学生である以上避けて通れないのがテストである。これの為にわざわざ勉強するのは自分のスタイルでないと私は常々思っているが、その為に赤点を取ると余計に面倒な行事が付きまとってくるのはもう学習した。

ちょっと勉強しておけば赤点を免れて平和な日常が戻ると言うのに、ちょっとサボッて赤点を取ってしまうと、テストが終わった後の強制補習が数時間待っている。更に通知表に雷が落ちて数字がぽろっと1減る。それを見た両親の雷で私の小遣いもがくっと減る。つまり、テスト勉強バンザイ!!だ。

「と言う訳で地味に頭のいい三成に家庭教師をお願いするでござる」
「断る」
「…必然が如く頭脳明晰な三成君に、勉強を見て欲しいです」
「言葉の問題か?馬鹿が」
「わかった、三成の性格の問題だ」
「わかっているなら無駄な足掻きは辞めろ」
「認めちゃったよ!」

フン、と鼻を鳴らして自分のテスト勉強を再開する三成を前にして、私はというと…。
此処は三成の部屋。部屋の真ん中に出された二人用のテーブルの半分で三成は自習。正面に座る私の前にはペットボトルのお茶があるだけだ。カバンは一応持ってきたが、中身を出す気力がない。

「授業真面目に受けないくせに勉強するんだ」
「授業など受けなくてもテスト前に少しやれば頭に入る。授業態度などテストの点数でカバーできる」
「なんかむかつくな」
「私はお前の存在が邪魔で仕方ない。暇なら帰れ」
「だから勉強見てよー…」
「する気がないものを見てやるものか。お前が握っているのは茶だろうが」
「じゃあ、教科書とノート出すから。あとシャーペン握るから」
「………」

三成は私のしつこさにどうやら折れた。口を開けば何ごとにも“NO”の方の三成だが、こういう無言は肯定ととってまず間違いない。
気が変わる前に、と急いでカバンから一式を取り出し、茶を隅にやって広げると、三成は自分のノートを閉じた。

「どこが判らないんだ」
「わかんない」
「………」
「何も、わかんない」

本心だ。

「じゃあまずテスト範囲教えて」
「………」
「三成〜?」

おや、なんかちょっと怖い雰囲気だぞ。