今日は珍しく三成の自転車の、後方に座ることが出来た。
いつも気まぐれで徒歩か自転車のどちらかを選ぶ三成は、登校する時間が合い、かつ徒歩の場合私と一緒する。ちなみにこのパターンは大方毎日と言ってもいい。
帰りの荷物が多そうだとか、部活の練習試合がある日などは自転車に乗って私を置き去りに行ってしまう。背中に乗せて自転車通学するのがいくらか気恥ずかしいんだろうと家康君は言っていたが、ごく稀にこのポジションを得ることも出来るのだ。それが今日だった。

「ねー、本当に珍しいね。何の気まぐれ?何で?」
「気まぐれに理由をつけさせるのか」
「…良い夢みたから気分が良くて、とか。女の子にモテるのが困るから、私をこうして乗せて学校入って行ったら彼女に見えて都合がいいとか」
「昨晩見た夢は、私が自転車でお前を轢く内容だった」
「何―!!」

三成は良くも悪くも冗談を言わないのでこれは本当だろう。
抗議する意味で、捕まっている三成の胴体を締め上げると、一瞬自転車がブレた。

「…ま、いいだろう…心が広い私はそのくらいのこと赦してあげるよ、感謝しろ!」
「感謝などするか」
「ちなみに私が見た夢はね、三成が私に惚れて、でかい宝石の指輪とか高級そうな服とかバッグとかアクセサリーを貢いでくる夢」
「安心しろ。確実に夢で終わる」
「ちぇ…。女王様気分で最高の夢だったのに」

夢は深層心理の表れとも言うので、もしかしたら私の願望にこれが含まれていたりして。
そう思うと何とも笑いがこみあげてくるものの、三成の方に願望があったら恐ろしすぎる。いくら自転車でも轢かれたら大怪我だ、まったく。

「とんだドSだな三成は!」
「急に何の話だ…」
「でもホラ、私ってМではないけど鉄の心臓が自慢だし?」
「だから何が言いたい」
「三成のS心は私に通用しないってことさ!」
「……はぁ…」

なんだその意味深な溜息は!

くだらない話をしている間に、校門をすり抜けた。ちょうど生徒達がワッと登校してくる時間帯だったから、幅広い学年、生徒達に私たちの姿は目撃された。
さっきのは冗談だったが、三成のモテる具合はどんなものなのだろうか。たまに憧れて声をかけに来る一年生がいるが、この性格を知った時点で失恋しているのを頻繁に見る。先輩に好かれるタイプでもないようだし、剣道部の女子と何かあったりして?

「ぐっ」
「ん?」
「ッ、もう着いたぞ、締めつけるな降りろ!」
「ありゃ?ごめん、無意識」

何だこの胸の苦しさは。

「ねー三成!」
「何だ…お前といると疲れる」
「教室まで手繋いでていい?」
「……?」

いつもの軽いノリとそうじゃない差って、三成には伝わってるのかな。