみたが、あまり意味はなかった。
決して恐妻家ではない
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