舞雷と元就の同棲は半ば勢いのようなものだった。もちろん互いに熱い気持ちがあったからこそ成り得たことだが、まだ互いに知らないことは多い。朝から晩まで、しかもこの一部屋しかない空間で過ごすことになったのだから、隠せる事の方がないくらいだ。

おかげで、舞雷は元就が朝目覚めた瞬間、すぐ隣で眠っている恋人をそっちのけでまず窓に向かうことを知った。部屋中に太陽光を取り込んでしばし動きが止まる。やがて思い出したように舞雷を起こしにかかる。

「……ねぇ元就…」
「!…珍しく起きていたか」
「ねぇってば」
「なんぞ」
「…元就って、何かの宗教に入ってたりするの?」
「………」

偶然目が覚めて気づいたことだが、恐らく毎朝続けられているだろう黙祷の時間?を、舞雷は宗教的なものなのだろうとぼんやり思った。
聞いてみれば、元就は押し黙り、珍しく鉄面皮を歪ませて。

「…宗教というわけでは」
「……でも何かあるの?」
「………」

まだ覚醒しきっていない、寝ぼけ眼ではあったが、舞雷は好奇心をくすぐられるような思いだ。

「……」
「言えないようなことなの?」
「……いや、そうではない」
「じゃあ何?朝日と何か関係があることなの?」
「……我は…」
「我は?」

寝起きの落ちついた舞雷の声が、妙に聞き心地が良かった。元就にしてみればある意味秘密のことだったのだが、その落ちついた声で促されて調子が狂った。それに同棲していて隠し事もいらぬ誤解の種になる。隠していた理由もちょっと恥ずかしいからというだけだ。

「我は、日輪が大好きぞ」
「………にちりん?」
「…太陽」
「……え?」
「………」
「太陽が好きなの?」

意外といえば意外な返答だった。おかげで舞雷はしっかり覚醒し、目を見開いた。視線の先で元就は気まずそうに顔を反らしている。珍しくよほど恥ずかしいらしい。
元就は、言ってしまえと思って言った。しかしいくらなんでも幼少期、己を日輪の申し子とかいって遊んでいたことだけは何が何でも言うものか、と拳を握りしめた。